お題ログ 「妾腹の王族」
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ミアキスにとって、その言葉は全てが全て、冗談であったわけでもなかった。
ねぇ、王子。リムは僕のものだ。誰にも渡さないって、ここで叫んでくださいよ。
彼女は、彼女自身の冷静な部分とはまた別のところで、本当にそうであればいいと、しばしば夢想に耽るのだ。片親だけでも王子の出自が違ったならば。彼がリオンのようにフェリドの拾い子ならば。つまりは、ミアキスの幼き主君であるリムスレーアとあの穏やかな王子の血の繋がりが、ほんの少しでも薄ければ。
彼女は闘神祭での優勝候補に、王子の名を上げることができたはず。そうすれば、ミアキス本人やカイルの特訓を強制し、彼にリムスレーアの伴侶になってもらうことすらできたはず。リムスレーアは恥ずかしがりながら、大好きな男の手を取ったはず。
すべては「はず」。
それ故に、彼女の他愛ない、しかしとんでもなく不敬な妄想は、いつもそこで幕切れとなる。
ミアキスは王子を気に入っていたし、リムスレーアの笑顔のためならば、彼女に否を言わせる道理など存在しないも同じことだ。だが、彼女の根回しと実力とごり押しでまかり通るものと通らないものがある。それは悔しいことであったし、諦めざるをえないものでもある。
「王子。なぜ王子は姫様の兄上として生まれてしまったのです?」
彼女であっても、決して口には出せない。もし妾腹のお生まれならば、など。なんたる無礼、なんたる不実、なんたる愚眛な浅はかさ!
それでも、リムスレーアが切々と兄の姿を求める度に、彼女はひっそりと溜め息に変えて、不忠なる考えを地に落とす。
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