お題ログ 「道玄坂」
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少年二人と少女だった。なんとも麗しい双子なのだろう兄弟と、愛らしい娘の三人連れ。
一人は、無表情の中の双眸に微かな苛つきを。
一人は、笑顔の口元に密やかな揶揄を。
一人は、少しばかり息を上げ前の二人を追う。
彼らは若者達の波の中、しかし一線を角す華やかさを纏い渋谷の坂を上っていく。少年が、前を歩く兄弟に何事か話しかけた。視線だけを背後に向け、しかし話しかけられた本人は歩くペースを変えることなく再び瞳を前に戻す。その様子に苦笑いを零し、後ろの少女に彼は歩を止め柔らかく笑いかけた。そして、追いついた少女に囁く。
不穏な空気を察したのか、前にいた彼は振り返った。そして、走り寄ってきた少女の繰り出すタックルのような包容を受ける。
瞬間、巻き起こる冷気の嵐はその片鱗を彼の眼精にちらつかせた。自分を守ってくれる少年の背へ少女は逃げ込み、小さな頭部の半分を覗かせ舌を出す。かばった少年は少女の様子に花のように笑うと、怒りをはらんだ視線と対峙した。
短い掛け合いの後、前を行く少年は先ほどよりもゆっくりと歩き始める。諦めたように吐かれたため息は、結託していた二人のピースの証拠だ。少女は少年の背からそっと抜け出すと不機嫌な彼へ笑いかける。
「ありがとね。」
小さくすくめられた肩と一瞬の視線が返事だった。彼らは煉瓦造りのビルへと消えていく。後には、常と変わらぬ道玄坂が残される。
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