僕らは世界の片隅で
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 城戸邸は広い。星矢たちに宛がわれた一人一人の個室からして、その体積は「ゆったりとしたスペース」よりも一つ格が異なるし、加えて食堂であるとか、書斎であるとか、各々目的の名称別に部屋が連なっていくのだから、少年達にしてみればまったく無意味と思えるほどに広い。
 星矢は瞬の部屋のクローゼットの中にいる。その横には瞬もいる。何故彼らがそんな不可解な場所に居るのかといえば、ほんの思いつきでかくれんぼに興じているからだ。邪武や那智らの帰省と、紫龍と氷河の訪問が重なったついでに、弾んだ会話は幼年の頃の思い出に触れ、渋る一部は強制的に鬼決めのじゃんけんに巻き込まれた結果だった。
 小宇宙の使用は禁止だ。だから、彼ら二人が同じ場所に隠れたのはまったくの偶然で、クローゼットの中に飛び込んだ星矢もそれを迎えた瞬も、互いに目を丸くした。
「小さい頃は、もっと簡単に隠れられたのにね」
「だよな。二人で洋服ダンスっていうのはさすがに狭かったかもな」
 星矢と瞬は、小さな声で囁きあう。けれど、揃って含み笑いをしている点を見れば、二人ともその状況を変える意思がないこともわかる。
「意外と面白いし」
「なんかドキドキする」
 瞬の言葉に、星矢が笑いながら頷いた。
 彼らは、その幼い年齢には不釣合いなほど、海の底だとか、死者の領土だとか、凍土の異国といった不可思議な土地へ足を踏み入れた回数が多い。その分、星矢も瞬も世界といわれるものが、まず物理的にひどく多元的であることを知っている。
 彼らは、単純に言えば広い広い世界の片隅で、幼い笑みを浮かべながらかくれんぼをしている。そしてまた、別の片隅では貴鬼がムウに師事しているし、もっと他の片隅ではまた誰かが、二人には想像も出来ないようなことをしている。
「そう考えると、何か羊羹みたいだよな」
 瞬は、星矢のその素っ頓狂な感想に僅かな時間首を傾げる。そして、彼が素直に「どうして?」と尋ねれば、星矢もまた気兼ねしない口調で「だってさ」と続けた。
「羊羹を半分に切って、その半分をまた半分にして。そうやってくと、ずーっと切り続けることが出来るだろ?」
「……あぁ、なんとなくわかったかも」
「その星矢の説明でなんとなくでも理解できるのはお前ぐらいだと思うぞ」
 言葉と共に、邪武がクローゼットを観音開きにする。
 世界を半分に割り、その半分をまた半分に割る。永遠に続けたとして、いったい何億回目の「半分」が星矢や瞬の「片隅」になるのか。とりあえず世界の片隅で、彼らは見つかりクローゼットから飛び降りた。

 星矢と瞬のタッグって年少同士ですごい可愛いと思う。性格がちがくてでこぼこしてる感じが更に。
 でこぼこしてるけど仲良しできゃいきゃいしてるのが妄想しやすい。ちなみに兄さんはかくれんぼ不参加です。帰ってきてません。


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