Lost
Mise 〜失われし約束〜
終章
もう既に月の輝く夜になっていた。
サフィルスを含めた屋敷内の精神浸食を受けていた者達は全員解放され正気を取り戻した。
それからベリルが書き換えていた記憶を元に戻した瞬間屋敷の人間達は侵食されていた時の記憶と重なって多少混乱していた。
それはすぐに収まったが、サフィルス1人は自分がしたあまりのことにショックを受けて呆然とした後、どうやって詫びればいいのか解らずとりあえず誤り倒していた。
それを何とかなだめたと思ったら今度はセレスである。
『呪い』も解けてもう用はないしと言ってどこかに去ろうとした。
それをアレクが初めに説得し、最終的には全員係で説得され、結局ここに居続ける事になった。
セレス自身は言わなかったが、自分がしてしまった事もあり、居ずらいという理由もあったのだろう。
しかし、それをなかったことには出来ないがこのままどこかに行かせる訳にもいかないということから引き止めたのだった。
その後、色々と後始末などもして・・・
終わってみればあっけないもので・・・
今日1日が長かったのか、短かったのか・・・
今日の疲れをとるかのように天井を見つめながら広いベッドに横になっていると、突然小さくドアを叩くような音がした。
「誰だ?」
聞いても返事は返ってこず小首を傾げると、かすかな声が扉1枚の向こう側から聞こえてきた。
「お・・・おれ・・・・・」
その声に反射的に反応して心なしか扉に急ぐ。
開けたドアの先にいたのは見間違える事のない人物だった。
「姉上・・・どうしたんだ?」
「・・・・・・」
尋ねても返事はなく、いきなりプラチナの身体を押しのけるように部屋に転がり込むと扉を閉めてしまう。
「姉上?」
サイド問い掛けるように呼んでも返事は返ってこず、アレクは終始無言のままで、何を思っているのかじっとプラチナの顔を見ていた。
プラチナにはアレクの格好も気になっていた。
巫女の衣装とは少し違う白く薄い生地の着物を身体を隠すようにはおっている。
そして、アレクの頭を飾る髪飾りにはどこかで見覚えがあった。
「・・・す・・ぞ」
「?・・・なんだ?」
あまりにも小さく囁く程度の声だったので、プラチナは正確に聞き取る事が出来なかった。
そのプラチナの一言で意を決してなのか、顔を紅くし、恥ずかしいのを隠すようにまるで怒ったように強く言いきった。
「だから!『初夜の儀』するぞ!!」
言い切った瞬間はおっていた白い着物をばさりと取り払った後に現れたのは・・・
プラチナがここに帰ってきて会った時に来ていた例の初夜の儀用の着物だった。
確かにあの格好のまま、何もはおらずに廊下を歩いてくるなど出来ないが・・・
「ちょっと待て・・・いきなりすると言われても・・・」
「なんだよ!したくないのか?今まで散々好き勝手にしておいて!!」
「だからあれは・・・」
「だからじゃない!!」
プラチナもアレクをお互いいっこうに引く気配がなく変わらぬ押し問答が続く。
プラチナにはアレクがどうしていきなり「する」と言ったその理由が計りかねていたから承諾できなかった。
今まで無理矢理してきたのは薬の影響もあったし・・・
しかし、そんなプラチナの思いを知ってか知らずか、突然アレクは瞳に涙をため泣き始めてしまった。
「ちょっ・・・」
記憶が戻ったためにアレクに泣かれるのがとても辛いと自覚しているプラチナは慌ててしまう。
「お前は・・・俺と・・結婚したくないのかよ・・?」
恨めしげに自分を見てそう告げてくるアレクの言葉の意味が解らずにプラチナは思わず首を傾げる。
その様子にアレクがまた声を張り上げる。
「パストゥールの当主や巫女は初夜の儀をしないと正式に結婚した事にならないの知ってるだろ!?」
アレクにはっきり言われてプラチナは初めて知ったことに戸惑ってします。
自分がそんなことを忘れるわけがないと思いながらも、ジェイドに聞いたかどうかを必死に思い出そうとしていた。
ふとそこである考えに行き着いた。
こんな話をまだ5歳の子供に話すはずがない、となれば自分が都会に言った何年後かにアレクはこの話を聞いたのだろうが、問題の自分の方は・・・
『あいつ・・・面白がって話さなかったな・・・』
心の中でジェイドが自分が『その時』に直面し、どういう反応をするのかを面白がって言わなかったことを推測してプラチナは心の中で怒りを露わにする。
「すまん・・・知らなかった・・・・・」
とりあえずこのままではいけないと、アレクの怒りを静めるために正直に誤る。
するとアレクも瞳を円くして驚いたように呆然としている。
「本当?」
「ああ・・・」
なんとなく気まずい空気が部屋の中に満ち、静けさがそれをいっそう強固にしている。
しかし、プラチナはあることに気がつく。
本当は気がつきたくなかったことなのかもしれないが・・・
「・・・今更のような気もするが」
思わず小さく呟く程度に洩れてしまったその言葉を聞き逃さなかったアレクはまた怒ったように声を張り上げた。
「この格好でしなきゃ初夜の儀にならないんだよ!」
そう言って自分の現在の格好を示すように自分自身の胸に手を置く。
恥ずかしさもあってか顔を紅くして、瞳には再び薄ら涙が溜まっていた。
そしてその涙がまた堪えられなくなったように瞳から溢れて頬を伝い始めるのにはさほどかからなかった。
動揺するプラチナを涙目で睨みつければくるりとドアのほうへと向かう姿勢を見せる。
「もう良いよ!どうせあの約束思い出してないんだろ」
それを聞いた瞬間、どこか苦しげに言い切って出て行こうとするアレクを後ろから抱き止め、そのままずるずるとベッドの方に連行する。
どさりという音がして、プラチナがアレクを仰向け形でベッドに押し倒していた。
「なっ・・・」
さすがにいきなりの事で驚いて声を上げようとするアレクの唇を己のそれで塞ぐ。
浅いものから段々深くなり、やがて舌を絡ませ始めたその感覚に、アレクは思考が麻痺したかのように瞳をとろんとさせる。
「っ・・はぁ・・」
やっと息苦しさから解放されたアレクが呼吸を整える暇もなくプラチナの愛撫が始まっていた。
「ちょっ・・んあ・・」
「・・・お前が、して欲しいといってきたんだろ?」
「それ・・は・・・あっ・・や・・」
首筋から徐々に下のほうに身体を這う舌が降りてくる。
それと同時に片方の手で胸を弄り始める。
やがて舌をもう片方の胸の突起に這わせ、両方の胸に同時に刺激を与える。
「はっ・・・ん・・ぁあ、ひっあ・・あ・・」
所々に花を散らせながら、プラチナは自分の与える快楽に半ば抗議のような声を上げるが、どこか強請っているようなアレクに満足していた。
「アレク・・・」
「んっ・・・・・あっ・・そこ・・やっ・・・」
名前を突然呼ばれ、涙で半ば焦点の定まっていない瞳でプラチナを見た瞬間、胸から下肢の方に感覚が移っていた。
足を折り曲げさせて太腿を愛撫するようにぎゅっと固定すると、秘所に手を這わせる。
何か水音のようなものが聞こえると同時にアレクお体の内部に軽い刺激が走った。
「あ・・・んあ・・」
1本の指を奥の方まで挿れると大きく円を描くように掻き混ぜ始める。
続いて2本、3本と指を増やしつづける。
「はっ・・・あ・・ひゃ・・んあぁ・・」
「アレクの良いのは・・・ここだな・・?」
「・・っ・・あん・・だ、めぇ・・あぁあ」
何度も抱いて知り尽くしているアレクの身体をプラチナは的確にせめあげていく。
やがて涙をためたその瞳で、アレクはプラチナに無言で何かを訴え始めていた。
その表情にプラチナの心がいっきに揺さぶられた事にアレクは気づいていない。
「アレク・・・どうして欲しい?」
解っているくせにあえて聞いてくるプラチナの意地の悪さを呪いながらも、アレクは身体の限界には耐え切れず、恥ずかしそうにプラチナから顔を背ける形で真っ赤になってぽつりと呟いた。
「・・ちょー・・・だい・・」
「解った・・・」
アレクの素直さに意地悪さは何処にいったのか、他には見せない溶けるような笑顔を見せると指をいっきにアレクの内から引き抜いた。
「や・・あっ・・」
内部をする感触にもアレクは熱のある声を上げる。
それと同時に無意識にアレクは自分の腕をプラチナの首に絡ませる。
「アレク・・・力抜いておけ・・」
一度触れるだけの口付けをし、頬撫でたプラチナの言葉にアレクは頭に霞がかかりながらもこくりと頷く。
その瞬間、アレクの中に先程の指とは比べられない質量のそれが進入してきた。
「ひぁ・・あ・・くっ・はぁ・・・・・」
今まで何度もされてさすがに絶叫を上げるということはなかったが、それでもアレクの表情と押し殺した声は辛そうだった。
「アレク・・・愛している・・」
アレクが楽になるまで、頬に額に顔中に、口付けを降らしながら囁き続けるプラチナの言葉を霞のかかった頭でも、それだけはしっかり理解できたアレクが恥ずかしそうに、けれどとても幸せそうな表情を見せる。
その表情を見て微笑むとプラチナは動き出していた。
「あっ・・あぁぁ」
自分の動きに嬌声を上げるアレクを見つめながらプラチナはアレクの奥の方を求めて動きを速めていく。
「はぁ・・あっ・・・ひゃあん・・・あぁぁ」
自分の動きに合わせて上がる甘い声、自分が白い肌につけた紅い所有の印、耐えられず揺れ動く黄金の髪、快楽に染まり涙で淡く輝く赤の瞳・・・
その愛らしい声、その白い肌、その黄金の髪、その赤の瞳、そしてその純粋で綺麗な心・・・
身体と何よりその心が、その全てがずっと欲しくて・・・
幼い頃に交わし、一度は記憶と共に忘れてしまったその約束をようやく果たせる事が嬉しくて、プラチナは思わず微笑んでいた。
「ん・・あぁ・・あああっぁ」
アレクが絶頂を迎え嬌声を上げて気を失ったあと、プラチナはやはりあの言葉を幸せそうに囁いていた。
『愛してる・・・』
「ん・・・・・」
「起きたか・・・?」
ようやく目を覚ましたアレクの頭を撫でてやると、まだ焦点の定まっていなかった赤の瞳が閉じて気持ちよさそうに笑った。
「やっぱり・・プラチナにこうされるの好きだなぁ・・・」
しみじみとその大好きなプラチナに頭を撫でられるという行為を彼の腕の中でしてもらっているアレクは満足そうにぎゅっとプラチナの腕を抱きしめた。
すると突然プラチナの表情が曇りだす。
「・・・すまない」
「・・・?」
「俺は・・あの時約束を・・・お前を守れなかったのに・・・お前はまた俺を・・」
プラチナが言葉を紡いでいる途中でアレクが彼の頬を軽く叩く。
それに驚いたように目を丸くしているプラチナに対し、アレクは頬を膨らませて怒ったような表情になっていた。
「・・・アレク?」
「俺がいつ守ってくれなんていったよ?!」
アレクの意図が掴めないままプラチナはアレクの言葉を聞いていた。
「俺は『ずっと傍にいて欲しい』っていたんだぞ!だから、『ずっと一緒にいよう』って、『大きくなったら結婚しよう』っていたんじゃないか・・・それを・・」
堪えられずに泣き出したアレクにプラチナが慌てだしたのは当然の事だった。
しかしアレクはなおも言葉を続けていく。
「守って・・くれなくても・・よかった、のに・・・傷つけても・・・ただ傍に・・傍にいて欲しかった・・・のに・・なのに・・どう・・」
自分の全ての想いをぶつけようとするアレクの言葉をプラチナは理解したというようにアレクを強く抱きしめた。
「解った・・もう、何があってもいなくならないから・・ずっと傍にいるから・・・」
「・・・・・だめ」
これで普通なら全てが収まるのだろうが、アレクはプラチナを涙目でにらんで納得のしてないという意思表示をする。
「・・・言葉だけじゃ納得できない。何か形としてその言葉の証拠が欲しい」
突然そんなことを言われてもどうする事も出来ず・・しかしこのままではアレクの機嫌を損ねてしまうと判断したプラチナは困ってしまう。
しばらく考えてふと・・・都会から何故か持ってきていたあるもののことを思い出す。
「ちょっと待っていろ」
ベッドから抜け出し、まだ整理していない都会から持ってきた品々をあさる。
そしてようやく目当てのものを見つけ、ベッド・・・もといアレクの元に戻る。
するとアレクの左手を掴んで薬指にあるものをつけさせる。
「これって・・・」
まじまじと見ると、プラチナがしてくれたそれは指輪だった。
ただし、本物ではなく紅い硝子の花のついた玩具の指輪・・・
「・・・・・昔、むこうの祭りで買ったんだ。何で『こんなもの買ったんだろう?』と自分でも思ったし、ジェイドの奴にも思いっきりからかわれた」
でもそれは全てこの時のためだったんだろうとプラチナは思った。
結果的にこうして役に立っているのだから。
「・・・ちゃんとしたものを用意するまでそれでとりあえずは・・・」
「ううん・・・いい・・」
それまでまじまじと玩具の指輪を見つめていたアレクが本当に嬉しそうにプラチナを見て抱きついてきた。
「これがいい・・・ありがとうプラチナ・・そして・・・おかえりなさいv」
その何よりも好きな笑顔にプラチナも嬉しくなり微笑み返し、2人は本当に幸せそうに笑いあった。
かつて今は枯れてしまった椿を2人で植え、約束を交わした幼い時のように・・・
あとがき
終わったーーーー!!
はい、これで一応は完結でございます・・・が!
まだ書けて内部分があるのでそちらは外伝の方でとう事になります。
プラチナの見ていた夢の内容とか、サフィルスとジェイドの関係(?)とか、そういえば全然プラムとロード絡ませてなかったという後悔とか・・・(すいません)
とにかく書きたいことがまだあるので・・
それにして今回もすいませんでした・・(土下座)
裏・・・裏シーンが・・・やっぱり・・・
本当にすいませんでした(超・土下座)!
お詫びついでですが、下にまたおまけと称した訳の解らないものがあります。
プラチナ「ところで・・・」
アレク「ん?なに?」
プラチナ「・・・相変わらず男言葉なんだな」
アレク「へへへ〜〜vだってプラチナの真似だもんvv」
プラチナ「・・・・・・・・・」
アレク「なんだよ?嫌なのか?!」
プラチナ「いや・・・別に・・・(そう言うと思っただけだ・・・)」
アレク「なら良いじゃんv」
プラチナ「ああ・・・」←激甘
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