Revenge
某日、某家、某人物の部屋に、その部屋の主と数人の人物が集まり、その全員がとてつもなく黒いオーラを発していた。
「・・・・・殺るよ」
一見笑っているように見えるのだが、良く見るとその瞳は笑っていない、寧ろ怒りに満ちている、この室内でもっとも黒いオーラを発している人物であり、この部屋の主でもある不二周助がはっきりとそういた。
「地獄に突き落とさないとね」
「それくらいは当然っスね」
「死ぬより辛いって目に合わせなきゃね」
「あんなことをしてただですまないのは、100%当然だ」
「ふしゅ〜〜」
不二の意見にその場に集まったレギュラー陣一同が、同意すると同時に各々の意見を告げる。
そこへ大石が清々しいくせに、不二の次に黒いオーラを背負って帰ってきた。
「どうだった?大石」
「ああ、しっかりと手塚に連絡は取れたよ?」
「で?なんだって」
「『油断せずに行こう』だそうだ」
その報告に、一部の者がガッツポーズをした。
「さすが、手塚だね」
「それでこそ俺たちの部長っス」
これで部長の許しも出たし、意気揚々と計画を進められると一同は思った。
もっとも、許しがなくても計画は続行であったが。
「しゅうすけ〜〜」
にこにこした笑顔で新たに部屋に現れたのは、不二の姉である由美子だった。
ただし、にこにこと言っても、それは不二と同意語での状態のにこにこだった。
「はい、これ。必要なもの全部揃えておいたからね」
「ありがとう、姉さん」
「いいのよ〜。これも全部は(未来の弟の)リョーマくんのためだもの。絶対成功させてね」
そう言って由美子が部屋を出て行った後、不二は皆に協力してもらい、一同の中心にそれがくるよう、由美子から託されたものを配置する。
「それじゃあ、始めようか。『切原赤也報復計画』を」
先日、リョーマがガット張りから帰ってきたとき、彼はぼろぼろで膝は真っ赤に晴れ上がっていた。
何があったのかを全員がかりで聞いても、「ただ転んだ」の一点張りだった。
だがそれがうそであるということは明白で、不二が独自のルートで掴んだ情報で、リョーマがガット張りの帰り、切原と出会って試合をし、彼によって膝を狙い撃ちされたということが明らかになった。
その事実を知って不二をはじめ青学のレギュラー陣が黙っているわけはなかった。
よって翌日の部活終了後である現在、不二宅に集まっての『切原赤也報復計画』・・・もとい、『不二を中心に皆の力を合わせて切原を呪ってしまおう計画』が敢行されることになった。
「あっ、でも始める前にちょっと」
今から早速始めようとしていた時、突然不二は携帯電話を取り出し、どこかに電話をかけ始めた。
これからという時にどこに電話をかけているんだと、全員が突っ込もうとしたその時、不二が呼んだ電話の相手の名前に驚いた。
「あっ、もしもし真田?僕、青学の不二だけど」
『はっ?』
電話の相手も突然のことで驚いているようだったが、それ以上に驚いているのは周りにいる面々だった。
なぜこれから呪おうとしている人物の身内(同部)に電話をしているのか、しかもそれ以上になぜ不二は真田の電話番号を知っているのか。
「ふ、不二・・・なんでこんな時に・・・・・っていか、何で真田の番号を・・・?」
「ふふっ・・・それはね。僕に知ろうと思って知れないことはないんだよ」
不二のその黒い笑みと言葉に、今回は一致団結しているはずの面々も背筋に冷たいものを感じた。
『・・・なんの用か早く言え』
電話の相手は相当痺れを切らしているようで、今すぐに切ってしまってもおかしくないようだった。
しかし不二はあえてそれを気にせず用件を簡潔なまでに伝える。
「実は君のとこの切原が僕の大事な大事なだ〜いじなリョーマくんに怪我させてくれてね。そのお返しにこれから君のところの切原呪うけど・・・良いよね?っていうか、問答無用でやるよ」
不二のその一言で、ぼとっと携帯を落とすまでに真田は驚き、周りにいた面々は叫び声を上げて慌てふためいていた。
「ふ、不二〜〜〜!なに、これから呪うおうとしてる相手の身内(同部)に宣告してるんだよ!?」
「そうっスよ!これでもし失敗したら」
「大丈夫だよ。例え本人に知らされても、呪い自体に影響はでないし、それに・・・・・」
まさしく悪魔の笑みとでも形容するように笑うと、不二は再び電話の先の人物に話し掛ける。
「解ってると思うけど、真田。もし、このことを切原に言ったら・・・・・」
『言ったら・・・なんだ?』
「切原や君だけじゃなく、立海大のテニス部員全員呪うからね」
『っ!!』
またもや電話を落としたであろう音、そして今回はおそらく冷汗をこれでもかというくらい流しているだろう。
「そうそう、付け加えていうなら、その場合の呪いは全国大会終了まで続くから・・・となると、君たちは今年は全国出られないってことになるね」
不二の言うことが本当なら、部員が全滅した状態で全国に行くことなど不可能。
切原1人ならまだしも、さすがにそこまでやるかと一同は少し引いていた。
「じゃぁ、そういうことなんで。肝に銘じておくことだね」
一方的にそう告げると不二は真田との交信を断ってしまった。
おそらく真田は現在、片手に電話を持った状態でただ呆然とその場に固まっていることだろう。
「それじゃあ、本当にはじめようか」
しかし一連のことで呆然としてひいている一同に不二の言葉など届いてはいなかった。
「あれ?皆どうしたの?」
確信しておきながら笑顔であえて尋ねるあたり、人が悪いといえるのかもしれない。
「ふ、不二・・・・・・さ、真田や他の立海のメンバーは関係ないんじゃ・・・」
「そ、そうだよ・・・いくらなんでも真田がかわいそ」
恐る恐る意見する菊丸と河村に対し、しかしそれでも不二はにっこりと黒い笑みを浮かべている。
「やだな〜。保護者の監督不行届きなんだから、これくらい当然だよ。少しは罪悪感に苛まれてもらわないとね」
不二のその発言に、「いつから真田は切原の保護者になった?!」という激しい突っ込みを一同は心の中で叫んでいた。
もちろん恐ろしくて声に出して言う勇気のる者は1人もいなかった。
「これで少しは自分の監督不行届きを反省して、この先同じことのなようにはならないでしょう」
その意見に、「それでも真田は哀れが」とまだ良心のある者と、「それもそうだ」と不二に納得してしまう者との半々に分けられた。
そしてそんな微妙な空気の中で、青学レギュラー陣による『切原赤也報復計画』はついに開始されたのだった。
「ちーっす」
自分のために不二の家で何がなされていたのか知らないリョーマは、その翌日の朝普通に朝練に顔を出していた。
「あっ!リョーマくん、おはよう。膝の具合はどう?」
昨日散々していた黒い笑みでなく、優しく微笑みながら不二はリョーマに真っ先に近寄り、そう尋ねた。
「おはよう・・・・・膝ならもう大丈夫だけど」
「ふ〜〜ん・・・・・どれどれ」
すでに着替えたリョーマの膝を触りながらよく見てみると、確かに腫れも引いていた。
「ちょっ・・・しゅ・・・・・不二先輩、触らないでよ!」
「ええ〜?別にいいじゃない」
「良くない!くすぐったいし・・・」
リョーマが部員の視線を気にして顔を真っ赤にして訴えかけても、不二は怪我の確認というよりも、セクハラをよりエスカレートさせていたのだった。
そしてその光景を眺めながら、「自分たちも昨日がんばったのに・・・」と心の中でなげくものの、2人の間に入り込んだら不二に何をされるか解らないといういう恐怖から、じっと耐えているレギュラー達がいた。
一方、青学で不二とリョーマがいちゃついている頃、立海大附属はというと・・・・・
「弦一郎。赤也は具合が悪くて当分家で安静とのことだ。なにかずっとうなされているらしいんだが」
「そっ、そうか・・・・・」
柳のその言葉に真田は思い当たるふしがありすぎて多少顔を引きつらせた。
「明日の決勝は赤也なしでのオーダーを・・・・・聞いてるか?」
「あっ、ああ・・・・・」
何も知らない柳の言葉に冷汗を流しながら相槌を打つ真田は、遠い目をしながら不二の思惑通り、多少罪悪感に苛まれていたという。
あとがき
現在、全国のリョーマさんファンを敵に回しているでしょうね、切原は。
私も敵に回してますよ、彼は(怒)
そんなこんなでこんなSSを書いてしまいました;
リョーマさんいじめるなっというのが最近の感想ですね。
立海大、真田さんと柳さんは結構好きなんですけどね・・・
特に真田さんは結構楽しいキャラだと思います。(WJ31号の例の新聞のコマで特に)
切原も初登場時のままなら良かったんですけどね・・・
そしてこの話、私的に不二先輩以外のレギュラー陣は灰色、不二先輩(と由美子さん)は真っ黒です;
こんな話を書いてしまって、すいません。