交易都市
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 結局の所、「愛」なんてものは一つの市場に他ならないのか。
 彼は些か偏った感想を抱くと、つまらなそうな素振りで息を吐いた。
 照明を落とされた会議室の前面ではスライド上映が行われおり、参加者の大多数は映し出される情報に集中している。その様な中、しかしながらカトルの視線は、彼に上記のような見解を抱かせた仲睦まじい張本人等、つまりはヒイロとデュオを、多少の悪感情を含めて捕らえたままであった。
 プリベンター本部に勤める二人を、L4コロニーに定住するカトルが観察するような機会は決して多くない。だが、彼らが常に似たような生活を繰り広げているのだろうことはカトルでなくとも容易に想像がつく。
 デュオが興味の薄い仕草で頬杖をつき、ヒイロはそれに視線を遣るものの何事か言うことはない。もうすでに何度も確認し尽くしてしまったのだろう会議内容は、上役への報告代わりであるのだからデュオが退屈がるのも無理はなかった。
 時折、ヒイロの耳元へデュオが唇を寄せる。それに対するいらえに彼は口を噤み、しかし暫く経てばまた同じ事を繰り返す。
 まるでバランスの悪い貿易のように、言葉という多量と少量が行き来していた。恋人同士などという世界一小さな交易都市で、馬鹿らしい愛の取引。一つの市場から動きはしない物品の無限な絶対量に、実は損得もありはしないけれど。
 ふと、カトルの見つめる中でデュオの送った行き過ぎる分量に、ヒイロが見合うだけ応える。つまるところ、一瞬の口付け。
 カトルは何度目かのため息を押し殺し、狼狽したのだろう哀れな友人を思った。
 「デュオって、意外と割に合ってないよね。」と。

 「交易都市」としてはちょっと無理のある解釈でしょうか。個人的にバカップルの所業について五飛は二人は殴り飛ばします、会議中だし。そしてトロワ・バートンは無視をかまします。カトル様は呆れつつも気にしません。


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