お題ログ 「まったく…」
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 つまるところ、自身の目の前にいるこの男は、恋人と親友とどちらの俺も欲しいらしいのだ。頓珍漢なことをいう、と思わず呆けてしまったら、その色の薄い双眸にじわりと水の膜が張る。
 始めの内は、本当にただの嫉妬かと思ってて、こいつの言葉なんか全然気にしていなかった。部活のチームメイトと内緒話をしてたとか、ラーメン食いに行くの誘わなかったとか、そういうしょうもない話。ちなみに内緒話は試合の作戦だし、ラーメンに誘わなかったのはこいつのバンド練習があったから。弁解して流してキスしたらもうオレ的には終了する「いつもの出来事」でしかない。
 それが今回はどうだ。結局こいつは、小さなガキ臭い内緒を共有する恋人としての耳打ちが欲しくて、それと同等にお互い多少の無理は承知でも何だかんだと我儘を許しあえる親友の地位も欲しいのだと、目に涙を溜め訴えているのだ。自身でも仕様がないことをいっている自覚があるらしい。ヤマトは情けなさそうに耳を赤くして、それでも謝罪と一緒に駄々をこねる。
 今のこの感情をなんて言おう。オレとしては、雰囲気なんて気にせずにラーメン屋とか入れる恋人がありがたくて、年甲斐もないイタズラを囁けば一言叱った後乗ってくる親友が自慢だ。そんな泣かなくてもお前の望み通りだぞ?ってキスしてやりたくて、空回ってばっかじゃんお前って、笑いながら肩を叩いてやりたい。
 どちらにしろ、ヤマトがオレの最高の恋人や親友になりたいって必死なのがアホのように嬉しいのだ。嬉しすぎて、自分の趣味の悪さを自重できないくらいに。
 さて、今のこの感情を、ヤマトになんて伝えてやろう。キスして抱きしめて抱き返してもらってキスされて。
 それから。


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