お題ログ 「囚われた娘」
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司は疲れていた。彼は自身の腕や両足に架せられている鉛を知らなかった。しかし、純粋な彼は知ったとしても錠の在処がわからなかった。
マハが彼の袖を引き、司は猫の頭を撫でた。目を細め甘える仕草をするマハに、彼は微笑んだ。
「あの子は?」
司は眠り続ける幼女を気遣う。その問いかけに、心得ているマハは指し示す。司は親しいそれに警戒心のない眼で答え、頷いたのか、落胆したのかわからない角度に顎を引いた。
「起きないね。」
柔らかな寝台に沈み続ける少女を、司は撫でた。好きにして良いと、天から囁かれた余りにも甘い生殺与奪の権に、司はまだおびえている。
司は、この幼女の眠りを少しずつ、少しずつ、妨げつつある司自身の在り方を気付かずにいた。ただ、司はまどろみに捕らわれた幼い囚人を、救い出したくて仕方がなかった。
「起きないかな。」
そんな司のいじらしい姿を、マハは見ている。モルガナは見ている。
薄紅の空気と、護るような微風と、優しく愛しい人々に自由を奪われた少女が一人。そして、もう一人。
囚われた手足に真綿の鎖が、生と死までも柔らかな圧力に服従するしかない。けれど司は、そのことがわからない。
無知蒙昧に、司は眠り姫の覚醒を祈る。願う彼女もまた女囚の身であると、「司」は教えてもらえない。
そんな司の愛らしい姿を、マハは見ている。モルガナは見ている。
彼らの囚人を、じっと見ている。
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