ショタパラ!
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ショタ帝人君→だいぶ頭が弱い
高校生臨也さん→だいぶ頭がまずい
その日、臨也が自宅に帰る途中、いつものように区立の小学校の前を通りかかると、シーツを被った小さな物体にしがみつかれた。毎日のことであるので驚きはしないが、右足の膝のあたりを両腕で掴まれるので、歩きにくくはある。しかも、今回に限っては相手の足元が、丈の長い布地のせいでおぼつかないような状態だったので、転ばせないよう注意しないといけなかった。なんだろうかと思いつつ、目出しされた白シーツに身長を合わせて屈みこむ。そして、頭からすっぽりかぶったシーツごと、頬のあたりを摘み引っ張ると、中からきゃあきゃあと子供らしい悲鳴が上がった。
「帝人君、危ないでしょう。何、どうしたのこれ。いじめ?」
「ひが、ひがッぅ……ぃじゃあおにいちゃ、やぁ!」
「はいはい、今日も俺の帝人君はえっちな声が似合うねー」
言いながら、虐めていた頬を離す。すると、名前を当てられたにも関わらず、白シーツが少しばかり臨也から距離を取り、今度は両手をばっと上げた。可愛らしいが意味が分からない。どうやら名前当てゲームではなかったらしい。臨也としては「だーれだ」の進化系かと思っていたので少々意外だ。
「とりっか、とりー!」
「え?」
「鳥か鳥?」と臨也の脳内が漢字変換をする。どちらも鳥だ。しかし、白シーツの中身である帝人は、きゃっきゃと笑いながらもう一度同じ呪文をいう。「とりっかとりー!」、子供特有の高い声音は、興奮しているのかいつも以上に楽しそうだ。冬に片足を突っ込んだ季節であるので、臨也としては帝人を連れて早く帰りたい。しかし、とうの帝人は臨也が答えるのを待っているようで、その場を動く気配もなかった。
臨也は、もう一度相手のいでたちを観察する。そして、目出しの形が目と口になっており、びりびりと破られていることに気付く。得心すれば早かった。ランドセルの形に膨らんでいる背中の部分がなんとも愛らしいお化けである。
「ああ、なるほど、ハロウィンね。そっか、10月も終わるんだねぇ」
「いざやお兄ちゃん、とりっかとりー?」
「うんうん、トリートトリート。ちょっと待ってな」
三度目にして、ようやっと目当てのものにあたり、帝人がもう一度両手を上げる。小学校で習ったのか、英語の発音をそのまま日本語で言った言葉を繰り返していたらしい。多分、お化けのシーツ自体は図画工作の時間の課題で作ったのだろう。気付いて見てみると、ちらほらそういった妙な仮装で下校についている低学年の子供たちが目に入る。
臨也が、ほぼ空に近い鞄を漁り、数個の飴を取り出すと、帝人はシーツの中で両手を差し伸べてくる。そのままでは掴めないだろうと裾を持ち上げると、多少の抵抗があったが、もともとかぶっていただけの布地は簡単に奪い取れた。気に入っていたのか、少しばかり不満げに膨れた子供の顔が露わになる。
「食べたくないの?」
「おばけ返してぇ」
「おうちに着いたらね」
臨也は、帝人の小さな口に、包装紙を剥いた飴玉を押し込む。その際、年齢のままの幼い舌を人差し指でくすぐる。「んー」とくぐもった声を上げる帝人は、口内に広がる甘い味に満足して、ちゅうちゅうと臨也の指を吸う。
そういう風に教えているので、帝人は、いまだ自身の行動の異常性を自覚していない。校門の前でするにはいささか行き過ぎたスキンシップだが、臨也のいでたちが優等生然とした高校生であり、また、彼が帝人を迎えに来るのは珍しくないため、指導の対象になったことはなかった。世の不条理が極まれる話だが、臨也自身はどこ吹く風である。
帝人の口から指を引き抜くと、ちゅぷりと唾液の音が鳴る。そして、濡れたままの人差し指を舐め上げ、飴の甘味を帝人と共有する。お菓子を無事に手に入れたことで、帝人はいつものように臨也の制服の裾を握った。「帰ろう」という合図だ。
「甘いねぇ、飴おいしい?」
「んー!」
「それどっちなの」
臨也は、帝人の歩幅にあわせてゆっくりと歩く。その横で、たどたどしい言葉の羅列が、臨也に向かい語られる。日常を楽しげに話す帝人は、時折臨也の手を握り、注意を引く。こんなことがあった、あんなことがあったと、必死に話す帝人は僅かに頬が紅潮しており、それを「おいしそうだなぁ」と思っている年上の男は、にこにこと相槌を打つ。
つるべ落としの夕刻の中を、ゆったりと家路につく二人は、兄弟でもなければ親戚でもない。しいて言うなら、家を何個か挟んだご近所さんだ。ただ、目指す家は臨也の部屋である。帝人の両親は共働きで、父親は帰宅時間が遅く、母親は夕方からパートに出てしまうから、夕食と入浴と、時折就寝まで、帝人は臨也の世話になっていた。
臨也の家も、両親は、いまだ幼い双子の妹たちを連れて海外にいるので、無人という点では竜ヶ峰家と同じである。しかし、「しっかり者の臨也君」で通っているので、不信感を抱かれたことがない。悲しいまでに、臨也にとってのみ有難い話だ。
似たような区画整理をされた戸建だったが、他人の部屋というのは子供心に楽しいらしく、帝人は臨也の部屋に来るとよくはしゃいで遊んだ。特に、今日は呪文を唱えることでお菓子をもらえる特別な日だという認識らしく、子供のテンションは高い。臨也は、二人分の夕食を作ってやりながら、相手のそんな姿に微苦笑をこぼす。
お菓子から帝人を引きはがし、どうにかレタスチャーハンと卵スープを食べさせ終えると、疲れた帝人はうとうとと船をこぎ出した。湯の準備をし終えたところで、リビングのソファーに寝転がりそうになっている帝人を見つけると、臨也は小さく息をつく。
「帝人君、寝る前にお風呂と歯磨きしないと」
肩を揺すれば、帝人は何度か瞬きを繰り返し、どうにか眠気を払おうとしている。一応、お風呂と歯磨きが寝る前にするべきことだという認識はあるのだ。ただ、子供らしく欲求に素直であるので、どうにも意識を保つのが難しいらしい。
どうしたものかと臨也も思うが、いつもの「遊び」をする前に寝られるのも興醒めである。寝ている帝人をいじるのも好きだったが、起きている方がずっといい。そして、この時点で、臨也の思考回路と行動はだいぶおかしい。
ふと、帰ってそのまま放っていた帝人のお化けを思い出す。返してとせがんだ割に、家につけばすっかり忘れた様子だったので、臨也も鞄と一緒に放置したままだった。子供の目を覚ますようなことがあればいいわけで、臨也はそれを頭にかぶると、またうつらうつらと揺れている帝人をぎゅっと抱きしめる。唐突なことに、一瞬びくりと震えた帝人は、しかし見覚えのある白シーツにぱっと顔を輝かせた。それを、不恰好な顔立ちの穴から眺めつつ、臨也も口端を持ち上げる。
「Trick or Treat?」
「ふえ」
「悪戯とお菓子、どっちがいい?」
自分が言った言葉と同じものを返され、帝人の顔が戸惑いで揺れる。もらうばかりで、自分があげるという思考がなかったのだろう。可愛らしい傲慢さだった。シーツから出てしまう両腕を、帝人の小さな四肢に絡ませて、臨也はくっくと笑う。
実際、帝人はお菓子の類を、一日かけてもらったのだろうから渡そうと思えば渡せるはずだ。臨也が与えた飴だって、まだ残りが何個かあるので、単純に、自分のもらった「自分のもの」を、誰かしらに渡したくないという独占欲が顔を出しているだけである。なかなかいい性格をしていると、臨也は思うが、多分臨也にだけは言われたくない類の感想でもある。
「帝人君、Trick or Treat?」
「も、持ってない、です」
「じゃあ、悪戯?」
「この間の、犬のおまわりさんごっこ、楽しかったね?」と臨也が言うと、帝人はふるふると首を振る。つい3日前のことなので、記憶も新しいらしい。比較的、帝人が苦しい思いをする遊びだったので、拒否するのが早い。
もともと、断られることはわかっていたので、臨也も別段構いはしない。ただ、もらうばかりで相手にお菓子を渡せず、しかも臨也の提案を断った帝人が、どうしようと悩むのが可愛いのである。臨也の片手が、帝人の太ももや腰を撫で上げた。肉付きの薄い身体だったが、幼い柔らかな皮膚だ。脚の内側を撫でると、慣れた感覚に帝人の身体はひくりと震える。生まれてこの方、ずっと臨也に遊んでもらっていた帝人の身体には、蓄積している色濃いものがある。
「でも帝人君、俺にはお菓子くれないんでしょう?」
「えーと、えーと……あした」
「明日はもうハロウィンじゃないしねぇ」
追い打ちをかける意地悪な物言いに、帝人の双眸が潤む。臨也は、我儘な相手に、「仕様がないな」と笑う。そして、帝人手製のお化けを剥ぎ取ると、ふくふくとした柔らかい頬に口付ける。二度三度と、軽い触れ合いを繰り返すと、帝人はいつものように、くすぐったそうに身をよじらせて笑った。
相手の小さい四肢をソファに転がし、臨也はそれを真上から眺める。手足を抑えなくても、素直に臨也のことを許す身体だ。無知につけ込んだのは臨也だったが、頭のいい帝人には、そろそろ通用しなくなってきている。先ほどのように、遊びを断られる回数も増えているので、最近の臨也は、相手の機嫌を損ねないように気を遣っているくらいだった。
「じゃあ、俺が帝人君にチョコレートあげる。そうしたら、帝人君はそのチョコ、俺にちょうだい?」
「チョコレート? 臨也お兄ちゃん、寝る前に食べたら、だめなんだよ?」
「お兄ちゃんはもう、大人だからいいの」
「ずるい」と言いたげに寄せられた眉根にも、臨也はキスを落とす。そして、身体を撫でながら「ね?」と尋ねると、渋々といった風情で帝人も頷いた。相手が幼い内に、できる限りのことはしておきたい。籠絡は続けてこそ意味があるのだ。それこそ、帝人のことをお姫様のようにずっとあやして、何でも与え、甘やかしながら躾ける臨也なので、身に染みている持論でもある。
「んッふぁ……ぉ、にいちゃ」
「んー?」
「ひん! ゃ、あっぁつい……ゃんっ」
とろりと、湯せんにかけられたチョコレートが垂れる。熱を持ったそれが、帝人の柔らかい皮膚の上に落ちると、そのたび、か弱い悲鳴が上がる。嬲るように舐め上げて、口内に広がるチョコレートと、帝人の汗の味を味わいながら、臨也は上唇を舐めた。
帝人のシャツや下着は、すでにソファーの下でたわんでいる。ハイソックスの靴下だけが、脱がされずにいるのは臨也の趣味だ。右の頬をソファーに押し付けるようにして喘ぐ帝人に臨也は口付ける。そのまま首筋を舌で辿り、時折吸う。
細かく息を吐き出す帝人の胸に、またどろりとチョコレートを垂らしてやる。びくびくと反応し、あついあついと悲鳴を上げる小さな子供が愛らしくて、臨也はまた、微かに笑う。小さな乳首がチョコレートに埋まり、それを探すように、臨也は相手の腹部と胸部をじゅっと吸いながら舐める。刺激を愛撫として受け取り、ぷっくりと膨らんだ乳首は卑猥で、実際、それを押しつぶしたり噛んだりすると、帝人はあんあんと声も抑えずに鳴いた。
「ひぎ、ッぁ……つい、ぃじゃおにいちゃんッん! ぁん! あッ」
「我慢我慢、悪戯は嫌なんでしょう?」
「俺はどっちでもいいけど」というと、帝人は「やぁー!」と、高い泣き声を出す。
未発達な白い身体には、ところどころ、拭いきれないチョコレートの汚れがある。それを丁寧に舐めながら、思い出したように、臨也はローテーブルに置いているボールからチョコレートを垂らす。最初、驚いた帝人がチョコレートをこぼし、ソファーを汚したので、臨也は「悪い子だ」と言いながら帝人に舐めとらせた。頭部を押さえつけられ、固い布地を、許されるまでちゅうちゅうと吸い続けるのは苦しかったらしく、帝人は従順になっている。
「精通もしてないのに勃起するんだから、オスっていうのは単純だよね」
「んッ…んぅ、ひっ……きゃんっ!」
「はは。何度見ても、ポークビッツみたい」
臨也が、帝人の性器にすらなっていないそれに触れると、相手は悲鳴を上げる。二次性徴の訪れない身体でも、性的な快楽で勃起することはできる。しかし、腺液すらもれないそれは、どこか滑稽だった。
臨也とて、いまだ高校生なのだから、大人に比べればずっと若い肉体をしている。しかし、帝人はそれ以上に幼気だった。膨らんでもいない陰嚢を、臨也が指先で突くと、潤んだ瞳で不思議そうな顔をする。精巣や、腺液を作る部分が、まったく成長していない証拠だ。
乳首に吸い付きながら、帝人のペニスをこする。そうすると、単純な快楽が勝るので、帝人は両腕を伸ばして臨也に抱きついてくる。両足を広げて、股間を晒すのは臨也が教え込ませた癖だ。肋骨の骨を辿り、へその穴を舌でほじると、柔らかいばかりの腰がひくひくと跳ね上がるのがいい。
帝人の身体は、本人の陰部ばかりが追い付いていないだけで、すっかり性的だった。そうしたのは臨也である。
「気持ちよくなってきた? 帝人君」
「ぉにいちゃ、ッぃざやおに、ぃちゃ……ンッんん」
「背徳的だなぁ、ちゃんと、俺好みだよね」
臨也が頭を撫でると、帝人は額を擦り付けてくる。猫の子供が、匂い付けをするような仕草だった。
熱を持っているチョコレートを、また掬い取る臨也に、帝人の目が怯えを滲ませる。それには気付かないふりで、すっかり尖った乳頭をつまむと、帝人はそれこそ猫のような声を上げた。人差し指と親指で挟み、ぎゅうぎゅうと押し潰し、引っ張り上げ、乳輪まで真っ赤になるほど甚振る間、帝人は何度も喘いで見せる。
被虐的な悦びを感じるような年齢ではないから、時折塗られるチョコレートのぬるさと、それを優しく舐め上げられる感覚に、感情が追い付いていない悲鳴だろう。ただ、そうやって胸への刺激に帝人が夢中になっている間に、ぴんと反応し健気に立ち上がっている性器へ、熱いままのチョコレートをどろりと落としてやる。
「ひぃッぐ…ぁあアッあん! あづ、ッやぁああ! やァッ! あづぃ、ッぃぎ、んん! ィあッあ、あ!」
帝人の精液を吐き出すことのできない尿道口が、ぱくぱくと呼吸をするように、微かに開くような痙攣をしている。甘い香りが周囲に満ち、その中に、微かに汗の臭いが混ざっている。
臨也が、帝人のペニスを覆うチョコレートを舐め啜ると、断続的に帝人が泣いた。それを聞きながら、臨也は帝人が達することができるように先端を舌で嬲ってやる。そうして、相手の幼い身体に墨のようなものを落とし、滲ませて、染まっていくそれに恍惚としながら、臨也もまた、自身の性器に手を伸ばした。
帝人の腰がくんと持ち上がり、臨也に押し付けるようになる。肉体の反射なので、誘っているような卑猥さはないが、常であれば風呂に入り、すでに布団の中で毛布にくるまっているような幼子が、男に押し倒されたソファーの上で、泣きながら腰を揺らしているという事実に、眩暈がするような憐憫と肉欲を、同時に感じる。
「あ、ッぅあぁ…あん! ぃア、あ、……ッあぁん!!」
びくびくと、痙攣するように帝人の身体が震えた。両足がひくひくと震え、一瞬、帝人の目がうつろになる。子供には高すぎる場所へ押し上げられたショック状態なので、臨也はその無防備な四肢を撫でると、口を拭う。確かに達している様子であるのに、やはり帝人のそれは臨也の唾液以外で濡れてはいない。
帝人が、ドライオーガズムに達し、だらりと身体を投げ出しているのを見ながら、臨也は、自身で自分のそれをいじる。そして、完全な勃起になっていたそれから、先走り以外のものが漏れ出そうになり、そこで初めて、絶頂の余韻でぼんやりとしている帝人の頬を撫でた。
「…帝人、君。あーんして」
「あー…?」
素直に口を開き、舌や口内を見せる帝人へ、臨也は笑いかける。そして、額を撫でると、子供の目の前に自身の性器を晒す。
すでに皮の剥けているそれは、ある種凶悪な肉塊だったが、臨也は、相手の両手を取ると、帝人に自身の亀頭と鈴口をいじらせる。年齢が、二桁にもならない子供手のひらは温かく、丸い指先が臨也の吐き出し口を突くと、すでに相手の痴態に興奮していた若い身体は素直に反応し、白濁を噴出させた。
「っふ、んぎ」
びゅっと飛び出たそれは、帝人の口内や頬を汚す。帝人が呻くが、臨也は相手の頭部を押さえつけ、精液が子供の口内にたまっていく様子をじっと眺めた。赤い色の舌が白く濁り、おいしいわけでもないそれに帝人の頬を涙が伝う。
吐き出し終え、臨也が相手の顔を離すと、帝人はきゅっと唇をつぐむ。そして、目を瞑り眉根を寄せながら、必死に喉を上下させる。帝人にとって、すでに臨也の精液というのは飲むものだ。
帝人がちゃんと飲み込むのを見て、臨也は苦笑する。あまりにまずそうにする素直な様子には、そういった表情しか浮かびようがないのだ。仕方ないので、残っているチョコレートを指先で拾い差し出すと、わかりやすい子供は嬉しそうに吸い付いてきた。変わり身が早いというよりも、縄跳び遊びが終わったから、部屋で折り紙を折るという、そういった切り替えそのものである
擬似的な性行為とはいえ、事後といって差し支えないぬるい空気の中で、帝人がチョコレートを舐める水音が小さく鳴っていた。それを聞きながら、臨也はふと、思いついたことを言う。ただ、思いつきであったとしても、冗談でもなんでもないのが、臨也の恐ろしいところである。
「ね、帝人君が精通したら、その一番最初の精液、俺に飲ませてね」
「……せーつう?」
「今帝人君も飲んだでしょう、ちんぽみるく。今度は帝人くんのを、俺が飲むってこと」
「約束」と、臨也が小指を差し出すと、とろりと目を蕩けさせていた帝人もふにゃりと笑って、頷く。ゆびきりげんまんと、掠れた喉で歌う帝人に、臨也は幸せそうに笑った。臨也が、帝人のことを愛したのは、すでに一つの事象である。起こったことを覆すことはできないし、世界はどこまでも、帝人のことを臨也に与えていた。帝人に、いまだ恋愛感情を理解できなくとも、そのうち思い知る日が来るのは確かだったからだ。
みんなには内緒の遊びは、その後ずっと、続いていった。
であれば、きっと、帝人がこうなった責任は、彼自身にはないだろうと、臨也も思う。
高校生になった帝人は、「臨也さんは本当に変態です。なんで僕こんな危ない人と毎日遊んでたんだろう」とよく文句を言うが、臨也から離れることなく成長している。それはそうだ。たぶん、性的な嗜好で、臨也に躾けられた帝人についてこれる人間は少ない。
なんせ、男同士は結婚できないと知るよりも早く、男同士でセックスできると教わっているのである。同年代に比べても、まず性教育のスタート地点が違う。そもそも、時折帝人から漏れる恋慕の情を、感じ取れないほど臨也は疎くない。
「臨也さんは変態です。病気です」
「昔みたいにお兄ちゃんって呼んでいいのに」
「聞いてますか人の話」
帝人は、臨也がせっかく用意したハロウィンの仮装を放り投げる。というよりも、臨也の顔面へ投げつける。あたっても大したダメージにはならない。なんせ、皺くちゃにされたそれは、レースと紐でできたベビードールである。黒色のとんがり帽子が続投されたが、空気抵抗によりあえなく途中で落下した。そもそも、帝人には剛速球を投げられるような腕力もないので、臨也はそれが癇癪だと知っている。
ただ、しいて言うなら、臨也の部屋でシーツを被って待っているのだから、十分帝人は好きものだろう。狙い通りと言っていい。そうなるように、手塩にかけて育てたのだ。
成長はしても、帝人は臨也よりずっと小さい。そんな小さい帝人が、シーツを被っていると、昔のハロウィンを思い出す。無邪気で無知だった子供は、知恵を得て多少のずる賢さを身に付けたが、いまだ愛しい臨也の思い人だ。
「ハロウィンだね、帝人君」
「……そうですね」
僅かに紅潮した帝人の頬は、投げつけた衣装ばかりが理由ではない。にやにやと笑みを張り付けて、臨也がベッドに近づくと、ふるりと相手の身体が震える。期待しているのだ。すけべな身体だと思う。
「お菓子と悪戯、どっちにする?」
「ッぅ、ん」
頬を撫でる。こめかみに口づけ、耳殻を食む。ぎゅうっと目を瞑る帝人の仕草は、幼気だった頃とまったく同じで、臨也は微笑む。
閉じられた瞼と同じように、きゅっと握られた両手が、シーツに皺を作る。ベッドの上に座り込む帝人の膝の上で、緊張している手のひらが、小さく震えていた。
「悪戯は……ぃやです」
「じゃあお菓子頂戴」
上着も脱がずに随分性急なことだと、臨也自身思う。ただ仕方がない、すでに捧げられた愛情である。
帝人が、そろそろと身体を覆う白い布地を引き上げる。両手でシーツが引き上げられ、晒された下肢には、興奮しきった帝人の性器があった。鈴口からとろとろと、透明な腺液をこぼすそれは、過去の臨也がしたようにチョコレートが塗られており、それを自分で用意して、あまつさえ勃起させている帝人が、臨也の琴線をぞくぞくと震わせた。
陰毛は、昨日のうちに、臨也がきれいに剃り落としている。明日明後日には、帝人は多少痒い思いをするだろうが、ずっと股間を引っ掻きたいという欲求にかられ続け、それに耐える帝人というのも、臨也にすれば愛でる対象でしかない。触れ合わない日々の間に、僅かに蓄えたのか、帝人の陰嚢は珍しく、常に比べれば少しだけ膨らんでいる。それに手を伸ばして揉み込んでやると、帝人は犬のような細かい呼気を漏らした。
「えっちだねぇ。こんなにお汁漏らしてる。なんかかわいそう」
「ッん! ぁん、……ンぅっぁ、あ。ぃ、ざぁさ……もっと」
「んー?」
股間を晒して、屈辱でしかない性器を相手の手のひらに押し付けながら、帝人がねだる。性的な部分で、帝人は臨也には勝てない。年季が違うのだし、調教というのはそういうものだ。
一番帝人がいじって欲しいのだろう亀頭には触れずに、両足の付け根や袋ばかりを撫でさすると、目に見えて帝人の理性が消えていくので、それを眺めるのも臨也は好きだ。帝人が、臨也だけの帝人になっていく過程であるので、殊更可愛らしいと感じるのだと思う。
「ぃ…じゃや、さッ、ひん! いじゃぁさ、ぁんッ」
「何? 俺のこと呼んでる?」
問い返すと、帝人が首肯する。何度も首を縦に振るので、額をくっつけて鼻の頭にキスをする。甘ったるい仕草に安堵を覚えたのか、帝人が臨也の目を覗き込んだ。羞恥心の強い帝人にしては珍しいことだったので、臨也は僅かに驚く。
はふはふと、何度も息を吐いている帝人の背中を撫でると、きゅっと抱きついてくる仕草が可愛い。しかし、きっと臨也は、帝人が何をしても、可愛いと思うに違いなかった。
子供返りしているような帝人に、思わず悦に入る。臨也も社会人になって、多少忙しい日々があるので、昔のように、毎日帝人と触れ合うことができない。ただ、触れられない一週間の後には、相応のご褒美もあった。それが今日のような日だ。
「ぁ、の…ッんん、ぁ、あっ」
「帝人君、喘ぐの早いなー。誘ってるの?」
「ひぅぅぅぅっ」
チョコまみれの帝人の性器の根元を、きゅっと握り込む。そうすると、帝人は臨也の耳元で、それこそさめざめと泣いて見せる。擦り付けられる頬にキスをしながら、臨也が久しぶりの恋人に甘えていると、相手も同じようにするのが嬉しかった。
帝人が、腰を揺するようにする。覚えさせた後ろがうずくのかと思ったが、臨也が尋ねるより早く、帝人が乞う。
「ぁの…んっ、あッちんぽみるく、のましぇ…て、くらさッん、ぃじゃあさぁん……ぁ、ぼくのッも、ッん…のんでぇ」
「……わぁ」
「ゃあああ、あ、あッぁあん! だめだめだめッ、いく、いっちゃ、ぅッやぁん!」
思いのほか帝人の意識が飛んでいるので、まさか何か薬でもしているのではあるまいかと疑う。思わず、相手の性器の先端をぐりぐりと押し潰してしまったが、いやだと悲鳴を上げるので離した。ただ、離したら離したで泣きそうな顔をする。我儘だなぁと思うが、それは昔からなので、臨也は気にしない。
「パブロフの犬というか、反射になってるのかな?」
「ぅッ、ん、んぅ」
「俺の努力の賜物だねぇ」
愛情深く、臨也は帝人の身体を抱きしめる。そうして、彼の身体を押し倒して、希望通り相手の性器を啜ってやる。あんあんと鳴く帝人に、臨也の中で浮かんでは沈んでいく重い重い感情があり、多分それが、帝人を捕まえている鎖になっている。
であれば、一生分を繋いでいられるように、臨也は何度も、愛を落とし込む。
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