With of Dear
マリンがダリスにやって来て数ヶ月が過ぎていた。
城の一室に部屋を与えてもらい、シリウスの秘書として働いている毎日である。
今は遠くにある故郷を懐かしく想いながらも、いつか帰れる日を夢見て、またシリウスの傍にいられる幸福から、それなりに満足に日々を過ごしていた。
しかし、どうも最近気になることがある。
書類の束を運びながら、マリンは今日もその事について考えていた。
「・・・最近、シリウス様の様子がおかしいんですよね」
誰が聞いているわけでもない、思ったことを口にしたただの独り言。
だが、口にしただけで妙にそれがはっきりと意識できる。
そう、最近のシリウスはどうも様子がおかしかった。
確かに昔は女性関係に問題があったが、今はマリンがいるためその類のものは一切ない。
マリンもそれはよく理解しているため浮気とか、そういうことをして様子がおかしいわけでもない。
それ以前に、浮気を隠している態度ではない。
確かに何かを隠している風ではあるが、周りに女性関係の気配はまったくの皆無。
しかし、あのシリウスの疲れきった表情を1日に1度は必ず見る。
突然現れては、自分が行こうとした方向とは違う方向に無理やり行かされる。
そして、その様子のおかしさに、ついに耐えかねたマリンは、マリンのことを気に入ってくれているシリウスの姉に尋ねたのだが、にこやかに笑って誤魔化された。
結局原因が掴めないまま、もう何日も経っていた。
「はぁ・・・シリウス様、どうしたんでしょう」
何度目かになる溜息をついたと同時に、マリンが廊下を曲がろうとした時、いきなり後ろから口を塞がれ、腰を抱かれてずるずると後退させられてしまう。
こんな経験はここ何日もの間にあったため、マリンにはすでに犯人が容易に予測できていた。
手を話された瞬間、くるりと後ろを振り向き、その人物を少し睨み付ける。
「シ〜リ〜ウ〜ス〜さ〜ま〜〜」
「やぁ、マリン」
恨めしそうな声を上げるマリンとはひきかえ、シリウスはまさににこやかに微笑んで手まで軽く振っている。
「どういうつもりですか?!毎日、毎日」
「まぁ、まぁ・・・そう怒らないで、ね?」
悪気も何もないシリウスは、微笑んでマリンを宥めようとするが、マリンは口を尖らせて怒っている。
「ね?じゃありません!」
「でも、そっちに行くのはあまりお勧めできないなぁ」
「ソウダヨソウダヨ」
「文官長様のお部屋に行くには、こっちの廊下から行くのが1番近いんです」
シリウスとボビーのタッグを一蹴する言葉を放ち、追い討ちと言わんばかりに、手に持っている書類の山を見せる。
「・・・それじゃあ、僕が持って上げるから・・・そっちから行くのは止めてくれないかい?」
「良いですよ〜〜〜・・・これはあたしの仕事ですし」
ただ置いてもらうだけでは悪いと、自分から仕事をすると言い出したのに、その仕事の1つをシリウスにされたら、自分の立場というものがなくなってしまう。
「え〜〜っ。君は僕に手伝って貰うのが嫌なの?」
「・・・そういう訳じゃないですけど」
シリウスの悲しげな表情に少しばかりマリンも「悪いことをしたかな?」という気持ちになる。
「なら、決まりね」
マリンのそんな心情を表す表情を見たシリウスは、にっこりと笑ってマリンから書類を奪い取った。
こうなる事は十分予測できたはずなのに、自分の甘さをマリンは嘆いた。
「ちょっ・・・シリウス様、いいですよぉ〜〜。こっちから行けば良いんですから」
「だ〜〜め!今、そっちの廊下を通るのは、絶対に駄目!」
こうなってはマリンには勝ち目はなく、にっこり微笑むシリウスに書類を運んでもらいながら、2人揃って最初のルートとは別のルートで文官長の部屋に到着したのだった。
「どういうことか、ちゃんと説明して下さい!」
本日の仕事を全て終えたマリンは、もうそろそろシリウスの様子のおかしさを突き止めようと、シリウスに尋問まがいなことを始めた。
それに最初はきょとんとしていたシリウスだったが、すぐに何かに思い当たったのか、おかしそうにくすくす笑い出した。
「な、なんですか?」
「いや、ごめん。君が僕の様子の変化に気がついてくれてたのが、なんだか嬉しくてね」
「ふえっ?」
その言葉を突然言われて、マリンは一瞬のうちに頬を朱に染める。
「ふふっ、本当に君は可愛いね」
「えっ・・・あっ・・・その・・・・・誤魔化さないでください!」
「別に誤魔化してるつもりはないんだけどな」
「い〜〜え!誤魔化してます!」
怒ってもまったく怖くない、むしろ頬を膨らませたその姿はますますもって可愛い。
それをマリン自身は自覚していない。
自覚のない可愛らしさは少々シリウスにとっては悩みの種となっている。
「居場所も解らないこともありますし」
「いつも私の居場所、気にしててくれてるんだ?」
「そ、それは・・・秘書として、困りますし・・・」
「大丈夫。君が心配しなくても、僕は君一筋だから」
「・・・それに関しては、心配してません。信じてますから・・・」
顔を赤くしながら微笑んでそう言ってくれるマリンをますます愛しいと想い、シリウスはその想いをこめて彼女の額に口付けふわりと微笑む。
「シリウス様・・・・・」
「・・・今は教えて上げられないけど、いつか必ず言うから」
その言葉に込められた「だから待っていて」という思いを読み取り、マリンは暫く考えた後微笑んだ。
「解りました。でも、なるべく早くして下さいね」
「ん〜〜〜・・・それは僕1人だけでどうにかできるわけじゃないけど。そうだね、僕としてもなるべく早くしたいよ」
「?シリウス様だけじゃ駄目なんですか?」
「そうだね」
シリウスのその言葉に、マリンは意味が解らないというように小首を傾げてみせる。
一方のシリウスはというと、じっとマリンを微笑んで見つめながらぽつりと言葉を漏らした。
「・・・・・牽制も大変なんだよ」
「ないか言いました?」
「なんでもないよ」
小首を傾げて今は何も解っていないマリンが、早く自分だけをこの先見てくれる確信を持ちたいと、微笑みながらもシリウスは切に願っているのだった。
敵は多いのだから――――――
あとがき
意味なし、落ちなし、中途半端な代物です;(短いし)
はい、とりあえずシリウス×マリンでした。
この話は、EDの例の台詞(「蛇の道は蛇」)を元に作成されたものです。
あの台詞は絶対ああいう意味(ED感想参照)だと思うのですが・・・(^^;
私の中でシリウスEDでダリスに行ったマリンは、絶対シリウスのお姉さま方に気に入られているという予測がたっています。
というか、ダリス城のアイドルと化している予感・・・・・(^^;
アクアもまたしかり・・・(葵姐さんはアイドルというよりもお姉さま;)
廊下で突然現れたシリウスが方向転換させたのも、マリンの進む先に会わせたくない相手がいたからです。
え〜〜・・・説明不十分のうえ、意味のない(しかもギャグ系)仕上がりになってすいませんm(_ _)m