お題ログ 「嫉妬」
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「可愛いんだよ、娘みたいで。」
享楽隊長がそう言いながら笑ったとき、私の内にあったのは、確かな嫉妬であった。
それが、果たして一体何者に向かう嫉みであるのか理解できず、私は数瞬考え込んだ。そして次第に思い至った対象に、愕然とした。
事の起こりは、私の小言を隊長が聞いている最中だった。口癖のような、あの人の私に向けられる好意の麗句をやはり常と同じく叱りつけ、そして、どうして斯様にいつもいつも、子供相手のような言葉を繰り返すのか問い質したところだったのだ。
あの人は、「娘」と言った。
享楽隊長は当然の事ながら、私よりも遙かに長い時を生きている。愛した女性もいたのだろうし、愛されたこともあったろう。それは大した問題ではない。詰まるところ、私が嫉妬という敗北を帰したのは、その名も顔も存在したかも分からぬ女ではなく、その女との間に生まれたかもしれぬ娘だったのだ。
屈辱だった。私はあの人の眼の中で、ずっと恋敵なのだろう女の血を受けていた。慈しむ視線が、何より恋を含まぬ愛情を受けていると自覚させられ、突発的な怒りも生んだ。
私の中にある暴力の力は、どのようなときもあの人のために扱うと烏滸がましくも誓った私を、彼は手足とさえ理解していない。
堪らなく悔しかった。
「隊長のような父はいりません。」
必死の抵抗の言葉を吐いた。
「つれないなぁ、七緒ちゃんは。」
あの人は、笑うだけだ。
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