児童売春・ポルノ禁止法
(児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律)
(平成十一年五月二十六日法律第五十二号)
(目的)
第一条 この法律は、児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著し
く侵害することの重大性にかん
がみ、児童買春、児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに、これらの行為
等により心身に有害な影響を受けた
児童の保護のための措置等を定めることにより、児童の権利の擁護に資するこ
とを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「児童」とは、十八歳に満たない者をいう。
2 この法律において「児童買春」とは、次の各号に掲げる者に対し、対償を
供与し、又はその供与の約束をして、
当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好
奇心を満たす目的で、児童の性器
等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは児童に自己の性
器等を触らせることをいう。以下同。)
をすることをいう。
一 児童
二 児童に対する性交等の周旋をした者
三 児童の保護者(親権を行う者、後見人その他の者で、児童を現に監護する
ものをいう。以下同じ。)又は児童
をその支配下に置いている者
3 この法律において「児童ポルノ」とは、写真、ビデオテープその他の物で
あって、次の各号のいずれかに該当
するものをいう。
一 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の
姿態を視覚により認識することが
できる方法により描写したもの
二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係
る児童の姿態であって性欲を興
奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写し
たもの
三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は
刺激するものを視覚により認識す
ることができる方法により描写したもの
(適用上の注意)
第三条 この法律の適用に当たっては、国民の権利を不当に侵害しないように
留意しなければならない。
(児童買春)
第四条 児童買春をした者は、三年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
(児童買春周旋)
第五条 児童買春の周旋をした者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金
に処する。
2 児童買春の周旋をすることを業とした者は、五年以下の懲役及び五百万円
以下の罰金に処する。
(児童買春勧誘)
第六条 児童買春の周旋をする目的で、人に児童買春をするように勧誘した者
は、三年以下の懲役又は三百万
円以下の罰金に処する。
2 前項の目的で、人に児童買春をするように勧誘することを業とした者は、
五年以下の懲役及び五百万円以下
の罰金に処する。
(児童ポルノ頒布等)
第七条 児童ポルノを頒布し、販売し、業として貸与し、又は公然と陳列した
者は、三年以下の懲役又は三百万
円以下の罰金に処する。
2 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦
に輸入し、又は本邦から輸出した者
も、同項と同様とする。
3 第一項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを外国に輸入し、又は外国から
輸出した日本国民も、同項と同様
とする。
(児童買春等目的人身売買等)
第八条 児童を児童買春における性交等の相手方とさせ又は第二条第三項第
一号、第二号若しくは第三号の
児童の姿態を描写して児童ポルノを製造する目的で、当該児童を売買した者は、
一年以上十年以下の懲役に処
する。
2 前項の目的で、外国に居住する児童で略取され、誘拐され、又は売買され
たものをその居住国外に移送した
日本国民は、二年以上の有期懲役に処する。
3 前二項の罪の未遂は、罰する。
(児童の年齢の知情)
第九条 児童を使用する者は、児童の年齢を知らないことを理由として、第五
条から前条までの規定による処罰を
免れることができない。ただし、過失がないときは、この限りでない。
(国民の国外犯)
第十条 第四条から第六条まで、第七条第一項及び第二項並びに第八条第一項
及び第三項(同条第一項に係
る部分に限る。)の罪は、刑法 (明治四十年法律第四十五号)第三条 の例に従
う。
(両罰規定)
第十一条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者
が、その法人又は人の業務に
関し、第五条から第七条までの罪を犯したときは、行為者を罰するほか、その
法人又は人に対して各本条の罰金
刑を科する。
(捜査及び公判における配慮等)
第十二条 第四条から第八条までの罪に係る事件の捜査及び公判に職務上関
係のある者(次項において「職務
関係者」という。)は、その職務を行うに当たり、児童の人権及び特性に配慮す
るとともに、その名誉及び尊厳を害
しないよう注意しなければならない。
2 国及び地方公共団体は、職務関係者に対し、児童の人権、特性等に関する
理解を深めるための訓練及び啓
発を行うよう努めるものとする。
(記事等の掲載等の禁止)
第十三条 第四条から第八条までの罪に係る事件に係る児童については、その
氏名、年齢、職業、就学する学
校の名称、住居、容貌等により当該児童が当該事件に係る者であることを推知
することができるような記事若しくは
写真又は放送番組を、新聞紙その他の出版物に掲載し、又は放送してはならな
い。
(教育、啓発及び調査研究)
第十四条 国及び地方公共団体は、児童買春、児童ポルノの頒布等の行為が児
童の心身の成長に重大な影響
を与えるものであることにかんがみ、これらの行為を未然に防止することがで
きるよう、児童の権利に関する国民の
理解を深めるための教育及び啓発に努めるものとする。
2 国及び地方公共団体は、児童買春、児童ポルノの頒布等の行為の防止に資
する調査研究の推進に努めるも
のとする。
(心身に有害な影響を受けた児童の保護)
第十五条 関係行政機関は、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描
写されたこと等により心身に有害
な影響を受けた児童に対し、相互に連携を図りつつ、その心身の状況、その置
かれている環境等に応じ、当該児
童がその受けた影響から身体的及び心理的に回復し、個人の尊厳を保って成長
することができるよう、相談、
指導、一時保護、施設への入所その他の必要な保護のための措置を適切に講ず
るものとする。
2 関係行政機関は、前項の措置を講ずる場合において、同項の児童の保護の
ため必要があると認めるときは、
その保護者に対し、相談、指導その他の措置を講ずるものとする。
(心身に有害な影響を受けた児童の保護のための体制の整備)
第十六条 国及び地方公共団体は、児童買春の相手方となったこと、児童ポル
ノに描写されたこと等により心身
に有害な影響を受けた児童について専門的知識に基づく保護を適切に行うこと
ができるよう、これらの児童の保護
に関する調査研究の推進、これらの児童の保護を行う者の資質の向上、これら
の児童が緊急に保護を必要とする
場合における関係機関の連携協力体制の強化、これらの児童の保護を行う民間
の団体との連携協力体制の整備
等必要な体制の整備に努めるものとする。
(国際協力の推進)
第十七条 国は、第四条から第八条までの罪に係る行為の防止及び事件の適正
かつ迅速な捜査のため、国際
的な緊密な連携の確保、国際的な調査研究の推進その他の国際協力の推進に努
めるものとする。
附 則 抄
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政
令で定める日から施行する。
(条例との関係)
第二条 地方公共団体の条例の規定で、この法律で規制する行為を処罰する旨
を定めているものの当該行為に
係る部分については、この法律の施行と同時に、その効力を失うものとする。
2 前項の規定により条例の規定がその効力を失う場合において、当該地方公
共団体が条例で別段の定めをし
ないときは、その失効前にした違反行為の処罰については、その失効後も、な
お従前の例による。
(検討)
第六条 児童買春及び児童ポルノの規制その他の児童を性的搾取及び性的虐
待から守るための制度について
は、この法律の施行後三年を目途として、この法律の施行状況、児童の権利の
擁護に関する国際的動向等を勘案
し、検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。
出典: 法令データ提供システム (総務省 行政管理局)
児童買春、児
童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成十一年五月
二十六日法律第五十二号)