狂熱の骸
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デュオ・マックスウェルは、その黒い機体を見上げた。
彼は、これからこの黒衣の相棒を壊してしまわなければならなかった。
デュオは胸に去来し、そして不快に蔓延る切なさに心底呆れ返った。どんなに心を砕いても、いつまでも背を預けていられる存在ではないと、分かっていたはずなのだ。
なのにその衝撃を受け入れてしまえば、とても愛しているこの冷たい肌に二度と会えることもないと、生温かな現実味が思いもしない感傷を連れてくる。
残るだろう骸の一欠片を、後生大事に持ち続けようか。ひらめきは一笑に付される。余りにもナンセンス。デスサイズヘルがそう呟く。
二人きり見つめ合い、唇の中で愛を囁いた。デュオはやはり、神様の御元へ召された過去の人たちと同じく、彼を好いている。
愛しているからこそ、別れは悲しく寂しいのだ。デュオはさよならを告げに来たにも関わらず、さもしい子供の駄々を繰り返えしてしまった。命取りの行為だった。更に離れ難くしてしまうだけの、虚しい打ち上げ花火。
ほのあかい倉庫の中、真っ暗な影のように機体は息を殺している。デュオは愛している巨人に向き直った。そして背を向ける。出口へと歩を進め、でも、終わらないその切なさは仕様がない。
デュオは苦笑を携えた後、ゆっくりと美しく微笑んでみせた。そして、デスサイズヘルへと投げキッスした。
色っぽいと思うんです、投げキッスって。さよなら、って意味のは特に。デュオに対して夢見すぎの感は拭えませんが。
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