# Reprint
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瀬戸内の海と日輪と〜Sea&Sun in Setouchi〜あわせ「3year.January」の再録です。
ちょっと先のお正月の話。
18禁描写があるので、18歳以下の方は読まないでください。



 一昨年の春、ずっと空いていた隣の部屋にお隣さんがやってきた。
 校舎移転の影響で、独り暮らしすることになった女の子は、何でか知らないが妙に俺に懐いてくれて、紆余曲折ありがならもお付き合いする関係になっている。
 色々自己嫌悪に陥る日々なのだが、やっぱり相手が可愛いことに変わりなく、「絆された」という感覚から「負けた」という自覚に変わったのはつい最近だ。
 ちっちゃくて、まだまだ未熟で、そういう育つ途中の元就を見ていると、自分は犯罪者なのだなぁと悲しくなる。ただ、そう思いながらも手を引けなかったのは、単純に、相手を好きになったからだろう。自身の性癖は、そうそうおかしいものじゃなかったと記憶しているのだが、人生何が起きるか分からない。個人的にも、中学生に手を出した自分は青天の霹靂だった。もちろん、内緒のお付き合いに決まってる。
 元就が、冬休みを使って実家に帰ってからすでに五日ほどが経っている。去年の二十七日からなので、こちらの正月休みは今日で最後だ。短い三が日だが、こちらの休みの最終日に合わせて元就が部屋に戻ってきたので、反対に驚いてしまった。こういう一生懸命な愛情表現がひどく愛しい。それこそ、休みでなくてもお隣さんなのだから、学校が始まれば毎朝会える。家族から離れて暮らすのも、元就くらいの歳なら寂しいだろうに、何ともいじらしいことだ。
 きっちりした晴れ着を着こんで、玄関先に立った元就は「あけましておめでとうございます」と型通りのきれいな挨拶をした。ついでに年賀状も来てた。どんだけ律儀なんだと思うが、そういう性格も可愛い。あばたもえくぼというが、えくぼがえくぼに見えるのはおかしいことじゃないと思う。
 初詣に行って(元就は、すでに家族と行っていたらしいから二度目詣だが)、出店にも慣れないお嬢をからかって、べっ甲飴を買ってやった。金色の飴をしゃぶる様子に、少しばかり込み上げるものがあったが、やっぱりそんな自分にどうかと思う。思考回路が最悪だよなと、冷静な部分が、ちゃんと判断はするのだ。しかし、好きな女の子が可愛く着飾って、そしてちょっとばかし想像をかき立てることをしていると、やっぱり反応するものだろう。
 部屋に戻って来て、正月にあったことをぽつりぽつりと話す様子に相槌を打った。お兄様が選んでくれた反物で、お母様が着付けをしてくれたのだという。お父様は、元就が着物を着ると機嫌が良くなるらしく、お年玉をもらってしまったと、少し気恥ずかしげに元就は言った。ちなみに、妹のことを愛しすぎているように思えるお兄様からも、秘密のお年玉が出たらしい。そりゃそうだ、こんな妹がいたら俺だって可愛がる。
 濃紺の足元から、胸元の鮮やかな緑色までグラデーションの掛っている生地に、大小の花が咲いている着物だった。鳥と花の舞う袖口から、白い両手が覗いていて、それがうちのマグカップを引き寄せる。薄い桃色の帯が女の子らしくて、結び方のせいか、背中に大きな蝶が止まっているように見えた。
 元就だけなら絵になるが、手に持ってるものが無骨なマグカップで、しかも座っているところが華奢な椅子でもなくソファーと言うのが、なんともちぐはぐだ。見ていると、見返してくる。そして、困ったように顔を伏せて、ほんのりと頬を染める。なんなんだろうなぁ、この生き物は。
「宿題とかは、もう終わってんのか」
 困っているらしい相手を助けるための、特に意味もない質問だった。夏休みも、苦もなく課題を終わらせていたので、まあ終わっているのだろうなと、元就の答えを想定していた。だが、そこで元就は僅かに詰まると、カップを口元に運ぶ。大分温くなっているだろうココアを口に含み、嚥下する。
「意外だな、終わってないのか」
「数学と英語は、終わっている。課題図書も、去年のうちに読み終わった」
「えらいなぁ」
 長期休みの最終日か、もしくは学校が始まった後に、誰かの答案を写すなんて思いつきもしないお嬢様だ。真面目と言うか不器用と言うか、どちらにしろ可愛いけど。
「なら何が終わってないんだ」
 尋ねると、元就はまた詰まる。言いにくいことがあると、貝というか、むしろ人魚姫みたいに声の出なくなるその癖は、どうにか直した方がいいのではないかと常々思う。誤魔化し方を知らないから、すぐに言及されてしまう。
 こちらが、カップに残っていたコーヒーを飲み終わって、もう暫く待った頃だろう。ぽつりと、元就が呟く。
「……書き初め」
 それこそ、元就は得意そうに見えるのだが、この様子だと得手とは言えないのだろう。
 悔しいような、恥ずかしいような、そんな表情を浮かべているものだから思わず笑った。途端に、ふいっと顔を背けられ、その仕草にも、また笑った。

 元就の背後から、習字の道具を一式見る。どうも、学校で習ったやり方に則るつもりらしく、墨汁があるのに、元就はちゃんと墨を硯で磨り始めた。
 笑ったこちらに機嫌を悪くしたものの、何なら、今日の内に全部終わらせてしまえという言葉に頷いたのは、本人も先送りにしたところで意味がないとわかっているからだろう。書き初めなんて、宿題と言うよりも遊びの一種だと思うのだが、課題の言葉と好きな言葉と、両方書かないといけないらしい。中学校の頃の宿題なんて、記憶の彼方すぎて定かでないが、確かにそんなものだったような気もする。
 リビングのローテーブルをどかして、敷いていたラグも放ってしまうと、ソファーとテレビに挟まれながら、着物の女の子が「これぞ日本の美」って姿を披露する。背筋をぴんと伸ばして正座した姿は、後ろから見ると尚綺麗だ。
 きっちりとした晴れ着は、手首から指先だけしか素肌が見えていない。首筋も、元就の髪の毛は結い上げるのに足りないのか、下されたままなので覗けずにいる。足元は言わずもがな。真っ白な足袋が見えるだけ。
 ふと、初詣のときに浮かんだ欲が戻って来て、苦笑を浮かべた。綺麗にしている元就を見るのは好きだ。しかし、無防備な背中を見せつけられて、そろそろ物足りなくなってきたらしい。晴れ着だと、崩してしまいそうで簡単には触れないので、それも感じる寂しさに拍車をかけているのだろう。
 ちょっとした悪戯心と、明確な下心で、元就の帯の締め紐を緩めた。これだけでは崩れないけど、帯のバランスは悪くなる。
「元就」
「何だ?」
「帯、崩れかかってる」
「え」
 元就は墨と硯から手を離すと、背後に腕を回し帯へ這わせる。確かに、バランスが悪くなってることがわかったんだろう。その理由を探すために、右手と左手がうろうろとした。まあ、俺のせいなんだけど。
「どうしたのだろう、突然」
「ちょっと前向いてな、見てやるから」
 言えば、「うむ」と素直に前を向く。元就は、学習能力がないなぁと思う。なんで、男に対して警戒心を持たないんだろう。
 締め紐を完全に解いて、そのまま背中に垂らしてしまう。ついでに組紐を何本か緩めれば、帯はだらりと下方へ向く。
「ああ、締め紐が緩んじまったんだな。組紐も、それに引っ張られてるし。一回、結び直した方がいいかも」
「お母様にしては、珍しい失敗だ。どうしたのだろう」
「手伝うか?」
「いや、構わぬ。ついでだ、もう、私服に着替えてしまう」
「ふぅん?」
 元就が立ち上がろうとしたので、俺はその身体を習字紙の上へ抑える。突然のことにびっくりして、元就がフローリングに足を滑らせた。足袋は滑りやすいからなぁ。どっかぶつけてないといいけど。
「大丈夫か?」
「何をするのだ!」
 手をついたせいで、長い半紙は皴を作ってしまっている。その上に袖が散っていて、とても綺麗だ。元就の頭から簪を一本抜くと、それを針代わりにして固く結ばれた帯紐をほぐした。型を崩し、帯に止め具の力を消していく。
「え、ちょ、……元親」
「んー?」
「っやめよ、帯が落ちる!」
「着替えるんだろ?」
「自分でする!!」
 帯の下の、白い止め紐が見えたので、それは少々乱暴に解いた。半紙に押さえつけていた元就の身体を抱え上げて、膝に乗せる。型が崩れたとはいえ、まだ固い着物帯が、こちらの腹にあたる。
 止め紐を解いてしまうと、途端に、着物の前を開きやすくなった。元就が足を閉じるが、晴れ着と、その下の合わせと、襦袢を、足元からゆっくりと広げていく。足袋以外は履いていない真っ白な両脚が段々と露になる。立てられた膝のところまで広げると、あとは自然に、付け根まで晒された。いつみても細い。そのくせ柔らかい。
「元親、元親、待て、お願い」
「何で?」
「皴に、なる。おねがい」
 まあ確かに。
 折角の晴れ着が、皴になって実家に届けられては、お兄様が悲しむだろう。というわけで、緩んでいた帯をさっさとはずし、キャベツのように重ねられている晴れ着をむくと、逃げようともがく元就を片手で腕の中に捕らえて、それをなるべく遠くの方へ広げるように投げた。まあ、最悪俺がクリーニングに出してから返そう。うん。
 襦袢だけになった元就を、再度両腕で後ろから抱きしめる。子供が、ぬいぐるみを好きな理由がわかる気がした。ちっちゃくって柔らかいのが、なんとも気持ちよく癒される。
 着物は胸を潰すので、元就は上に何もつけていないようだった。襦袢の下は素肌なので、乳房の影と形がしっかり浮かび上がっている。性的なものを感じるには、幼すぎる年齢に思えるのに、いつもよりもずっと卑猥に見える。
「五日って長いなぁ、すごい元就んこと懐かしい」
「ちか、もとちか、待っ…て、おねが」
「着物脱いだじゃん」
「それ、は、そうなのだが」
 なんだか、今日は妙に素直じゃない。久々だから、どうにも恥ずかしいのだろうか。もぞもぞと動かれると、そちらの方が意地悪をしたくなる。
 襦袢の上から右の胸を揉むと、元就はすぐにひくりと震えた。乳首にも触ってないのに、胸の肉を揺すられるのが苦手らしい。ただの丘だった胸元の襦袢に、頂ができる。白い耳殻さっと紅が乗り、おいしそうだったので噛みついた。舐め上げ、啜ると、小さく頭が振られる。
「やぁらしい。元就、乳首立ったな」
「…ッぅ」
 動物みたいな鳴き声を上げて、元就が目を閉じる。ぎゅうっと固く閉じられた睫毛が、少し震えていた。かわいそうだけどかわいい。心底そう思う。
 膝頭がくっついてるので、太ももを撫でた。すべすべしている。足を撫で回しながら、胸を揉むと、元就の小さな肩がびくびくと震えた。声を我慢しているのだろうが、小動物が怯えてるみたいに見える。
「元就、足開いて」
 耳元で囁くと、首を横に大きく振った。一緒に振られる髪の毛が、こちらの胸に当る。仕方ない、緩んでるし、広げてしまおう。
 右膝を持って広げると、元就が少し暴れた。しこりみたいになっている乳首を、襦袢の上からこすって、その抵抗を封じ込めてしまう。自身の右膝を立てて、そこに元就の右脚をひっかける。指でいじるには十分のスペースだ。
「ん?」
 すっと、人差し指で下着をなぞると、いつもよりも固い。何かと思うと、生理用品だった。一瞬、だから拒否したのかとも思ったが、それなら元就は言うだろう。それに、こいつの生理は重くて、初日は特に、一歩だって歩けなくなる。周期も来てないし。いや、自分が元就の周期を把握してんのもどうかと思うけどさ。
 妙な気分だが、とりあえず、足の付け根の隙間から指を入れた。すると、元就のそこはもう、びっくりするぐらい濡れていて、生理用品も、血液ではなく愛液をたっぷり吸い込み湿っている。
「……なぁ、元就。何でこれつけてんの?」
 一度指を抜くと、下着越しにそれをなぞった。ごわごわとした感覚がある。元就は、確かに感じやすいすけべな身体をしてるけど、これは濡れすぎだ。
 元就は口を結んだまま、また首を振る。何となく、理由が察せられる。元就の手が、俺の腕を力なく握っていて、泳げなくなったお姫様みたいに声を出さず震えていた。
「妙に濡れてるよな、確かに久しぶりだけどさ。でも、漏らしたみたいになんのは早すぎじゃね?」
「やぁ…!」
 言い終え、耳朶を舐めてやる。高い声だ。
「ちが。ちが…うっ…ン」
「何が違うんだ?」
 晴れ着を着たら、トイレになんていけない。つまり、元就が生理用品をつけたのは、今日の朝なんだろう。なんでわざわざ?
 いや、なんとなくわかるのだが、いじめたくなるだろう。これは。
「元就、どうして、生理用品なんてつけてんだ?」
「ぅん、…っぁう、ふぅ……」
「言わねぇの?」
 布と生理用品越しに、元就の恥ずかしいとこを何度も擦る。快楽の度合がゆるくて、嫌なんだろう。元就が背をのけぞらせている。素直に言えばいいのにと思うが、口を割らないので、こちらから言う。
「なぁ、元就さ。今日、朝から濡れるようなこと考えてたんだろ?」
「んぅ…っ」
 元就が、左右に首を振ることで否定する。音が出そうだ。眦に涙がたまってんのが見えて、ほっぺたと一緒に舐め上げた。
「嘘つけ。えっちなこと想像して、ずっとここからお汁たらしてたんだな?」
「っちが、ぅ……ち、かァ、っヤぁ…!」
「じゃあ、何でこれつけてんだぁ?」
 そう聞くと、やっぱり元就は黙り込んだ。嘘がつけない元就は、少しかわいそうになるときがある。声色と態度で、そうだと肯定しているようなものなのに、なぜ否定したがるんだろう。
「大丈夫、恥ずかしいことじゃねぇよ」
「…っん、ちか、…ぅア、……っぁん」
「俺も、お前に気持ちいいことしてやりたかったし」
 「ほら」と促すと、元就は、自分で目じりをこしこしと擦った。そして、うっすらと目を開く。覗き込んで目を合わせると、うるうるとして光っている双眸が、こちらを見上げた。可愛かったのでキスをする。簡単に触れ合わせて放すと、元就はもう一回と、顎を逸らした。
「元就?」
 唇を離すと、少し落ち着いたらしい元就が、顔を真っ赤にしている。俺にいじられて興奮したのもあるんだろうけど、やっぱり恥ずかしいんだろう。そのほっぺたと鼻の頭にも口付けて、元就の身体をぎゅうと抱きしめた。
「…っん、ぅ……した、したの。えっちなこと、かん……っが、えた…の」
「それで?」
「そ、し……ったら、ァ、あん…っちかぁ」
 ぬるぬるしてる下着の中に指を入れると、性器に触ったわけでもないのに元就は声を上げる。感度が良い。やっぱり、日を置くと感じやすくなるようで、ひくひくと足が痙攣している。
「どうしたー?」
「ぁ、ぁ、……ちか、がァ、…っん…こん……なふぅに、アんっ」
 下着を引っ張ると、びしょびしょのそこが現れる。生理用品の吸ってるぬるぬるとしたものが光を反射していて、元就は恥ずかしそうに顔を伏せた。明るいリビングで、自分の興奮した部分を見られることに抵抗があるのか、抱えている身体の熱が上がった気がする。
「朝から、俺にいじってもらうの考えてたんだな。そしたら?」
「ん」
 元就は、縋るように見てくる。わかってることを言わせるなという、そんな不機嫌の色も見えるけど、ほんの少し陰核を突いたら切なげに息を吐いた。
「元就、言ってみ?」
「ひァンっ……ぁん、ちか…っちかァ、ん…ん…そ、したっ…ら、っい、ぱい……出ちゃったのぅ…ん、ぁう、とま、っ…らな、いのォ」
「元就はすけべだなー」
「…ゃアン、…っちか…あんっ」
「すけべでかわいい」
 陰毛までぐしゅぐしゅに濡らして、また愛液を下の口から吐き出した元就が、額をこちらの首筋に擦りつける。身体を縮こまらせて、すぐに達してしまいそうだった。襦袢の合わせを開き、左の胸を曝してしまうと、真っ赤に膨らんだ乳頭が出てくる。摘み上げ、親指で捏ねまわせば、元就は泣きながら悲鳴を上げた。
 教えられた性に振り回されて、驚いて、どうにも自分ではできなくなっている姿に愉悦を感じる。暗い類のものだとは思わないが、不健康な悦びではあるだろう。ひゅうひゅうと喉を鳴らしている小さい身体に噛みついて、食い散らかしているのだ。
 ふと思い至って、ばらまかれている小筆を拾い上げる。名前とか、手紙とかを書くときのための小さい奴だ。蜜壺っていうのは、よく言った言葉だとこんなときに感心した。言いえて妙と言うか、何と言うか。
「ッひぁアぁあ」
 まだ使われてない真っ白なそれで、すうっと、元就の割れ目をなぞる。膣と尿道の入口をくすぐって、膨れ上がったクリトリスを擦ると、暴れるみたいに身体が跳ねた。ほんの数回往復しただけで、筆は舐めしゃぶったみたいにぐっしょりと濡れる。毛先で臍をほじるようにすると、元就の体液が、またとろりと漏れ出て、こちらの足を汚しながら、それはフローリングに垂れ落ちた。
「ぁん! ぃ、アぅっぁあン!」
「今にもイきそうだなァ」
 思わず、苦笑をこぼしてしまう。すると、その笑みに気付いたのか、元就が頭部を擦りつけてきた。筆を持っていない左手で、相手の頭を撫でる。擦りつけられる頬を指の腹で擦り、そこにある泣き跡にキスをした。可愛がって、宥めて、筆の柄の部分をどろどろになった割れ目へ擦りつける。実際に、中に入り込まないように気を付けながら、大事に愛撫する。
 愛液まみれになった筆を、半紙の方へ投げると、白い紙には染みが出来上がった。ぐしゃぐしゃの紙には、どうせもう書けないので気にしない。
 気持よくなることが目的の行為なので、本当の意味で、元就の中に入り込んだことはなかった。避妊だとか、性交に、元就の身体は小さすぎる。というよりも、幼すぎる。
 孕ませたいと思うのは本当なのだ。そして、実際そうなったとしても、どうにかできるだけの力が、すでに大人である自分にはあった。元就を自分のものだけにする方法としては、一番無難ですらある。ただ、それは外道だと、自覚しているからしないだけのことだった。元就が、それをひどいことだと感じなくとも、あまり選択肢を奪うことはしたくないのだ。元就が可愛いから。だからこそ、とも、思うけれども。
 最初に、好きな相手と、気持よくなりたいと思うのはおかしいことじゃないのだろうと、元就が言った。だからこそ、自身が元就を抱いたとしても、それはおかしいことじゃないと、この女の子が泣いたのは去年のことだ。そういうことじゃないと教えるのに喧嘩をして、相手を宥めるのに手を焼いた。性交の持っているいろいろなものの側面を知らずに、そんな恐ろしいことをいう子供に、本気で怒った。
 相手に快楽を与えてやりたいと思う気持ちだけで、その行為が成り立ってるなら、心底、それは愛情表現の一種だったろうが、それだけで済まないのだと、どう伝えたものか大いに悩んだものだ。それで、結局お互いの妥協点がここにあって、自分も全く我慢がきかない男だと気が重くなる。だってかわいいのだ。たまらなくかわいい。
 元就の我儘に折れたのは、こちらが大人だったからだ。そして、どうにもこうにもいかなくなって、結局こうやって手を出しているのも、こちらが大人だったからだろう。
「ッぁ、ア、ぁあ! ぃ…ッく、イっちゃぅ……ッんん!!」
「うん、久しぶりだし、いっぱい気持ちよくなれ」
「アぅッゃ、ッンぁアあぁアアん!」
 こんな指先だけの愛撫で、簡単に陥落する幼さを見るたび、ろくでなしな男だなぁと悲しくなる。ぼろぼろになるまで気持よくなり、そうして体重を預けてくる元就を抱きしめて、起き上がっている自身を小さな臀部に押し付けた。
 元就は、ぐったりとしている身体を擦り寄せ、こちらの肉に手を伸ばそうとした。それを捕まえて、手のひらにキスをしたり、指をくわえたりする。遊ぶようなこちらの仕草に、元就が忍び笑いを漏らした。
「…とちかは?」
「もう少ししたら、元就に撫でてもらう」
 尋ねられて、口付けながらそう返す。そうすると、元就は少しだけ悲しそうにしたが、約束事なので従順に頷く。
 もう一度頭を撫でてやり、さて、元就が大人になるまで、あとどれくらいかと考えた。
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