お題ログ 「勝つために手段は選ばない」 Copyright 2008- (C) Uoko All rights reserved. 「うぉ、あっぶねェ！」 「っ、しまった！」 　二人の台詞は、同時だった。 　勝つために手段は選ばない。 　これは、東の名探偵こと平成のホームズ、工藤新一の側にしろ、長い沈黙を破り華々しく復活を遂げた怪盗キッドの側にしろ、相手に対し抱いている当たり前の信念である。 　多少自分本意ながらも確かな美学を有する彼らにしてみれば、例えば探偵の愛する恋人の声真似も、例えば空中での麻酔銃射撃も、何かとアグレッシブな感はあれど相手を認めた正真正銘の本気の勝負他ならないのだ。 　彼らは常に、相手に対して「俺の方が割に合わねぇ。」と文句をこぼす。しかし実際の所は「今回は僅差で俺が勝ったな。」と内心で納得する。そして「今度こそ！」と決意を新たにし、期せずして互いの意志がシンクロしているなど思いもしない。 　何とも馬鹿らしいこの双子のような彼らは、それ故にどんどん相手の手腕を上げているなど毛の先ほども考えず、切磋琢磨の青春の美をいがみ合いながら繰り広げているのだから、事実仲が良い。フィリピン海溝よりも更に更に深い溝がそこにどれほど横たわっていようと、そう判断されて致し方ないのだ。無意識のつながりはその不本意さも相まって、やはり個人の選り好みを越えるのである。 　そして、今日も今日とて彼らは手段を選ばない。相手の手口に反感し、毒吐き、思わず賞賛し、同じ台詞を吐く。 　つまり、 「あのヤロウ！」 　と。

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