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2008年度講演会

早稲田大学現代文学会企画 2008年度講演会

虚構の美がせまってくる
―芸術のanalysis、創作のdynamics―



芸術作品には何らかの価値があるとされています。その価値、つまり芸術的価値が何に由来するのかは、現在でも哲学のある分野では問題となっています。また創作者たちは、さらなる芸術的価値の高みを目指して創造を続けています。
今回私たちは、芸術作品の虚構性を考えることで、芸術的価値の探求を試みたいと思います。芸術的価値を「虚構の美」と捉えるとき、我々に要請されるものはなんなのか。ふだんから「虚構の美」との接近を経験しているであろう論者2人をお招きし、芸術作品がもたらすものについて、縦横に語っていただこうというのが、今回の講演会の趣旨です。

論者のお1人は、山形大学教授、清塚邦彦(きよづかくにひこ)氏。グライス『論理と会話』など言語哲学の重要文献の精力的な翻訳でも知られる清塚氏は、芸術作品の持つさまざまな性質について、フィクションという概念に着目し、分析を続けておられます。文学作品のみならず、絵画作品や写真作品の虚構性をも論じている氏の講演は、芸術作品の受容者すべてに、新鮮な驚きを与えてくれることでしょう。
もうお1人は、小説家、諏訪哲史(すわてつし)氏。『アサッテの人』で群像新人賞と芥川賞とをW受賞された諏訪氏の実験的にも見える作風は、多くの文学者に衝撃を与えたはずです。今回は、自らが優れた批評的読者でもある諏訪氏が、どのようにご自身の批評眼にかなう作品を執筆しておられるのか、その相克の現場からのお話をお願いしております。

分析美学者と小説家と、という取り合わせの講演会は、そう多くはありません。お2人には当日、相互の講演ののちに討論も行っていただく予定です。芸術作品について考えたことのある皆様のご来場を、現代文学会では心よりお待ちしております。

■講演者紹介
  • 清塚邦彦(きよづかくにひこ) 1961年生まれ。山形大学人文学部教授。専門は言語哲学、哲学的記号論。主要な論文に、「像と模像」(「東北哲学会年報」、1999年)など、また訳書に、P・グライス『論理と会話』(勁草書房、1998年)、D・デイヴィドソン『主観的、間主観的、客観的』(共訳、春秋社、2007年)などがある。
  • 諏訪哲史(すわてつし) 1969年名古屋生まれ。國學院大學文学部哲学科卒業。『アサッテの人』(講談社、2007年)で第50回群像新人賞、第137回芥川賞を受賞。ほかに『りすん』(講談社、2008年)
■講演会対策勉強会

■開催日時・会場
2009年2月7日(土) 開場14:00 開演14:30
早稲田大学 学生会館 地下2階多目的ホール
※入場料無料

■アクセス
JR山手線高田馬場駅より徒歩15分
東京メトロ東西線早稲田駅より徒歩5分