はじめてのちゅう
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ポッキーの日にポッキーゲームする臨帝
ずぶずぶ入れてませんが尿道責め描写有
帝人とて、元々、昼休みにクラスメイトから今日はポッキーの日だと教えられて以降、何かしらのことが起こるのではないかと予想くらいしていた。この場合、「何かしら」というのは、概ね恋人からの悪戯だとか、嫌がらせだとか、難題だとか、そういう類の物事で、正直な話、帝人の年上の彼氏は、頭のねじが少々緩かった。きっちりと締まって固い時もあるのに、緩むときの緩み具合がひどいともいう。
放課後に、臨也の部屋へ訪れるため、メールを送ったときの反応は、普段とそう変わらなかったように思う。それはそうだ。罠を仕掛ける相手に、気取られるようなへまはしないだろう。到着し、帝人は鞄をフローリングへ下ろしてソファーに座る。臨也がカフェオレを入れてくれる。そこまでも一緒だった。ただ、ローテーブルの上に、至ってシンプルな極細ポッキーの箱が置かれていたので「ああ、やっぱりな…」と帝人は心の中の「諦観」のスイッチを押した。ある意味で、それもいつも通りの予定調和ではあった。
帝人が、それを見つけて少しばかり死んだ魚の目になったことを、臨也もわかっているはずだ。しかし、臨也の微笑はさして変わらず、湯気の昇るマグカップを、帝人に手渡してくる。受け取り、とりあえずはポッキーには触れずに、一口温かなものを食道に入れる。いまだ11月とはいえ、朝夕の冷えはすでに冬のものだ。身体の内側が温まる感覚に、帝人はほっと小さく息を吐く。
「帝人君」
「何ですか、臨也さん」
「今日はポッキーの日なんだよ」
「そうですか」
「しいていうなら、イチゴポッキーの方が好きです」と帝人は続ける。そうすると、買ってあるからあとで食べればいいよと、相手が答えた。知られていたのか、それとも全種買い占めたのか判断に迷う返事だ。ただ、以前帝人がイチゴポッキーを食べていたおり、指先に移ったストロベリーチョコレートの匂いがおいしそうだからという意味の分からない理由で指先を舐めしゃぶられたことがあるので、どちらにせよあまり良い思い出はない。
臨也が帝人の隣へ腰を下ろす。慣れた近距離で、帝人も、もう相手との距離感に違和感や気恥ずかしさはあまり感じなくなっている。ただ、不信感だけはいつまでも消えないので、それが帝人の身体を少しばかり強張らせた。
ソファーへ座った臨也との距離は、手のひら一枚すら置けないような狭い間隔で、表現としては「密着」が正しい。誰の目があるわけでもなし、帝人とて臨也を恋人と認識しているから、イベントごとを二人で楽しむのは構わない。しかし、いかんせんポッキーが気になる。ポッキーというよりも、ポッキーを使って何をするのかが不安で仕方ないので、思わず逃げるように距離を置こうとすると、するりと腰に手を回された。
「え、何で逃げるの? いちゃいちゃしようよ」
「いえ、それはやぶさかではないんですが、ちょっと……」
「乳繰り合おうって言って、やぶさかじゃないって答えられたのは初めてだなぁ」
不思議そうに目を瞬かせる臨也から、思わず顔を背ける。いらない勘繰りであれば帝人の思考回路こそ恥じるものだったが、別段的外れという気配もない。ただ、帝人は羞恥心を持っていて、臨也は羞恥を感じる帝人の感覚が理解できないという隔たりが、両者の間に横たわっているだけである。
「まあまあ、いいじゃない。ポッキーの日だよ? ポッキーゲームしようよ。定番でしょう?」
「臨也さんの言う定番を、僕は目にしたことがありませんけど」
「そりゃ、人目のあるところでしてる恋人はいないと思うよ」と、意外とまともなことを言うので、帝人は一瞬、確かにそうかもしれないと思った。しかし、そうなると、ポッキーの日のポッキーゲームが定番なのかどうかというそれ自体、非常に信憑性が低いのではないかとも考えが至ったが、それを訴えたところで止まるような男でないことも確かだ。定番だとか、ポッキーの日だとか、そういったことは装飾品であって、突き詰めれば「いちゃつく」という行為が目的なのだから、帝人が拒否をしても「いやよいやよも」のじゃれ合いになるだけである。
楽しそうにポッキーの外装を開けている年上の男というのも、見ようによっては可愛らしいもので、帝人は微かに笑った。ただ、帝人のその感覚自体、実はただの「あばたもえくぼ」である。しかし、重ねて言う通り人目がない。ゆえに、正しい見解を示せる第三者が存在せずにいる。
たぶん、それをさして、帝人の周囲は「折原臨也に毒されている」と表現するのだ。ちなみに、帝人と臨也の関係において、専門家による第三者機関を置いて欲しいと常々訴えているのは正臣である。
「はい、どうぞ」
臨也はポッキーを一本つまむと、帝人にチョコレート側である片端を差し出す。なんという恥ずかしいゲームだと思いこそすれ、比較的無害な遊びだったので帝人は折れる。何回か付き合えば満足するのだろうし、結局は帝人も、言葉の通りの意味で「やぶさかではない」のだ。
「これ、どうすれば勝ちなんですか? 目とか開けるべきですか、閉じるべきですか」
「どっちでもいいよ。見てたいなら見れば?」
ゲームというからにはルールがあるのかと思いきや、臨也は投げやりである。口実として使うだけで興味は薄いのかもしれない。しかし、腰をホールドし直され、ポッキーを食べさせてもらっているような状態になり、帝人は、早まった自身に気付いた。
臨也が反対側を咥え、ひどく近しい場所に相手の顔がある。視界から状況を理解した瞬間、普段、キスをする前に相手と目があった一瞬よりも、ずっと重い気恥ずかしさが帝人を襲う。頬に熱が集中し、なんだこれと思うよりも早く、帝人はぎゅっと目を瞑った。一気に頭の中が沸騰したようなパニックが訪れたが、瞼の裏に、目を閉じる一秒前に映ったにやにやと口端を上げた臨也の笑みが焼き付いていて、思考の中すら逃げ場がない。
ぽりぽりと、食べすすめられている振動を唇で感じる。僅かな時間だ。そして、それが触れた。
ちゅうっと、吸い上げられるような感覚があり、帝人が咥えていた少しばかりのポッキーを、臨也が食べてしまう。チョコレートは溶けて、少しふやけた焼き菓子部分だけだったろうに、唇を合わせたまま、臨也はそれを咀嚼している。嚥下し、相手の舌が帝人の口内に入り込むと、それはチョコレートの味がした。舌の先と先が、挨拶をするように、つんと触れあう。唾液に混ざる菓子の甘さに、帝人がそれを啜ると、腰を抱えている臨也の手のひらに力がこもった。
唇が離れると、帝人は息を吸い込み、吐く。脱いでいなかった制服の上着を臨也に引っ張られ、脱ぐように仕草で言われる。帝人が、仕方がないなと、視線を下方へ向けながらジャケットを脱ぐと、それはローテーブルの上で放り上げられてしまった。室内の空気が甘い。そういうことをする空間に、少しずつ変わっていっているのがわかる。
「すごいキス待ち顔だったよ」
「やめてください、恥ずかしい」
からかわれて、帝人は顔を顰める。そして、そんな相手に、また臨也はポッキーを差し出す。まだするのかとげんなりした帝人に笑って、「だって俺しか食べてなかったし」と臨也は言った。
「多分、恋人同士でポッキーゲームするなら、キスした方が勝ちじゃない?」
「……もう負けでいいです」
「そう言わずに」
ポッキーの先が帝人の唇を割り、無理やりに咥えさせられる。噛み折ってしまおうかとも思うが、そうしたらそうしたで、また臨也が何かを思いつくのだろう。反対側を臨也が食む。しかし、今度は帝人から近づくことを待っているようで、相手からの動きがない。
目を閉じるのも、無意味な敗北感を味わって仕方がないが、帝人には相手を見たままポッキーを食べすすめるなどというスペックは積まれていないので、不承不承瞼をおろすと、かりっと、小さくポッキーを咀嚼した。
かりかりと、微かな音が鳴る。それが、帝人の肺のあたりを圧迫する羞恥心を育てていく。ポッキーが短くなれば、その分臨也との距離も縮まる。腰と背中に回されている恋人の手のひらが、シャツ越しの背筋を撫で上げくるので、臨也の服の端をぎゅっと握ってしまう。
ちょんと、柔らかいものに唇があたった。先ほどの臨也のように、相手の口内にあったスティック部分を自身の口の中へ招き入れ、嚥下するために微かに触れ合っている唇を離そうとする。しかし、それよりも先に頭部を抑えられ、いまだポッキーを飲み込みきれずにいた口の中を、臨也の舌が舐め上げた。
入れられた相手の舌を、嚥下の動きと一緒にちゅうっと吸いあげてしまう。その際、いやらしい音が口の端から漏れて、帝人の身体がかっと熱を孕んだ。頭部を支えている臨也の右手が、耳の裏やうなじを指先で辿るので、それにもひくひくと反応する四肢があり、首をもたげ始める肉欲に涙が滲む。
頭を撫でられて、やっと唇が離れる。僅かに突き出たままの帝人の舌を、臨也が舐め、「仕舞えば?」と促していた。
帝人のことを拘束していた両腕が離れ、ソファーの背もたれにぐったりとした身体を預ける。そうすると、機嫌の良さそうな臨也が、帝人の制服のタイを緩めた。
臨也は、ポッキーを一本口に咥えたままで、帝人のシャツのボタンを上から外していく。ぽりぽりとそれを咀嚼している音がして、帝人はなんだか、居たたまれなくなった。
多分臨也は、「食べ物を粗末にしてはいけません」という躾をされなかったに違いない。
ただ、今現在の状況下で考えても詮無いことなので、帝人はとりあえず唇を噛む。声を殺そうと努力をする。しかし、臨也がそういった帝人の機微を考慮するかといえばするはずもなく、ただ楽しげに、相手の表情を覗き込むばかりである。
初めの内は、左手の人差し指の付け根のあたりをきりきりと噛んでいたのだが、気付いた臨也が帝人の手のひらを持ち上げてキスをし、そのまま奪われてしまった。自分の腕なのに、自由がないというのも妙な話だ。
せめて移動しようと帝人は言ったが、別段ここでもできると押し切られ、ソファーの上で事に及んでいる。狭いクッションの上では逃げ場所が少ないのが不満だというのに、あまり意図が通じていない。もしくは、知った上で気にされていないのかもしれなかった。
肌蹴た胸の上に、紺色のネクタイが蛇のように寝ている。それを、臨也の持ったポッキーの先が除け、乳輪をつんつんと突く。そのまま、身体の真ん中をなぞり下りた菓子が、へその穴の中をくりくりとほじるようにして愛撫した。小さな穴をいじられる感覚が、下腹部へと熱を注ぎ込んでいく。くすぐったいような、痒いような、妙な気分だ。
「……ッは、ぅン…ぁん」
「薄いねぇ、帝人君」
「ぁッ…あ、あ…ぁ!」
言われたところで、肉体の貧相さはもう仕方がない。帝人は、元々恵まれた体格というわけではなかったし、典型的なインドアである。しかし、そんな薄い身体に欲情して、性器を勃起させているのは臨也だ。そう考えると、お互い様じゃないかと、胸のすっとするような小気味よさを覚える。
帝人が、悪い顔をしたのを見つけた臨也が、僅かに目を開く。そして、楽しそうに顔を歪めて、帝人の陰嚢やペニスを握り、擦る。わかりやすい愛撫に開いている両脚がひくひくと痙攣したが、膝を臨也の脇にすりつけ、ねだるような仕草を繰り返すくらいしか、帝人は逃げ方を教えてもらっていない。
へその穴をいじっていたポッキーの先端が、ぷっくりと膨らんだ左の乳首を突く。興奮して赤くなった帝人のそこは、行為のたびに弄られているせいで、少しだけ肥大化している。いまだ成長段階の肉体に、とくとくと注ぎ込まれたいやらしいセックスが、確実に帝人の身体を、通常の成長からそれた方向へ導いていた。
乳頭の先端のあるかないかという窪みをいじるように、チョコレート菓子がつんつんとつついてくる。身をよじると、胸の間に寝ていたネクタイがするりとこすれ、右側の乳首を刺激した。帝人の性器を愛撫する臨也の腕に片手を添え、単純な快楽に甘える。媚態に煽られたらしい臨也が、小さく息を吐きだした。僅かに熱のこもっているそれに気付き、帝人もまた、かあっと頬を染める。
「乳首とへそと、どっちが好き?」
「んんっ……ぇ、ッなに」
「乳首でポッキーとちゅうする方が、いいのかなぁ」
「ぃッぁアん! ん、ぅッいァっ…あ!」
「気持ちよさそうだしね」と、そう言った臨也が、帝人の乳頭をポッキーで押し潰す。瞬間、痛みと心地よさが性器を通り越してアナルに伝わり、ひくひくと後ろが震えた。そして、極細ポッキーが、突然の圧力に耐え切れず軽い音を立てて折れる。
臨也は、人差し指で帝人の小さな乳頭を潰し遊びながら、折れて二本になったポッキーの片方を拾う。そして、帝人に咥えさせると、残りを自身で咀嚼する。
ポッキーを食べようにも、陰嚢を手のひらで揉み込まれているので、うまく上下の歯を噛みあわせることができない。かり、と一口だけ噛み、その瞬間に亀頭を指の腹でぐりぐりといじられ、大きく口を開ける。ぽろりと首筋へ落ちたスティック菓子に「食べこぼしなんて子供みたい」と、ぽりぽりとポッキーを食べながら臨也が笑う。
「あ、気持ちいい? じゃあ、帝人君のちっちゃいミルクタンクも突っついてあげようか」
「ひぁああん! や、ゃあッも……ァ、あんッぁン!」
ポッキーの固い先っぽが、帝人の柔らかい袋を刺すのではないかという力で虐めてくる。そのまま、後ろの穴までチョコレート菓子に犯されそうで、恐怖を感じた故の悲鳴を上げると、帝人の潤んだ視界の中で、臨也が口角を釣り上げた。恋人の悲鳴に興奮するなんて、本当に最悪の男だ。
幼い陰嚢をぺしぺしとポッキーの側面で叩きながら、臨也が帝人の先端を爪で割る。下腹部に走る性器の痛みに、思わず眉根を寄せると、慰めるように頬を舐められた。
「フェラしてあげようか?」
「……ぁれ、怖いから…ッぃやです……!」
「え、怖いなんてひどくない?」
完全に上を向き、震えながら勃起する帝人のペニスを、臨也がポッキーの先端でなぞる。皺の上を辿られ、その妙な感覚にとろりと腺液が溢れる。そうして、帝人のカウパーまみれになったポッキーを、またぽりぽりと咀嚼しながら、臨也は不思議そうな顔をしてみせた。
臨也は心底妙な顔をしてみせるが、帝人にすれば、恐怖以外の何物でもなかったのだ。以前、臨也が帝人にしたフェラチオは、それこそ執着心が如実に表れたような粘着質なもので、もう出ないと言っているのに執拗に舐めしゃぶられたのである。正直な話、性器を食べられてしまうのではないかと思った。
帝人は、そういった小さなトラウマに耐えながら、首を振り拒否を示す。そうすると、臨也が少しばかりつまらなそうな顔をした。しかし、帝人にしてみれば、「じゃあ俺のを舐めて」と言われれば「喜んで!」と返すくらいには、臨也のフェラは恐怖の対象になっている。されるぐらいならする方がいい。
臨也の性器も、帝人が見る限り、衣服の中で随分大きくなっている。多少の我儘を言っても、臨也の方も、そろそろ「まあいいか」と思考を投げてくれる頃合だ。ただ、そうやって帝人が油断したのがわかったのだろう。臨也が、殊更きれいに、にっこりと微笑む。そして、先ほど爪で割った帝人の先端を、今度は両手の人差し指で広げながら、つるりとした亀頭の中心にある穴を凝視する。
「……ぇ、やッやぁ! な、ぃッゃだぁ」
「穴をちょっと広げただけで、すけべなお汁が垂れてくるなんてさぁ」
とろりと、臨也が見ている中で帝人の先走りがこぼれる。穴の入口を指と爪でいじられ、急所を遊ばれている感覚に帝人が泣く。つんと、そこを突かれた。何かを認識するよりも先に、「ひっ」と、帝人の喉がか細い悲鳴をしぼり出す。
つんつんと、棒の先端が、帝人の尿道口を品定めするようにつついている。沸騰したようだった先ほどまでの脳内に、すっと冷水が入り込み、帝人の顔が蒼くなった。それを眺めて、いじめっ子の顔つきになった臨也が、楽しそうに帝人の頬を撫でた。興奮している臨也の手のひらも、常のそれよりは、ずっと熱い。
「舐め啜ってあげようかなって思ったけど、嫌ならしかたないよね?」
「ぃ、いざやさ……ゃだ、いやで」
「うん、嫌なことはしないよ。大丈夫」
臨也の左手が、帝人の陰嚢へ触れる。そして、優しくマッサージするようにほぐされ、帝人は湧き上がる射精感に上半身をひくりと震わせた。恐怖と快感がないまぜになり、緩やかなパニックが思考をぐちゃぐちゃにしていく。真っ白というよりも、小学生がパレットを洗う直前に、笑いながら残った絵の具を混ぜ合せているような、そんな乱雑さがあった。
帝人は、思わず臨也の手首を取る。爪を立てて、縋っているのか抵抗しているか、帝人本人にもわかっていない甘え方をする。ただ、臨也はそういう相手を、突き落すのが大好きな男なのである。
「代わりに、帝人君のだらしない穴、栓してあげる」
ずぷりと、穴を広げられ犯される感覚を味わう。
臨也と初めてセックスをした際、そんな風に肉を開かれる衝撃を、二度と味わうことはないだろうと帝人は思ったものだが、それと同等に近いショック状態で、呼吸を忘れる数秒間があった。しかし、そんな帝人を置いてきぼりにして、ポッキーはずるりと、腺液のこぼれる尿道口を、また僅かに進んでみせる。
「ひ、ぃっァ! ィぎッんん、ん! ひっぁ! ア!」
「動くと折れるよ」
実際は、ほんの僅かに入り込んだだけだ。ポッキーの片端は、四分の一も帝人の尿道を犯していない。しかし、閉じられていたその入口に、何かが突き立っている恐怖が、帝人の両目からぽろりと涙をこぼさせた。加えて、勃起した自身の性器の先端から、ポッキーが生えているその光景は、帝人の中の色々なものを傷つけるのに十分な衝撃を与える。
ぎゅっと目を閉じ、身を固くした帝人の身体を、男の手のひらが撫でる。そして、チョコレート菓子を先端の穴に突き刺されたペニスの幹は、臨也によって、いつも通りの愛撫をされる。ひどい扱いをされても、萎えない帝人の身体は、被虐的な悦びを得る素質があったが、臨也は、そのことは指摘しなかった。臨也はいつも、帝人のことを、本当に殺してしまう様な言葉は吐かないのだ。帝人は、その理由を心得ている。愛があるからだ。
「ぁッあ、…ひぅ、っぅ……ふぇ、うぅ…ッ」
「あれ、泣かないでよ」
愛撫を受けながら、ぼろぼろと、本格的に泣き始めた帝人を見て、臨也が苦笑したような声を出す。しかし、その反面、愛しげに細められた男の表情は嬉しそうで、ひどく満ち足りていた。
帝人は、ふるふると震える指先で、自身の性器に刺さるポッキーを抜き取ろうとする。ただ、それはゆったりとした仕草で押しとどめられ、「手はここ」とでもいうように、片手は帝人自身の胸元へ、もう片手は臨也の首の後ろへと誘導される。
性器に刺さっているものが恐ろしすぎて、癇癪を起し暴れることもできない帝人を眺めていた臨也が、また小さく笑う。恋人の涙をぬぐい、そして、帝人の尿道口に入り込んでいるポッキーの反対側を咥える。
「ッぇ……」
息を飲んだ帝人の視線の先で、ぽりと菓子を齧る音がする。それと同時に、ゆっくりと臨也の頭部が帝人の股間へと近づいていき、同時に、性器や袋を撫で揉まれ、帝人は悲鳴を上げた。
「ゃ! ゃあっぃやだぁああ! ぃじゃやさッヤです、やだやだ…ッあ、あぁンッあ!」
相手の射精を促す臨也の左手とは別に、もう片手が胸元へと伸び、添えられていた帝人の指ごと乳輪と乳首を摘み上げる。きゅうきゅうと小さな先端を潰される感覚に、ひくひくと腰が震え、精巣を刺激する指の動きと相まって、喉から甲高いよがり声が出た。
「ぁあん! ァん! あッぅ、ィ……ァッ!!」
臨也がポッキーを噛み進めている咀嚼音が、じゅぽじゅぽと性器をこする水音に混ざっている。相手の髪の先が、両足の付け根を時折くすぐり、帝人はぶるりと脚を痙攣させる。ちゅうっと、先端に柔らかい皮膚が触れ、吸われる。それが臨也の唇だと、帝人の脳が理解する前に、待ち望んだ刺激を受け取ったペニスが喜びで震えた。ずるりと、尿道の入口に刺さっていたそれを、臨也の舌と口で抜き取られる。
「あっア…ンやぁッぁああ! ぁあッひ、ぎぃっやァ! アぁん!」
びゅっと、精液が噴き出た。じゅるじゅると吸われながらする射精の止めどなさに、いつの間にか持ち上がり臨也の胸元へぴったりとくっついていた腰部が、少しずつソファーへと戻っていく。出しているのか、出させられているのか、どちらなのかわからない。どろりと溶けていくものがあって、多分それは、理性だとか倫理観だとか、そういったもののなれの果てだった。
荒い呼吸の音が響き、それが自身の吐き出しているものだと気付くのにも、少しだけ時間がかかる。ちゅっと、可愛らしい吸引音をさせて、臨也が顔を上げる頃には、帝人の手も足も性器も、すっかり臨也のものになっている。
興奮し、両目を輝かせている臨也が、すっかり熟した帝人の四肢を舐める。その舌先にもびくびくと反応して、帝人の性器は、また少しだけ持ち上がってしまった。
「帝人君の尿道口、奪っちゃった」
「……ぁ、おしっこ、出るとこの初ちゅう…奪われちゃいましたぁッあ」
「あ、そっか。前のフェラのとき、帝人君のおちんちんにキスしなかったね」
「だから嫌だったの?」と、臨也が尋ねてくる。ただ、帝人にはもう、何を言っているだとか、何をしているだとか、そういったことを認識する能力が残っていないので、どうしたところで答えようもない。ただ、遠いところにある脳内の一部分が、明日はトイレで少しだけ痛い思いをするのではないかなどと、溜息を吐く程度だ。しかも、それの声も今は、随分と小さい。
臨也が、力をなくした帝人の身体に覆いかぶさる。そして、自身のズボンを緩めながら、帝人の頬へキスをする。反射でしかない微かな声を上げる帝人に笑いかけて、臨也はポッキーを帝人に咥えさせた。ぽりと、一口咀嚼すると、口内にチョコレートの味が広がる。
「その内、おしっこするだけでイける身体にしてあげるからね」
「嬉しいよね?」と臨也が言うので、帝人は、また菓子を食べこぼす。泣いてしまった帝人を宥めるように、臨也はポッキーを再度差し出して、相手の咀嚼を手伝う。反対側の片端を咥えた臨也と、かりかりと菓子を食べ合いながら、帝人はまた、気恥ずかしいキスをする。
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