Your Kiss to Me




その日は珍しく、敬称戦争時代の仲間が一堂に集まってのお茶会が開かれた。
その中で、この国の幼い王様はというとお茶を飲みつつ、お菓子と食べつつ、同時の本を真剣に読んでいたりする。
めったに本を読んだりすることはない彼だから、みんなその姿に珍しいと思う反面、行儀が悪いとも思っていた。
が、それを指摘しようものなら、彼を溺愛する弟君の所持する剣が飛んできかねないので、黙って見守ることにしている。
そんな中ふいに王様はこう一言のたまった。

「……キスって、なに?」

その一言に一同は目を見開いてあからさまに驚いた。
あるものは飲んでいたお茶を噴出し、ある者は誤っていすから転げ落ち、ある者はカップを落として割ったり…
各々当然といえるような反応を見せている。
しかし、その中でも異質であったのは、腹を抱えて笑っている人物1名と、虚空に目線をそらせて冷や汗を流す人物1名。
「なんだよぉ…」
一同の反応が気に障ったようで、眉をひそめて明らかに恨みがましそうに睨み付ける。
「い、いや…アレク様。本当に…知らないんですか?」
「知らないから聞いてるんだろ?」
冷や汗を流し続けるカロールに当たり前のことを尋ねられて頬を膨らませて期限を急降下させる。
「あはは‥坊ちゃん、教えてないんですか?」
笑い続けるジェイドがいまだ目線をそらして一同を目を合わせようとしていないサフィルスに尋ねる。
見ると先ほどよりもいっそう冷や汗を流しているように見える。
「サフィルス!お前、兄上にどういう教育をしていたんだ?!」
「確かに‥キスの意味くらいは一般常識だよね〜〜?」
アレクと血の繋がった親子2代に詰め寄られてさすがに目線を逸らしきれなくなったサフィルスが息を呑む。
「2人の言うように、経験云々はともかくとして、意味くらいはしっておかねーとな」
「ですです」
さらにロードとプラムの2名が加勢し、より追い込まれるサフィルス。
「え〜っと、ですね…これには深いわけが…」
「いい加減にしろ!!」
弁明しようとしていたサフィルスお声を遮ってアレクがテーブルをばんっと勢いよく叩いた。
その振動で、テーブルのポットが揺れた。
「俺が解らないからって・・・皆で馬鹿にしてるのか?!」
完全に目が据わってしまっているアレクの様子に一同はひく。
本気で怒らせたアレクほど恐いものはここでは、ない。
「あ、アレク様・・・そういう訳ではなく・・」
「じゃあ、どういう訳だよ?!・・第一、何でサフィは教えてくれなかったのさ?」
取り付く島もないアレクの言葉にサフィルスはぎくりと肩を小さく震わせて何も対処できなくなってしまった。
「・・・・・・・・で・・け」
そんな中で、ずっと静かに黙って何かを思案している様子だったプラチナが、密かに溜息を漏らすと小さく何事かを呟いた。
「えっ?なんだって??」
「・・兄上以外、全員出て行けといったんだ」
プラチナはぎろりとアレクを除く全員を睨むと扉の方を指差す。
アレクに睨まれ、プラチナに「出て行けと」睨まれ、この兄弟のタッグに1度に睨まれ、逆らえるものがいるのか。
否、いるわけもなく全員その場から「出て行け」といわれた理由も聞かず、逃げ去るように部屋から速やかに退出していった。

全員が部屋から出て行った野を確認するとプラチナは今だふてくされて機嫌の悪い、アレクの真正面に彼の目線に合わせて立つ。
「で、兄上はなぜいきなりあんな事を言い出したんだ?」
「・・・・・・・・これ」
機嫌悪そうにしながらも言われた通り大人しくその理由であるものをプラチナに突き出す。
それはアレクが大好きなお茶の時間にもかかわらず真剣に読んでいた一冊の本。
プラチナも読んだことのある童話の本で、確かこの本の中にキスシーンというのが確かに存在していたという事が思いおこされる。
「・・・挿絵とかなくて文字だけだから、キスっていうのがどういうのか解らなくて・・・」
確かに全くの前知識がないものが文章だけ読めばそれがどういう行為かは解らないだろう。
そして、それを知りたくもなる。
ましてやアレクは好奇心の固まりのような存在だからなおさらの事であろう。
「・・・兄上は知りたいのか?」
「・・・うん。さっきの様子だと俺だけ知らないみたいだから。・・・余計に知りたくなったし・・・」
そう言って俯くアレクの姿をプラチナは愛しいと感じる。
それどころか、プラチナにしてみればアレクの全てが愛しい対象なのだが。
「・・・兄上」
「ん?・・・」
名前を呼ばれて上を向いた瞬間プラチナの顔がすぐ目の前にあって、彼の唇と自分の唇が重なった事に気がついてアレクはなにが起こったのか当初わからなかったが、一瞬のうちに目を見開いて頬を真っ赤に染め上げる。

暫くして名残惜しそうに離れるプラチナに対して、アレクは顔を真っ赤にさせたままで口をパクパクさせ続ける。
『キス』という言葉の意味を知らなくても、今自分がした行為がどんな部類に入るのかは本能的に察したらしい。
「・・・・・・・・・・・兄上」
プラチナに呼ばれてはっと我に帰ったアレクは、それでも顔を真っ赤にしたままでプラチナに詰め寄る。
「おま・・お前、いまなにした?!」
「・・・兄上がキスについて知りたいといったから、実施で教えたまでだが?」
さらりと言ってのけるプラチナにアレクは唖然とする。
「じゃ、じゃあ・・・・・き、キスって・・・」
「・・・・・そういうことだ」
アレクの言わんとする事を理解しているプラチナが肯定の言葉を口にすると、アレクは先程以上に顔を真っ赤に、それこそ湯気でも出ているのではないかと疑うくらいに真っ赤にする。
「兄上は嫌だったか?」
不意に尋ねられた言葉にアレクは再び正気を取り戻す。
「単に教えるというだけでなく、俺は兄上としたかった。だからしたんだが」
それ以上は言葉を続けなかったが、その後に「迷惑だったか?」という哀愁を含んだ言葉を感じ取ってアレクは暫し考える。
そして、自分からプラチナに近づき、自分より背の高い彼に合わせるように背伸びをして、先程彼が自分にしたことと同じ事をする。

つまり、キスを・・・・・・

そして、その思いもかけない行動に今度はプラチナのほうが驚きで固まる。
アレクは離れるといたずらをした後の子供のような「してやったり」というような表情を作る。
けれどその頬はほんのりと桃色に色ずいていた。
「・・・嫌じゃないよ。プラチナとだから・・・ね」
そう言うと、甘えるようにぽすんとプラチナの胸に身を寄せる。
思いもかけない行動に思考が停止していたプラチナだったが、ようやく復活するとアレクのその行動に普段はめったにみせないアレク仕様の極上の微笑を浮かべて、自分に身を寄せるアレクの小さな身体をぎゅっと少し強く抱きしめる。
「俺も・・兄上・・・アレクだからしたんだ。・・・だから、俺以外とはしないでくれ」
「・・・うん」
プラチナの言葉に頷いて甘えるように彼の腕の中で擦り寄るアレク。

そしてもう1度、今度は互いに不意打ちではなく、意志の疎通を持って互いに思いを込めあってキスをする。
「愛してる」
「うん」





あとがき

・・・管理人的に砂はきです。
いろんなサイト様に行っても、アレクがキス慣れ(?)しているというのがよくあるので(←私もそう思いますが)その逆パターンに仕上げてみました。
10HITゲットされた南さやか様のリクで「アレクを大好きなプラチナで甘め」でした。
リク内容達成できたのでしょうか?
なんだか、プラチナだけでなくアレクもプラチナが大好きなのですが・・・
しかも、ラストで告白してたり・・・
すいませんιこんなんですけど、南様どうか平にご容赦し、お受け取りいただければ管理人幸いです。
こんなへぼで申し訳ございませんですm(_ _)m
しかも、下に行くと訳の解らないオマケがあります・・・ごめんなさい(土下座)























おまけ

ジ「しかし、口にする必要はあったのでしょうか?」
べ「なにいってるんだい、ジル。額だの頬こそ駄目だよ」
ジェ「そうです。・・しかし、さすがプラチナ様やりますね」
カ「あの・・・それよりもこういうのは、覗きと言うのでは?」
ル「かたいこというなや」
ロ「そうそう。やっぱ気になるしな〜〜♪」
べ「うんうん。僕も2人の父親として、子供を見守る義務があるし」
ジェ「私もプラチナ様の(元)教育係として」
カ「・・・単に自分達が覗きたいだけでは?ばれたら後が恐いですよ」
ロ「ま、そんときゃそんときで」
ル「こういうのも1つの社会勉強やで。なあ、カロール」
カ「そんな社会勉強いりませんよ、お兄ちゃん!!」

プ「・・・サフィルスさ〜〜ん、だいじょうぶで〜すか?」
サ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」←真っ白



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