花嫁
「プルート様、明日はご予定ありますか?」
ある日、とても上機嫌で満面の笑顔を浮かべたマリンが、ちょうど休憩中のプルートの部屋にやってきてそう尋ねた。
「特に予定は入ってませんけど・・・」
「じゃあ、そのまま空けておいてくださいね」
プルートの返事を聞き、ますます嬉しそうな笑顔になったマリンは、その一言だけ告げると、特に理由も告げずにもう部屋を後にしていた。
その早い一連の出来事に、呆然としてマリンの出て行った部屋の扉を見つめるプルートだけがその場に残された。
翌日は快晴で真っ青な空と涼やかに吹く風が心地良いとても良い日だった。
マリンに言われたとおりプルートが予定を空け、その結果連れ出されたのは街のある小さな教会だった。
そこにはすでにたくさんの華やいだ人で賑わっていた。
「・・・何かあるんですか?」
「はい!これから結婚式があるんです」
まるで自分のことのように嬉しそうに微笑むマリンの表情を見て思わずプルートの頬が赤くなる。
「えっと・・・マリンさんのお知り合いですか?」
「違いますよ〜。でも、結婚式って素敵じゃないですか。だからプルさんと一緒に見たいと思ったんです」
「そ・・そうなんですか?」
マリンのその言葉にますますプルートの顔が赤くなる。
「はい!」
にっこりと微笑んでマリンが返事をしたのとほぼ同時に、教会の鐘が鳴り響いた。
幸福を告げる音、それが結婚式の始まりの合図。
教会の中からつい先ほど愛を誓い合ったばかりの至極幸せそうな白い衣装の2人がようやくその姿を見せた。
周りにいる人々は拍手でその2人の門出を盛大に祝っている。
そして、そんな2人を頬を少し赤くして、少し羨ましそうに見ているマリンの姿をプルートは見た。
「・・・マリンさん、どうかしましたか?」
「えっ?あ・・・すいません。少し羨ましくって・・・・・」
「羨ましい?」
「はい。やっぱり、花嫁さんは女の子の憧れですから」
そう夢見るようにマリンは嬉しそうな表情で告げた。
「あっ・・・・・」
マリンが新郎新婦のほうに向き直ると、そこにはブーケを高く上げ、今にも放り投げようとしている新婦の姿があった。
それを多くの若い女性が、自分こそは瞳を光らせ、意気込んでいるのが解る。
マリンも途端に真剣な表情になり、プルートは何事かと首を傾げていた。
投げられたブーケが高く宙を舞う。
そしてそのブーケは上手く1人の人物の手許に収まった。
「あっ・・・とっちゃいました・・・」
多くの人の視線の中、その視線のせいで多少乾いた声でブーケを持ってそう言ったのはプルートだった。
「うわぁ〜〜、プルさん凄いです〜〜」
ブーケを受け取ったプルートの隣で、マリンははしゃぎながらもどこか残念そうだった。
それは他のブーケを受け取ろうとして女性たちも同じで残念そうにしていた。
「・・・・・・皆さん、どうかしたんですか?」
「ひょっとして、プルさん知らないんですか?」
「なにをですか?」
「結婚式で花嫁さんの投げたブーケを受け取った人は、次の花嫁さんになれるって話があるんですよ」
マリンのその話を聞き、言葉の意味を理解したプルートは多少硬直した。
「・・・それって、あの・・・僕が・・・?」
「あっ・・その・・・・・男の人は関係なくって・・・女の人が受け取った場合だけです・・・よ」
最後の方はかなり確信が薄れ、マリンの声は少し小さくなってしまっている。
「そ・・・そうですよね・・・」
多少冷汗を流しながらそう言ったプルートは、じっとブーケを少しの間見つめていると、すっとそのブーケをマリンの前に差し出した。
「あげます」
「えっ・・・・・?」
にっこりと微笑んでそう告げたプルートに、マリンは多少間の抜けた声を出す。
「マリンさんにあげます」
「えっ、でも・・・これはプルさんが・・・・・」
「男の僕が持っていても意味がありませんから」
そう言ってマリンの手にぎゅっとブーケを握らせる。
自分の手に収まったブーケを少し嬉しそうに見た後、マリンは少し不思議そうな瞳でプルートを見る。
「本当に、私が貰ってもいいんですか?」
「はい。マリンさん欲しそうにしてましたし・・・・・それに」
ブーケを持つマリンの手を自分の手で優しく包み込み、にっこり微笑んでプルートはその言葉を口にした。
「マリンさんは僕の花嫁になるって決まってますしね」
「はぁ・・・・・・っ、ええぇぇぇ〜〜〜!!」
さらりと言われた爆弾発言に、一瞬の間の後マリンが盛大な叫び声を上げた。
「ぷ、プルー・・・じゃなかった、プルさん?!」
「あれ?なってくれないんですか?僕はそのつもりなんですけど」
にっこりとっ相変わらずの極上スマイルで恥ずかしげもなくそう言われ、マリンの顔がどんどん赤く染まっていく。
こういう事を言う時の彼は、どうしてもこうも自分より優勢で、しかもどこか余裕のある大人のようなのだろうとマリンは不思議でならない。
「・・・その、私なんかで良いんですか?」
「僕は、マリンさんが、良いんですけど」
節目節目を強調するように区切られて言われたその言葉に、マリンは暫く経ってから照れたように、しかし幸せそうに微笑んで返事をした。
「・・・・・・はい」
この日投げられたブーケがこの教会に別の花嫁の手で戻ってくるのは数年後の話・・・
あとがき
みじか〜〜い!そして、なんでしょうかこれは?!
「Fantastic Foetune創作者さんに20の宿題」の第一弾がこれってどうでしょうか?;
お題作成者の方に謝罪、ファンタ2ファンの皆様にも当然謝罪!
一応これはプルートEDの後の話ということで・・・
それなのにマリンが外出た時は「プルさん」って呼んでるのは、一応政務はあのED後もプルート続けてるので、未だ国の中枢にいるわけですから。
説明になってませんか・・・ようするに、未だ国の中枢にいるなら、あんな場所に普通にいたら大騒ぎになるだろうということの配慮です。
一種の芸能人状態・・・・・(しかも恋人つきですし・・・;)
以上です・・・・・では逃げさせてください!