おしえてティーチャー!
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高校生元親×女子大生家庭教師元就。
18禁描写があるので、18歳以下の方は読まないでください。
模試の成績を手渡すと、まさしく「計算してないぞ!」って顔で、元就がさっと顔を青くした。センター試験もあるし、本当は国数英プラス選択一教科だけじゃ足りないんだが、今回の模試は校内で行われたものだから、文系科目はパスできたわけで、そうなれば、元就から言われてた点数を上回るのは、決して不可能なことじゃない。
一月くらい前だ。「今度の模試で、総合点が前より上だったらご褒美くれよ」とねだってみた。そうしたら、元就は鼻で笑って、「四百を越えたら考えてやらんこともない」なんて返してきた。俺は理系だから、国数英に物理選択で受けてる。四教科五百点満点の試験で、英語だけが二百点満点だ。
俺は英語がそんなに得意じゃない。だから、元就も油断したんだろう。
「貴様、あれだけ文法を理解しておらぬくせに……! なぜっ」
「へっへー、俺耳良いんだよ。リスニングはミスったことねェもん」
数学と物理は得意中の得意だ。国語に関しては随筆は嫌いだけど、漢文と古文はいける口なので、そんなにひどい点数じゃない。ただ、センターで使う予定の他の文系科目はズタボロだ。特に日本史は目も当てられない。化学の元素記号覚えるのはいいんだけど、代々の天皇の名前なんか、覚えて何の意味があると思ってしまう。興味がないからって言ってしまえば、それまでなんだが。
コーヒーテーブルの反対側に座って、さっきから顔を青くしてるのは毛利元就。俺の家庭教師だ。というか、国立女子大に通ってる従姉妹のお姉さんっていうのが正しい。さらにいうと彼女なんだけど、何でか元就が両親に言いたがらないので、一応内緒ってことになってる。お金もらって勉強教えてんのに、恋人関係って言うのが居心地悪いらしい。俺んとこの親がそんなの気にしない性質だって、わかってるだろうに。むしろ、元就を嫁にもらおうと応援するんじゃないか。ただ、元就の家は、お兄さんが妹の異性関係に厳しいので、秘密にした方が俺の身のためなのかもしれない。
勉強机は小さくて、元就が教えにくいから(隣に座ることで、身体が密着するのが苦手らしい)、いつもベッド前に置いてあるコーヒーテーブルで勉強している。そうすると、自室はフローリングってこともあって、冬は暖房を入れていても、足場が寒い。さすがに床暖の設備はないから、11月の初めくらいに、ラグの下に電気毛布を敷いて、ホットカーペットみたいにしてみた。元就は感情を顔に出さないけど、なんとなく雰囲気で喜んでるのがわかって、俺も嬉しかった。
高校二年の冬なので、一応、受験まではあと一年ある。でも、やれ模試だ内申点だなんだと、いい加減学校全体からせっつかれるので、正直うざい。でも、大学二年に上がって、少し時間に余裕の生まれる元就が、来年は週に三回来てくれるというから、それはラッキーだと思ってる。今は週に一回だ。正直元就が足りない。もっとひっついていたい。
顔がにやけてる自覚があるけど、とりあえず、元就の覚悟が決まるのを待つ。頬杖をついて待っていたら、ぐっと唇を噛み締めた元就がこっちを睨んできた。美人なので迫力がある。でも、今回賭けに勝ったのは俺なので、強がりだってわかれば、そういう態度も可愛いと思う。
「それで、何が望みなのだっ」
叩きつけるように言うなよ。
でも、顔が赤くなってるのは、多分こっちがしたがることを予想済みだからなんだろう。というよりも、大好きな恋人がいる男子高校生としては、破格の忍耐力を俺は持ってる方だと思うんだが、どうにもそれが通じない。
バカップルが賭け事なんてしたら、普通、これこれこうな要望しかないだろう。というか、バカップルだとわかってる俺は、まだマシなんじゃないかと思う。元就は、俺らのしてることが、世間一般的に色事に浮かれてる状況だという自覚がない。恋愛経験が薄い上に、元々そういう情報を意図的に仕入れなかったせいなんだろうけど、そういうとこが妙に幼くて、こっちとしてはたまらない。
「何だと思う?」
反対に問い返すと、眉の間に二、三本皴を刻んで、苦々しげに俺を見る。気が立っている元就を、いつまでもからかうのはかわいそうなので、すぐに答えた。
「元就のストリップが見たい」
「死ね」
一刀両断される。予想は出来てたのでへこたれない。
「えー」
地味にブーイングをすると、若干本気で引いている目をされた。というか、模試のせいで禁欲させられてたのだ。自慰プレイとか強制しなかった俺を褒めて欲しい。大多数の男は、元々変態の仕様で出来てる。それをどれくらい理性で抑えられるかってだけで、方向性が違えど、中身はそんなに変わらないもんだ。
だから、断られるのはともかく、そういう反応はちょっと傷つく。
「貴様、本当にそういうことにしか興味がないのか?」
「確かに元就にしか興味はねェなぁ」
微妙にずれた答えを返すと、ストレートな愛情表現に慣れてない元就は、言葉を詰まらせた。細かいプリーツの膝上スカートを、右手でいじっている。視線を落として、どうにか俺の要求を退けようと必死だ。
元就は、俺のことを「年下」だって、甘く見てるときがある。そういうのを前面に出されると本気で嫌になるんだが、最近はこっちも、結構余裕が出てきて、そこを利用する技を覚えた。元就は口が回るし、俺も腕力に訴えることはしたことがないから、大概のことは元就の希望通りに進む。大人のお姉さん気取ってる元就は好きだし、本当に色気にやられて、操縦されてることもしばしばだ。でも、こうやってたまに反撃すると、不慣れさ全開で対応してくる。
元就はぺったりと座り込んでいるから、膝頭が見えている。ブラウスの上にはセーターを着ていて、装飾が嫌いなのに、俺が買ってやったチェーンベルトだけは今日もつけてくれてる。元就は線が細いから、だぼだぼの裾からひょっこり覗いてる真っ白な手が、とても可愛い。
素直に言えば、すぐに抱きたい。触って、気持ちよくなってる元就を見たいし、若い熱を受け入れて欲しい。ただ、夕方の六時になるまで無茶は言わない。今はお勉強の時間なのだ。だから、初めっからの確信犯で、「妥協案」を出してみる。
「じゃあ、もう一回賭けしようぜ」
「……賭け?」
「そ」
にこにこと笑うと、邪気のなさにほっとしたのか、元就が頷いた。
「元就が決めた問題を、俺が正解したら、そのたんびに服を脱いでくの」
「瀬戸内海に沈んで来い。そして帰ってくるな」
ありがたいことに、今晩うちの家は親も兄弟も出払ってる。両親はデートだし、弟は部活の合宿だし、姉貴はもう社会人で一人暮らししてるし。その状況を考えれば、どちらにしろそういう展開になるんだって、どうして元就はわからないんだろう。服を脱ぐか脱がされるか、脱ぐ時間が早いか遅いか、それだけの差でしかない。
「いいと思うけどな、この方法。俺の学習意欲は増すし、数学は得意だけど、今日の単元初めてだし」
数学βの教科書を指先で叩きつつ、学校の方針で別途に買わされた問題集を差し出す。それを受け取って、元就はぱらぱらと捲っている。因数分解と微分積分が終わって、三学期末の定期試験はベクトルと複素数が入ってくる。今日はベクトルからだ。
「理解させなければいけないのに、貴様が負けるように仕向けるのは矛盾するであろうが」
「出す問題のレベルを上げればいいじゃん」
そういうと、元就が考え込んだ。
外国語や社会系ならともかく、理数系は得意ということもあって、普段の授業態度は良いとはいえない。というか、すぐに元就にちょっかいをかけるから、元就は数学のときも英和の辞書を持ってきて、それで俺を撃退する。
顔をしかめてるけど、ちょっとその気になったらしい。口元に手を当てて考え込んでいる。
「あと一時間半しかないし? 少なくとも二十分は教科書使って、例題からの説明だぜ?」
つまり、実質問題を解く時間は一時間くらいしかないって事。今日は前半、模試の結果で問答してたので、残り時間は少ない。
そこまで言って、元就に分がある賭けなのだと説明すると、不承不承な感じではあるが、むこうも許容する気になったらしい。多分、これを突っぱねて、さらに直接的な「おねだり」をされるよりは良いと思ったんだろう。
「……わかった」
本当は、ベクトル今日学校で、ほんの触りだけどすでに習ってるのだ。ちなみに、超得意。
「うぅ……」
元就は両手を握り締めると、意味のないうめき声を上げた。テーブルの反対側で、俺がノートに解答を書き始めたときから、段々と顔色が悪くなってたけど、今は真っ赤だ。でもまだ全然脱げてない。それなのに赤い。どんだけ初心だよと思うけど、そういう元就が好き。
始めに正解を出したときは、元就は腕時計を外した。そんなのありかと呆れたが、「身に着けているものを外せばいいのだろう」と押し切られた。必死っぽかったのがちょっとツボに来たので、思わず許してしまった。
二回目はベルト。それもどうかと思ったが、このあたりで元就は少し危機感を抱いたらしい。類題もそこそこに、すでに練習問題へと移っている。
「今度はどうやって逃げんの?」
元々、じゃらじゃら色々なものを付けるタイプじゃない。ピアス自体開けてないし、ネックレスもなし。だから、もう衣服しかないのだが、こすい手で誤魔化されたこともあって、ちょっと意地悪を言ってみる。睨まれたが気にしない。元就と付き合ってて、睨みを気にしてたらやっていけないのだ。そもそも、元就は無表情が標準なので、常に周囲を睨んでるみたいだし。
「毛利先生はどこを脱ぐんですかー?」
からかうと、辞書がひらめいた。脳天に情け容赦なく英和の角が打ち付けられて、痛みに悶絶してると、元就が膝上ニーソックスに両手をかける。する、と片膝を立てて、靴下を脱ぐのがやらしい。スカートだし、中が見えそうで見えない。
毎回、これしたいなぁと感慨深くなってしまった。絶対に、英語も日本史も成績が上がる。また辞書で殴られそうだし、言わなかったけど。
「え、片方だけ?」
「十分だ!」
なので、次の練習問題もさくっと解いて、生足元就を拝むことにした。脹脛が柔らかそうで、すごく撫でたい。
さっきと同じように、元就はできる限り膝を閉ざして靴下を脱ぐ。反対に、隠そうとしてる姿がなまめかしいというか、エッチ臭いというか、まあこちらの劣情を刺激するんだけど、折角の眼福なので何も言わない。
脱ぎたくないなら、それこそ発展問題を差し出せばいいのだ。でも、それをしないのは、ちゃんと段階を踏まないと、数学はすぐに分からなくなるって言うのを、元就も知ってるからなんだろう。得意分野だから多少の無理はきくのに、そういう手順を絶対に曲げないのは、強情張りで実直な元就らしい。
顔を赤くして俯きがちな元就を見ながら、少し考え込む。元就は、約束したことを破ることはないし、もしこのまま続けても、賭け事に乗ったのは自分だと言って、ちゃんと付き合ってくれるだろう。恥ずかしがり屋で、色事に慣れてないのに、そういうのを全部脇に置いてくれる。
ちょっと、居心地の悪い気分に陥った。やっぱり、得意なことを黙っていたのは、俺がずるい。
首筋に当てていた左手を下ろし、落ち着きなく身じろいでいる元就に声をかけた。自分の膝を、指先で擦るみたいにして撫でている。俺とは違った意味で、元就も居心地が悪そうだった。
「あのさ」
「なんだ」
こっちが、逡巡してたのを見てたので、元就はちょっと怯えた風に聞き返してくる。そういう態度をされると、すさまじく庇護欲を刺激されて、本当に申し訳ない気分になる。
「……ごめん」
意味がわからないと、元就の顔に書いてある。だから、叱られるのを覚悟して、ちょっと目を逸らしながら続けた。
「ベクトルさ、今日、学校で少しだけやったんだわ。んで、俺スゲェ得意みたい」
反応が怖いので、元就を見ることができない。ついでに、沈黙されてるのもとても気まずい。シャーペンを持ったままちらりと正面を窺うと、元就は激怒してんのか、それとも心底呆れ返ったのかわからないどっちつかずの顔をしていた。
「ご、ごめん」
もう一度謝って、ノートに視線を落とすと、元就が、小さく息を吐いたのがわかった。
「……つまり? 我が先ほど教えた例題は、復習でしかなかったのか?」
「や、本当にちょっとやっただけだから、空間まではいってない、です」
「だが、三方向のベクトルの練習は、幾度もこなさなくて良かったのだな」
「ハイ」
課題を忘れたときの学校の先生より、ずっと恐ろしい。
秒針の目盛りを刻んでいく音が、いやに室内に響いている。叱られる直前というのは、いつだって緊張するものだが、特に、こういった相手の言葉を待つしかない時間というのは、何をすることもできないので、一番つらい。
再度、溜め息が聞こえた。顔を上げると、元就は腕を組んで、数度頭を左右に振った。頬にかかっていた髪がぱさぱさと少し揺れて、きれいだった。
「まったく……」
元就はそう呟く。それでも、俺のことを見て「しようがない子だ」と笑った。そして、こっちの手元に置いてあった問題集に腕を伸ばし、ページをいくらか進める。元就のその対応に、びっくりしてしまって、どう答えるべきかわからない。そうしたら、額を小突かれた。
「何をぼけっとしておる。発展に移るぞ、三角錐なら余裕だろう?」
どうやら、許してくれたらしい。安心するというより、じんわりと幸せな気分になった。
元就は、客観的に見て、やっぱり心が狭い方だ。厳しいともいう。その厳格さは、他人にも自分にも向いていて、だから、嘘や間違いを、あんまり許したがらない。でも、俺と一緒にいるときは、時々、こういう特別扱いをしてくれる。
それは、元就の持っている針みたいな信念が、丸っこくなっている瞬間なのだ。許容してもらえてて、愛してもらえてるんだって、実感できる。
「元就」
「なんだ」
「ごめんな?」
元就の切れ長ですっきりした両目を見ながら、ちゃんと言う。そうすると、元就は瞠目して、今度は本当に苦笑を浮かべた。
「本当に、しようがない子だ」
子ども扱いは嫌いなんだが、今回はなぜか、くすぐったかった。
だがしかし。
「それとこれとは話が別だよな?」
「死ねぇ!!」
悲鳴を上げる元就を、にやにやと笑って眺める。先ほどセーターを剥いたので、ブラウスかスカートか、二者択一だ。
そもそも、空間図形の問題で、俺は苦労したことがない。元就も、長い付き合いでそれを知ってるから、ちょっと小技の効いてる問題を示してくる。それでも、文章で書かれた図形を、脳内で立体化することは、俺にとって反射に近いことなのだ。すでに図形の形がわかっているから、それをノートに写すのは、手間だけど全然難しいことじゃない。多分、俺の頭の作りと、ベクトル問題は、すさまじく相性が良いのだろう。
「上と下、どっち脱ぐ?」
「俺はどっちでもいいけど」と続けると、青くなったり赤くなったり忙しい元就が、縋るようにこっちを見てきた。でも、俺としても男の本能があるし、ついでに、ついさっき「お姉さん」だった元就が泣きそうになってるのは、とてもうずかせる状況なわけで。
しばらくの間、見つめあう。じいっと、笑ったまま元就と目で会話をして、それでも助け舟は出さない。先に、視線を逸らしたのは元就だった。悔しげに歪む表情が、フローリングへと落とされる。
もう一回、うらめしげに、こっちをちらりと見上げてきた。でも、俺がどうやったって折れないことを悟ると、元就は利き手を握って拳を作る。殴られるかな、と思ったのだが、そうではなくて、元就は背中を向けるとブラウスに手をかけた。ぷつぷつと、ボタンの外されていく音が、暖房の機械音に混ざって聞こえてくる。
小さい背中を見ていると、元就はボタンを開き終えて、背中に両手を回した。
「え?」
思わず、声を上げる。
元就は、羞恥心からだろうけど、ちょっと手が震えていて、その両手が下着のフックを外した。僅かに肌蹴たブラウスから、首筋と、肩が半分くらい見えてる。左手と右手を、順に袖から抜いて、ブラジャーの肩紐を落とす。そして、ボタンをとめ直す衣擦れの音が、また暫くの間続く。
色々な意味で呆然としていると、脱いだ下着を背後に隠して、元就が、左手で胸元を覆ったままこっちを振り返った。
「後で、覚えて置けよ元親……っ!」
本気で呪詛の色がある声だ。でも、それすら右耳から左耳に抜けて、思わず時計を見た。あと三十分もある。目の前にすさまじい据え膳があるのに。
ちっちゃい胸を、ブラウスの上から片手で抑えて、必死に俺の視線から庇っている。上半身下着だけでいるのが嫌だったんだろうけど、悪いが見る。普通見る。でも、凝視してたらまた辞書を振りかぶられたので、大人しく問題集に向き直った。ついでに、元就も色々なものをかなぐり捨てたらしい。次に解けと命令されたのは(まさしく命令だった)大学入試の過去問で、さすがに今日習ったばっかのベクトルではハードルが高い。
なんだかもう、解いてる俺よりも元就の方が真剣だ。いや、俺も真剣なんだけど、どうしても元就の胸元が気になって集中できない。
数学のいいところは、それなりの時間をかけて、正しい方法を取ってやれば、必ず正解できることだ。シャーペンを置いて、もう一度壁掛け時計を見上げると、まだ十五分しか経っていなかった。
元就を窺うと、耳や首筋まで、ほんのりと赤く染めている。なのに、俺がまた正解してしまったから、逃げ場所がどんどんなくなっていて、許してやりたいなと思う反面、次はどうすんのかなと、やましい気持ちも顔を出す。だって、状況がおいしすぎる。
元就も、さすがにこの「お勉強の時間」が終わった後の展開は読めてるだろう。家の中に、俺以外の誰かがいれば、まだ逃げられたかもしれない。というか、第三者がいれば、俺だってこんな卑猥なことさせないし。
無言になって、また背中を向けると、元就はラグの上で両足を伸ばした。ほんのちょっとだけ腰を上げて、スカートが太もも半ばまで捲れる。元就の両手が、スカートの裾から中に入り込んで、ちっちゃい布地を指に引っ掛けると、足元に向かいするすると這い進んでいく。
俺の顔をまともに見られないのか、座り直した後も下を向いてしまっていて、右手でスカートの裾をラグに押し付けている。可愛くてかわいそうで、思わずに髪を撫でてしまった。びくりと肩が震えて、きゅうっと縮こまる。
「センセ。最後の問題、次の奴でいい?」
県立大の過去問だ。元就は、こくりと小さく頷く。もう一度髪を掬い上げていじると、「早く解け」と叱られた。
シャーペンをペンに持ち変える。すると、その小さな音に過剰反応して、元就が顔を上げた。目が潤んでいて、ただでさえ強張ってる痩身に、ぐっと力が入る。
模範解答を見て、自分のノートと照らし合わせる。すると、元就の右手が俺の指先を握ってきた。思わず、唾を飲み込んでしまった。ちょっと期待も込めて見返すと、睨んでるのか拗ねてるのか、どちらにしろたまらない顔をして、こっちを見つめている。
「どうせ、正解なのであろう?」
下心を直撃する表情で、あんましそういうことを言わないで欲しい。伸び上がって、テーブル越しにキスをした。少し驚いたらしい元就を、掴んできた指を握り返して宥める。上唇を食んで、舌先を唇の入り口に這わせる。離して、もう一回キスすると、今度は、元就が俺の口を舐めてきた。
「合ってた。俺の勝ち」
笑って言うと、元就は僅かに眉をひそめて、こっちの手の甲を引っ掻く。ガリガリと、結構本気で爪を立てられて痛いんだけど、手を離す気にはなれない。
「割に合わない賭けであった」
六時までは、本当はあと五分くらい残ってる。でも、さすがにもう我慢する気になれなかったので、コーヒーテーブルを横手へ退けた。引きずる音を立てて、ぽっかり開いたラグの上の空間に、元就が一瞬目を見開く。そして、これから始まることを想像したのか、視線を落として顔を赤らめた。折角、少しだけ熱が引いていたのに、また林檎みたいになってしまっている。
「元就可愛い」
「う、るさい!」
元々、カーテンは閉めてしまっていたので、元就の右手を少し強引に引っ張る。すると、小さく声を上げて、元就は本当に腕の中に転がり込んでくる。ちっちゃくて、軽くて、温かい身体が、とても愛しかった。ぎゅうっと抱きしめたまま口を合わせると、元就が鼻で泣いた。
舌を差し入れて、相手の口の中を舐める。天井部分を擽って歯茎の裏側を辿ると、抱きしめた元就が俺の胸元を握ってきた。室内だったし、こっちも長袖のシャツしか着てない薄着の恰好だから、ほんのりと熱を持つ身体が密着してくると、腹や足の間がぐつぐつする。元就が、今下着をつけていないのだと考えると、煮込まれてる欲はさらに温度を上げた。薄ピンク色で、白いレースのついてるブラとショーツが、元就の向こう側に見える。ズボンの中で、自分の性器がぐっと起き上がったのがわかった。
キスをしたまま、元就の身体に手を這わせる。脇腹から背中を左手で覆い、そのまま背筋を人差し指で辿る。元就は背中が弱いので、指が伝い上がるのに合わせてくくっと反り返る。そうすると、自然胸が押し付けられるから、二つの膨らみの中心で、硬くなってる粒の存在に気付く。
「あ、元就、寒かった?」
触ってもいないのに立ち上がってる乳首を、ブラウスの上から撫でる。すると、元就の唇が小さくわなないた。俺の左側の鎖骨に顔を押し付けて、声を殺そうとする。
「ん、寒くは、なかった」
「……へぇ?」
暖房の設定温度は三十度だし、足元だってあったかい。でも、元就は冷え性の気があるので、ちょっと心配だったから聞いてみたのだが、思いがけず素直な返事が返ってきた。でも、返答の内容を考えれば、やっぱり深読みしたくなるわけで、声にからかいが混じってしまう。
「でも、乳首立ってるよな。なんで?」
耳元に息を吹きかけて、耳朶に噛み付く。そうすると、元就は首を振って逃げる。膝の間にいるので、そんなに意味のある行為でもないのだが、ぐずるような様子に頬ずりをしてしまう。
「ぅ……寒かっ、た」
「さっき寒くなかったっていったばっかじゃねェかよ」
思わず笑うと、元就が首筋に噛み付いてきた。そして、強めに噛んだ場所を、舌で舐める。色気のある抗議に、熱のこもった息を吐いた。
「服を脱ぐ羽目になって寒かったのだ。いやらしいことばかり、子供のくせに覚えてきて」
いいながら、元就は俺の胸を一度叩く。続け様に、もう一度。
その仕草の方が、よっぽど子供っぽいのだが、背中に這わせてた左手を臀部の方に下ろすと、途端に元就は大人しくなった。
プリーツに、わざと皴を作る。スカートの上から左の部分を覆って、肉を揺らすみたいに撫でた。
「寒かったんだ? ごめんな」
裾を僅かに捲りあげて、ぶるりと震えた背中を、反対の手で宥める。上半身を、苦しくない程度にこっちの身体に押し付けさせると、座り込んでいる元就の足の間に指先だけ差し込む。中指の指先で、秘部の割れ目をすっとなぞった。そこをいじるのも目的の一つだったのだが、それよりも、ラグが濡れてることを確かめる。元就の恥ずかしい場所と触れ合っていた部分は、ぬるぬるとしていた。
「エッチィのが、もういっぱい出てる」
「っん、……ぁ、こら」
「寒かったから?」
もぐりこんだ指先で、熱を持ってる性器の周りを擽る。さらに前の方へ進めると、ふくらみかけた陰核に当った。後ろから手を回しているせいで、いつもよりも、それの表皮を剥き難い。見えていないし、スペースが全然ないというのもあるのだが、元就にとっては、その中途半端さがいいらしく、どろりと愛液が溢れてきた。
「ぁ、っぁ」
微かな喘ぎ声が、すぐ側で聞こえる。それと一緒に、ひゅうひゅうと、苦しげな呼吸の音もした。性的に興奮している顔を、俺に見られたくないらしい。折角正面からぎゅうっとしているのに、もったいない気もする。
もぞりと、元就が腰を揺らした。ラグと股の間に俺の指を挟んで、ちょっとだけ自分から擦りつけてくる。腰を上げてくれれば、いくらでも触ってやれるのに。
ふと、思いついた。というより、思い出したというのが正しい。
「あ、そういやさ」
「ぇ?」
俺の胸元で唇を隠したまま、上目遣いで問うてくる。声が少し籠もっていて、はあっと吐き出された熱っぽい吐息が、シャツを通り越して浸透してきた。ちょっとやばかったけど、でも我慢。
「最後の一枚、元就、まだ脱いでないなーって」
元就は、一瞬なんのことかわからなかったようだが、数秒の間を置いて、とろんとしていた瞳に光が戻った。そして、両腕をついて身体を離すと、さっき感じてた快楽もどっかいってしまったみたいな顔する。
「ブラウスか、スカートしか、残ってないよなァ」
「いや、いやだ、っ元親!」
さすがに、そういうことをするための身体になってしまっている素肌を、自分から開くのは羞恥がすぎるらしい。目尻に涙が溜まっていたので、ほっぺたを舐めがてらそれも掬い上げる。こめかみにキスをして、肩をぽんぽんと柔らかく叩いた。
「うん、最後だし、俺が脱がしてもいいけど」
本当に必死になって、こくこくと頷いてくる。いつもは、全部俺がやるのだ。だから、このままなだれ込むにしても、自分から胸なりあそこなりを見せるって言うのは、予想の範囲外だったんだろう。
元就の腰を上げさせて、膝立ちにする。そのまま引き寄せると、丁度、胸の部分に俺の頭が置かれる。元就は、きゅうっとこっちの頭部を抱え込んできた。細い指先が耳にかかって、眼帯を外している。小さいけど、ふっくらしている胸に、鼻を押し付けた。ブラウスの上から、柔肉に噛み付く。
「なァ、元就。どっち脱がして欲しい?」
「……っぁ、なに?」
「だって、一問分しか解いてなかったし」
見上げて、紅潮していく元就の頬を堪能する。耳にかけていた髪が、一筋二筋、こぼれている。胸元に頬を寄せると、服の上から乳頭を舐めた。何かの種みたいに、ぷっくりと硬くなっている。
「ひぅ」
髪を引っ張られてちょっと痛い。でも、頭皮に吹きかけられる元就の息に興奮する。肩に置かれた右手が、俺のシャツを握り込んできた。
どこもかしこも細っこい元就だけど、足首や手首は本当にやばい。膝の裏側を、円を描くようにして人差し指で触ると、右脚と左脚の太ももがきゅうっとくっつく。その間に手のひらを差し入れて、足の内側を撫でながら広げさせる。触り心地がよくて、ずっと手を往復させていたら、愛液が伝い落ちてきた。
「元就、どっち?」
足から手を離して、スカート越しに、ちょっとだけ後方へと突き出されてるお尻を揉む。片手だと物足りなかったので、両手で掴んだ。人間の身体の中でも、肉が付きやすいところなのに、それでも、手のひらから二周りほどはみ出るくらいだ。
「ぁは、……んっぅ」
裾を足の間に引っ張って、生地を一枚挟むから、いつもより強めにごりごりと擦る。元就のやらしい液体が、冬服にすぐさま染み込んでいくのがわかった。あとですごい叱られそうだと、妙に冷静になってしまった。
元就が足を閉じそうになると、もう片手で太ももを軽く叩く。そうすると、ひくんと震え上がって、さらに背中が反り返る。
「や、っやァ……ちか、っちか」
「早く答えないと、ブラウスもスカートももっと汚れちまうぞ」
指先が、勃起してすっかり顔を出したらしい陰核を掠める。高い悲鳴が聞こえた。元就は、ここをいじるとすぐにイってしまうので、ちょっとしか触ってやらない。膣でも感じられるようにしてやらないと、反対にかわいそうだと思う。
「ぅんっんん……ぁ、ぁん」
もぞもぞと身体を捩じらせて、元就はぐすと鼻を鳴らす。湧き上がる衝動と、理性の間で揺れているらしい元就は、逡巡する時間が長ければ長いだけ、追い詰められることをわかっていない。
両足が段々と震え始めて、体重を支え難くなったのか、俺に凭れてきた。
「……ち、か」
「うん?」
聞き返すと、元就は俺の髪に頬ずりをした。そして、耳の裏側やうなじを指先でなぞる。ぞくぞくしたものが脳髄まで這い上がって、思わず、元就の乳首に噛みついた。
「っあ、ぁ…ァ、っす……か、と」
「聞こえない」
上下の歯で、柔らかく粒を挟む。それから、舌先でこりこりといじると、また元就が足を閉じようとした。ぱちんと音を立てて、左脚の内側を手のひらで打つ。
愛液で濡れている足に触っていると、本当に、早く元就の中に入りたくてたまらなくなった。
「すかー、と…っを……ァあっ」
答えようと頑張っているので、褒めるつもりで、肉芽を少しだけ擦った。でも、本当に一撫でしただけだったから、元就にとっては、焦らし以外の何物でもないかもしれない。
「元就、がんばれ」
「ぅう……」
腕を上げて、元就の左肩を暖めるように撫でさすった。そして、ゆっくりと背中から腰までを伝い下りる。元就は、もう一回きゅうっと俺の頭を抱きかかえると、苦しげに息を吐いた。
「…ス、カートっ…を、っぬがせ、て……っぇ」
両手を、元就の背中に回す。そして、よしよしと慰めてから、スカートのフックを外し、ファスナーを下ろした。小さい音を立てて、ラグの上に乱れたプリーツが広がる。性感の高まっている元就の身体は、下半身を晒したことで、さらに熱を持つ。とろとろと体液をこぼす性器に指を入れて、内壁を引っ掻いた。
「ぅ、ぁ……んん」
左手の中指を差し入れたので、少しやりにくいが、親指で陰核を押し潰してやる。元就が、頭をふるふると力なく振った。やっぱり、勉強にしろ何にしろ、ご褒美というのは必要だと思う。中をいじりながら、時々、陰核に乗せた親指で円を描くと、ぎゅうっと壁が狭まって、俺の指を絞ってきた。
「ヒぁ、っあ……ぁんっ、ぁ、あ!」
指をかぎ状に折り曲げて、窄まった肉を中から広げる。親指を少しだけずらし、肉芽じゃなく、その周囲を揉む。額を俺の髪に擦り付けていた元就は、一瞬、身体全体を強張らせた。
「ッ、ぅンぁァアあ! あ、ンッあ、ィ…んっぅ、あ…ぁ、ぁ」
元就の腰が、かくんと落ちる。それを抱きとめて、頬と頬を合わせた。しっとりと汗ばんでいる両足をジーンズの上に乗せて、元就のこぼす荒い息を聞く。
そのあとは、いつも通り元就の中に入り込んで、気持ちの良い気分を味わった。親が遅くまで帰ってこないのをいいことに、元就を抱えたまま寝たら、翌日は殴り起こされた。平手じゃなくて拳で。
しかも、レポートが忙しいっていう理由で、新年まで会ってもらえなかった。我慢させればさせるだけ反動が来るのに、なんで元就は学習しないんだ。
でも、また仕置きとして会ってもらえないのは嫌だったから、新年デートではちゃんと自重した。
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