争奪戦
「御園生・・・・・・お前、先輩を立てる気にはならないわけ?」
「逢坂さんこそ・・・少しは遠慮したらどうですか?」
来栖と櫂・・・・・・・・
この2人の周りをなにやら恐ろしい空気が漂っていた。
バックには稲妻まで走ってまさに危機迫るといった状況になっている。
その様子を遠目に杏里たちはどうすることもできず眺めていた。
「ど、どうしよどうしよどうしよ?」
「クリストファー様・・・・・何もそこまでムキにならずとも・・・・・・」
「あの中に必然的にいる、翔が哀れですね・・・・・」
そう言って深い溜息をつくセナに同意するように、2人も溜息をついた。
ことの発端は今から少し前に遡る。
「翔くん〜〜、大丈夫?」
「ああ、大丈夫だって」
先程の戦闘中に翔はうっかりしていて、敵に利き手をやられ怪我をしてしまったのだ。
毒抜きは杏里の魔法でして貰ったから良いが、まだ腫れがひいておらず、利き手は包帯が巻かれ、使えない状況になってしまっている。
「これじゃあ戦闘なんてできないだろ」
「そうですね。丁度良い頃合だし、休憩しましょうか」
翔のことを特に心配していた来栖と櫂が翔には笑顔だが、他の者たちには何かの圧力をかけるような気配でそう言った。
「大丈夫だって。そんな心配しなくても」
「翔!そんなこと言ってもしもの事があったらどうするのさ?!」
「そうだぞ!他は良いとしても、お前に何かあったらどうするつもりだ?!」
あまりに2人の勢いが凄いので、その勢いに押されて翔は首を縦に振ることしかできなかった。
他の3人としても、無理な戦闘をさせるわけにはいかないので、2人には賛成だったが、櫂の言い方はともかく、来栖の言った内容がとても悲しくなってきた。
休憩するということで、ついでに昼食を食べてしまおうということになって、弁当を広げたのはいいが、そこであることに気が付いた。
翔は現在利き手が使えない。
ということは、自分でご飯が食べられない状況にあるのだ。
「あはは・・・どうしよう」
苦笑いを浮かべる翔の左右それぞれ横座を陣取っている2人の目が獲物を狙うかのように光ったように杏里、シオン、セナの3人には見えた。
「翔、この出汁巻き卵おいしいよ」
「羽山、この唐揚げ食ってみろ」
左右からそれぞれ、食べ物を差し出され、しかもそのまま自分たちの箸から食べろと言わんばかり(この状況ではそうするしかないが)の2人に翔はどうしようかと少し顔がひきつる。
しかし、そんな翔に気付かず、当の2人はそれぞれ自分と同じ行動に出た邪魔者を互いに威嚇し始めた。
「どういうつもりですか?逢坂さん」
「それはこっちの科白だぜ、御園生・・・」
そう言ったまま睨み合う2人の間に激しい火花が散りあい、他とは違う空間が生まれ始めていた。
杏里たち3人は危険を察して少し後ろにさがったが、震源地に直でいる翔はたまったものではないらしく、少しばかり2人のやり取りで顔が青くなっている。
こうして、2人の醜い「どちらが翔にご飯を食べさせるか?」の争いが始まり、話の最初に戻るのである。
そんな凄まじい空間の中、突然来栖が箸を置いて立ち上がった。
「どうやら・・・・・お前とは1度決着つけなきゃいけないみたいだな・・・」
「・・・・・そうですね。僕もそう思いますよ」
櫂までもが立ち上がり、互いに何か黒い笑顔をたたえている2人の手にはそれぞれの武器が握られていた。
「ちょっ、ちょっと2人とも・・・・・」
「翔。すぐに終わるから少し待ってて」
「お前が負けてな・・・」
「逢坂さんでしょう?」
翔の静止の声も虚しく、2人はさらに恐ろしい空間を広げ、より恐ろしくしながら勝負を始めてしまった。
すでに気力もつきかけているような哀愁を漂わせる翔の背中を見つめながら杏里が少し涙目になっている。
「翔くん・・・・・かわいそ・・・」
シオンはウィンフィールドの未来を憂いて遠い目をしながら主とその従弟の醜い争いを見ている。
「・・・・・・クリストファー様」
そんな中1人、セナだけが冷静に何かを思案しているようだった。
「とりあえず、今のうちに翔にご飯を食べさせましょう」
そう言ってすくっと立ち上がると翔の傍まで近付いて行く。
そして、右手にもつ箸には春巻きが存在している。
「翔、口あけてください」
「えっ?!」
目の前のあまりの光景に先ほどのことを忘れ、半ば呆けながらも素直にセナのほうを向いて口を開く。
その口の中に、セナは春巻きをいれ、必然的にそれを翔は噛んで飲み込む。
ようするに食べることになった。
「それじゃあ、次はどれが良いですか?」
世話を焼いてくる翔はあの2人の現在の行動でもうすでどうでもよくなってしまったのか、大人しくセナに食べさせてもらうことにした。
「じゃあ、その餃子」
もう早く食べてしまおうと、次々に料理を指示して、セナに食べさせて貰っている翔だったが、その判断が新たな悲劇を生むことになるとは当然解るわけもなかった。
「・・・・・・っ!おっ、おい・・・翔、セナ!!」
ずっと遠い目をしながら2人の争いを見ていたシオンが、2人の矛先が変わったのを見て顔を青くさせながら翔とセナを呼んだ。
先ほどのシオンの言葉で気が付いてそれを見たのか、杏里も隣で固まっている。
「・・・・・水落先生」
「・・・・・セナ」
よく見て見れば、先ほど2人で争っている時にすら出していなかった翼をちゃんと出した状態の2人がもの凄い形相でセナを睨んでいた。
そしてこの後、翔をうまく避けて決まった来栖と櫂の必殺技によってセナがどうなったのかは目撃者しか知らない。
その攻撃の破壊音は森の奥にいる木の精霊とその守番にまで聞こえたという。
あとがき
初Angel's FeatherSSがこれってどうでしょう・・・;
意味なし、落ちなしです。
セナさん及びセナさんファンの皆様すいませんでしたm(_ _;)m
私的に彼は好きです(本当ですってば!!)
この話のセナさんは、翔が好きとか言うのではなく、単にお兄ちゃんが弟の世話を焼きたがる感覚だと思ってくだされば結構です。(セナ×翔も好きですが!!)
ちなみに最後でおわかりかと思いますが、これは木の精霊をゲットするために森の中を探索している時という設定です。