Such a Morning




なんとも愛らしい寝顔を惜しむことなく晒しながら、穏やかな寝息をたて、未だ幸せそうに夢の中にまどろんでいる小さな少年が1人いる。

不二家次男(末っ子)・梓真(しま)。
顔と髪の色は母親似。
瞳の色は父親似。
性格は誰に似たのかはまったくの不明。(メイド時代の母か?)
純粋培養、万年素直、人を疑うことをしらない。
好きなものは大きなぬいぐるみと家族全員。
笑顔が眩しい不二家のアイドル・7歳。

それが今寝ているこの子である。
そしてこの志摩を毎日起こすことを日課としている、というよりも意地でも他の誰にも譲ろうとしない少年が、今日も今日とて意気揚々と上機嫌に志摩を起しにやって来た。

不二家長男(2番目)・夜有(よう)。
顔と髪は父親似。
瞳の色は母親似。
性格は父親に酷似したとてつもない腹黒。
弟命、極度のブランコン、気にいらない相手には容赦ない。
好きなものは弟一筋。
笑顔が怪しい不二家の要注意人物・7歳。

「梓真〜、朝だよ〜〜v」
呼びかけながらゆさゆさと体をゆすると、いやいやと駄々をこねるように起きることを半ば拒否する。
その可愛らしさに毎朝のことながら顔を緩ませる夜有は、できればこのまま寝かせておいてあげたいなどと思ってしまう。
しかしここで起きなければ学校に遅刻するし、しなくても朝ご飯は抜きになるだろうということを考え、大事な弟がお腹をすかすなど絶対に阻止しなければならないと判断し、ずっと寝顔を堪能していたいという欲求を抑えてもう1度梓真を起こしにかかる。
「ほら梓真、起きないと朝ご飯抜きになっちゃうよ」
「うにゅ・・・・・・」
「それに今日は梓真の大好きなホットケーキだよ」
「ほっと・・・けーき・・?」
その大好物の名前に反応したのか、眠たそうに目をこすりながら梓真はようやく起きた。
しかしまだ少し眠たいのか少し寝ぼけているようである。
そんな弟の寝起きも「いつものように可愛いv」と思っていながら、これもいつものように夜有がテキパキと梓真の着替えを手伝っている。
この寝顔から寝起きの顔、着替えの手伝いという行程を独り占めいたいがために、他の誰にもこの役を譲ろうとしないのだった。
「あっ、おにいちゃんおはよう」
着替えがすべて終わってようやく目が完全にさめ梓真は、満面の笑顔で夜有に朝の挨拶をする。
これも毎朝のことながらその眩しすぎる笑顔にそのまま萌え倒れ(?)しそうになる夜有だが、梓真の前でみっともない真似は見せられないと、なんとか平常心を保つのも毎朝のこと。
「それじゃあ、行こうか?梓真」
「うん!」






「梓真ちゃん、おはよう〜。今日も可愛いわねv」
にっこりと穏やかに微笑んだ少女が手を繋いで降りてきた2人を嬉々としてみつめる。

不二家長女(1番上)・結莉(ゆり)。
顔はどちらかといえば母親似。
髪の色は父親似。
瞳の色は両親の色を混ぜたような色。
性格は父親以上に腹黒。
策略好き、不敵で無敵、敵と判断すればもれなく一掃。
好きなものは弟達。
笑顔が末恐ろしい不二家の天然危険物・7歳。
(ちなみに姉弟は3つ子)

「おねえちゃん、おとうさん、おかあさん、おはよう」
にっこりと満面の笑みで挨拶する梓真(しかも現在お気に入りの熊のぬいぐるみを抱きかかえている)に、梓真にべた惚れの夜有だけでなく、家族全員がノックアウトされそうになった。
「おはよう、梓真」
「おはよう」
あくまで心情を隠し、平静を装うのも毎日のことである。
「夜有、梓真起こしてくれてありがとう」
「ううん、だってこれは僕の仕事だから」
微笑みながら穏やかにそういう夜有であったが、じっと視線を送っている父親に対する牽制をこめた意味での言葉だった。
その証拠に「僕の」部分が強調されていた。
梓真を起こす役が回ってくる機会を父親が淡々と狙っていることを夜有は知っているのだ。
普通なら強行に変わると言い出しそうな父親なのだが、そこは別のところで牽制している人物がいるため事実上不可能なのだ。
「・・・お父様。何をそんなに見ていらっしゃるのですか?」
「・・・なんでもないよ。結莉」
にっこりと微笑む結莉の表情はとてつもなく黒くて、さしもの父親ですら押し負けるほどのものであった。
結莉のこの腹黒さと恐ろしさはすでに父親を超えていた。
「なにか対策を考えなければ」と日夜頭を悩ませる父親と、「どうしてこう育っちゃたんだろう・・・?」と毎日のように自問自答している母親がいることも、もちろん結莉は知っていた。
ちなみに結莉は夜有が梓真をお嫁さんにすることを大応援している。





「ごちそーさまでした♪」
大好物のホットケーキとココアを完食し、梓真はまたも満面の笑みを浮かべる。
それにまた同じことが繰り返されたことは言うまでもない。
朝食が済むと子供たちはランドセルを背負って学校へと出発しようとしている。
「忘れ物ない?」
「うん」
「大丈夫」
「ご心配なく、お母様」
そう言ってこれも毎朝の通りのやり取りを済ませる。
「「「いってきまーす」」」
そして子供達は今日も仲良く、元気に学校へと出かけていった。






「・・・ねえ、周助」
「ん?なに、リョーマ」
食器を洗いながら周助に話し掛けたリョーマは少し間を空けた後口を開いた。
「結莉・・・どうしてあそこまでなっちゃたんだろうね?」
「・・・さあ?さすがの僕も結莉のことだけは」
遠い目をしながら自分をも時々恐れさす愛娘に多少溜息がでる。
「子供は親をみて育つっていうけどさ・・・・・周助よりも腹黒くなっちゃてるからな・・・・・」
リョーマのその言葉にぴくりと周助は反応した。
「・・・へ〜〜、リョーマは僕のこと腹黒いと思ってたんだ」
「あっ・・・・・・」
周助のその言葉でまずいと思ったリョーマが恐る恐る振り返ると、そこには恐いくらい満面の笑みを浮かべた周助が何時の間にか音もなくすぐ傍に立っていた。
「しゅ、周助・・・お、俺、まだ洗い物の最中」
「そんなの後で僕がいくらでもしてあげるからvねえ、リョーマ・・・」
「な、なに・・・?」
「子供増やしたくない?」
その言葉に危機感を覚えていたリョーマは、「やっぱり!」と思わず悲鳴に近い声で叫んでしまいたくなった。
「え、えっと・・・俺は・・・・・」
「増やしたい?それじゃあ、早速始めようか♪」
「って、っちょ・・・・・!」
言うが早いか、周助はリョーマを抱えあげて寝室へと向かった。



「結婚前に着てたメイド服、まだ取ってあるからそれ着て久々にしようか?v」
「い、いや〜〜〜〜〜〜!!」






あとがき

え〜、「Master and Follower」のだいたい8年後だと思ってください。
裏の本編を読んでいなくても大丈夫だと思いますが(多分)、読んでいる方が理解できると思います。(別に裏を見るよう薦めているわけではありません;)
2人兄弟とか結構多いので、3つ子設定にしてみたんですが、どうでしょうか?
ちなみにこの不二家(笑)での勢力図は、1:結莉、2:周助、3:夜有です。
リョーマさんと梓真は蚊帳の外というよりも、被害に合わないので除外・・・(いや、ある意味リョーマさんはあってるけど;)
不二先輩を下の名前のほうで書いているのは、ちょっとした混乱を避けるためです。
だって、この話だと全員苗字「不二」だから(爆)
そうそう、リョーマさんの一人称ですが、子供たちがいる前では「私」、いない時は「俺」になりますので。


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