お題ログ 「昏き理」
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温かなはずのシーツが、僅かに開いた隙間からの冷気に侵されてしまった。惰性と焦燥がフレイの身体をなで上げ、抱きしめ、しかしそれらを厭うように彼女は双眸をきつく瞑る。
緊急配備警報が鳴り響いたことを、フレイは気付いていた。彼女の可愛い同胞殺しが、その馬鹿騒ぎに飛び出して行ったことも、ちゃんと知っていた。
純粋なナチュラルであるフレイに正確な体内時計などありはしない。よって、彼の体温がなくなってからどれほどの時間が過ぎたかどうかなど、わかるはずもない。目覚めて苦しくなるだけの眠りは、やはり彼女を傷つけていた。
キラはフレイの大切な傀儡だ。フレイの生きている人形だ。温かな皮膚と優しいキスをくれる彼女を優位者とした絶対的な劣位者だ。
お互いが望まぬ関係などでは全くなく、寧ろ、彼女らにとってそれは至極当然の理だった。苦笑いと気遣いの対象とされても、フレイもキラも相手へ切望した最良の一手だったのだ。
キラの繰り返す殺戮はフレイのせいだ。フレイの抱く憎しみはキラのせいだ。フレイは知っていた。そう思う自身に小さな咎めを抱いていることも、その呵責さえ自身を可愛く思う理由にしていることも、みんな知っていた。
唐突に、彼女は苦しくなった。あまりにも感情の真理を知っているフレイは、知っているが故に途方もなく孤独だった。
フレイは、今この瞬間、キラに会いたくて会いたくて、たまらなかった。
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