お題ログ 「春雷」
Copyright 2008- (C) Uoko All rights reserved.


 恋をしている。
 思い人である加代ちゃんは、いつも怒って「ふざけないで。」とか言うけど、やはり恋をしている。愛している。
「加代ちゃーん。」
 パソコンとばっか見つめ合う加代ちゃんに何となく声を掛けた。
「なぁに?」
 なんて、少しイライラしてる癖に、必死で感情を隠そうとする声音に俺は笑ってしまう。
 加代ちゃんは可愛い。書類を纏めていても、マサの散歩をしていても、どんな大変なときだって加代ちゃんは余裕のある女性の顔で答えようとするのだ。
 律儀だなぁ。とか、それとも俺が相手だからかな? とか。考え始めるとうずうずして、もう我慢できない。妄想でもなんでも、とにかくとても嬉しくなってしまって。
「愛してるよー。」
 本当に恋をしているのに愛しているのに、でも、そういうと加代ちゃんは怒ってしまうのだ。
「からかわないの。」
「ホントなのに。」
「年上はイヤなんでしょう?」
「加代ちゃんは別ですって。」
 ありゃりゃ、周りの気温が下がり始めた。さあ急激な気温の降下だ。突風が吹くのか? それとも激しいにわか雨か。まあ、どちらにしろ寒冷前線の通過に変わりない。身を縮めろ、もうすぐ落ちる。
「邪魔をするなら出て行きなさい!」
 加代ちゃんの邪魔だなんてまさかまさか、そんなことする訳がないのにね。
 俺に直下する雷撃も、過ぎてしまえば春が来る。甘い痺れに身を震わせて、やっぱり俺は加代ちゃんが好きだ。恋をしている。


|||| AD ||||