笑った顔は可愛かったよ
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今は過去、デスマスクという子供は、確かにサガの目から見ても、小憎たらしい性格だった。彼はこまっしゃくれたしたり顔と、あっけらかんとした悪戯で、人を笑っていることが多かったし、何より悪意や他人の悲嘆に対して興味を抱いていなかった。
サガの記憶にあるデスマスクは、当初なんとも扱いにくい子で、聖域に訪れてすぐ五老峰の老師の元、二年間の師事を修めた。その後、彼の持っていた暴力的な何かは、そのどす黒さを赤の発光色できれいに包まれ鳴りをひそめたようにサガには思えたが、しかし、少年がほんの時折、そして一瞬匂わす何とも言えないちぐはぐは、結局消えることなく、またそれは、サガにはどうすることもできない類の代物だった。
デスマスクは、性根悪そうにアフロディーテへ笑いかけたし、またシュラに対して目じりに皴を作り笑んだものだった。老師へは気取ったような口元だけの微笑で答え、年下の黄金聖闘士には大口を開けた。
デスマスクの不可解な数点とは別に、彼は相応に子供であったと、サガは思う。それだけが理由ではなかったが、デスマスク本人が欲してもいない種類の愛情を、サガは彼に注ぎ続けた。サガの親友は「手の掛かる子供ほど……」といったし、サガに懐いていたアフロディーテはいつも面白くなさそうにしていた。デスマスク本人に、サガのそれを厭う様子はなかった。しかし時々、不透明な何かを探るようにサガをじっと見つめていた。
そのデスマスクの反応が、まるで唐突に変化したのは、サガが覚えている限り初秋の季節のことだった。秋口の少し肌寒い夜、サガは教皇宮から双児宮へと下る途中で、いつものように「風邪を引くな」と、ただ頭を撫でるだけのような、ただ小鳥の世話をするだけのような、愛情のひとひらを子供に送ったのだ。
デスマスクはいつものように、殊更奇妙なものを窺う姿勢でサガを見上げた。そして次に、無造作に笑って、返事をした。彼らは「おやすみ」と言い合い別れた。
いまだその笑みは、サガにのみ贈られるデスマスクの笑みである。その笑みは、デスマスクが彼の「特別」に送る笑みではなかったが、だからといって、サガ以外の誰かが知っている笑みでもなかった。
サガは酷く衝撃を受けた。単純な驚きで、意味合いは特になかった。ただ衝撃がサガを襲って、そして去っていったのだ。
私の妄想の前後関係がわからないといい加減意味不明な話になった。えーと、聖域15、6年前?
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