※R18
優等生失格 03
「青峰くん、今日部活は?」
「行かねぇ」
そっけなく青峰が答えるとはそれ以上追及しなかった。言い合いが始まることもなく青峰は椅子から立ち上がる。本当はそれ以上を追究したいも空気が読めないわけではないし、何よりも今はまだ自分がその部分に踏み込む段階ではないのだとわかっていた。
立ち上がった青峰を見ては昨日初めて経験した放課後デートのようなものの内容を思い出し、薄らと頬を赤く染める。
中学生の頃に数回だけ行ったことのあるゲームセンターとは何もかもが違って見えた。何より隣にいるのが青峰だというだけでその空間が特別に思えた。
遊び方を知らないは眺めているだけだったがただぐだぐだと過ごす時間は新鮮で、そんな彼女を青峰は全く気遣いもしないのだがそれが返ってには心地よかった。
「オイ、生きてんのかよ」
「!?わ、ご、ごめんなさい」
「何一人でニヤニヤしてんだよ、気持ち悪ぃな」
口を半開きにさせながら一点を見つめるの頭を横から人差し指でぐいっと押した青峰は肩に鞄をかけていて、目でさっさとしろと彼女に訴えかけている。
そのさっさとしろのサインに気付くことなく、青峰くんさようならと見送る気満々だったは彼に暴言を吐かれてもえへへと笑って誤魔化すだけで、一向に動く気配すら見せなかった。
もちろんその態度に青峰が気をよくするはずもなく、長い脚でのふくらはぎを軽く蹴ってから顎で出口を指す。
「いたっ!」
「この程度で痛いわけねーだろ。ほらさっさとしろ」
「どういうこと、どこか行くの?」
「別になんも考えてねぇけど。お前今日何か予定あんの?」
不満と言うよりもきょとんという顔をされて、はそこで初めて今日も青峰と自分が一緒に帰るのだということに気付いた。
恐らく青峰の口ぶりだと今日に限らずお互いに予定の無い日はこういう流れになっているのだと知って、驚きと同時に自分なんかが青峰の放課後を毎日のように独占できることにじわじわと恥ずかしさが襲ってくる。
恋人未満友達以上ってすごい……!
これが恋人未満友達以上の当たり前なのかはにはわからないし、青峰もそんなことは知らなかった。
ただ青峰からすれば恋人未満友達以上のお付き合いとは言えが暇つぶしになることには間違いない。昨日の放課後の彼女とのやり取りの中で煩わしさも感じなかったので、丁度いいと前向きに捉えていた。
たまに遊んでいる女たちはいろんな意味で魅力的だったが、煩わしさの面からすればのほうが圧倒的に扱いやすそうに思えたし単純でわかりやすい。現段階で連絡先すらも交換していないのには何も言ってこず、青峰はこんなんでいいのかと思いつつも彼女との関係の緩さに甘えきっていた。
「すぐ片付けるから!」
「おーおー、はやくしろ」
従順なのはいいことだなと青峰が小さく呟くとキラキラ瞳を輝かせながらが青峰を見つめてきて、こんなことで喜んでいる彼女に溜め息を吐いた。
* * *
特に何の話もしないまま二人は校舎を後にした。は青峰の歩く速度にやや小走りで着いて行きながら、時々彼のつま先から頭のてっぺんまでをじっくりと観察する。
自分とは全く違う日本人離れした体格はいつ見ても格好いいとしか言い表せず、好んで本を読んでいるはずのの語彙力は青峰に関しては何の意味もなさなかった。口に出しているわけではないのでその語彙力を馬鹿にされることはなかったが、それでもは己の中でもっと青峰を的確に表現できないかと格闘している。
必死に青峰の歩くスピードに追いつきながらも心の中でもんもんと考え事をしていると、不意に自分の右手に彼の左手が触れた。
その結果脳内での対の格闘は両者が試合会場の場外に吹き飛ぶという形で幕を閉じた。青峰の行動を全く予想していなかったはあまりの動揺に手を引っ込める。
手を繋ぐことを拒否された青峰は立ち止まり、同時にもその場に立ち尽くした。
「ち、違うの、これは……」
「んだよ」
「青峰くんのこと格好いい以外にね、何か表現できないかなって考えてたらね、その……」
「ハ?」
「……頑張って歩くから、私のこと嫌いにならないで」
こいつ今めちゃくちゃ重いこと言いやがったな。
だんだんと尻すぼみになっていくの言葉に、青峰はまた意味のわからないことを言い出したぞと呆れつつも触らないでという拒否ではなかったことに安堵する。溜め息を吐いてからの右手を取ったがこうなると無理やり引っ張って歩くわけにもいかず、歩調を合わせながら目的地を目指した。
は目的地も何も知らされてはいなかったが頭の中の全ての集中は自分の右手に集まっていて、今度は右手と青峰の顔を交互に見つめる羽目になる。
「……青峰くん、これからどこに行くの?」
「オレん家」
「え?」
「だからオレん家」
「え?」
「いい加減聞こえてんだろ」
恋人未満友達以上なのに二日目でもうお家連れて行ってくれるの……?
無表情で歩く青峰にそう尋ねたかったがその言葉は飲み込み、今日は課題もたくさんあるし高校生なんだからお小遣いだってたくさんはないものねと自己解決した。どこで青峰と時間を過ごそうと問題ないし、自分と一緒に時間を過ごしてくれるだけで嬉しいと思っていたは家に招かれることは相手の好意だとしか考えていない。
質問してから十数分で「青峰」と表札のかかった家に到着し、青峰は制服のポケットから鍵を取り出すとを家に招き入れ、二人はそそくさと青峰の部屋へと向かった。
家に人はおらずしんと静まり返っていて、何と挨拶をするべきか迷っていたは小さく胸を撫で下ろす。青峰の部屋の前まで連れてこられた後彼が一人で階段を下りて行くのを見届けてから、誰もいないとわかっているのにノックしてから部屋の扉を開けた。
多少散らかってはいるものの物は少なく、散乱しているのは衣類と雑誌が多い。机には教科書が綺麗に並べられており、もしかして全く使ってないわけではないよねと怖くなりながらもチェックするのはやめておいた。
散乱している雑誌はグラビア雑誌が多く、まじまじとグラビア雑誌を見たことのないは一冊手にとるとペラペラと捲り始める。
すごい!おっぱいがすごい!青峰くんこういうの好きなんだぁ……。
またもや語彙力を失ったの目はグラビアアイドルの胸元に釘付けで、軽蔑よりも完全に興味のほうが勝っていた。次々にページを捲っているとお茶とグラスを手に部屋に入ってきた青峰が一瞬驚いた顔をしながらも自分一人でお茶を飲み始める。
「何勝手に漁ってんだよ」
「漁ってないよ、そこに置いてあったやつだから」
「……そんなもん見たって面白くねぇだろ」
「ううん、面白い。私お姉ちゃんしかいないし、こういうの初めて見たよ」
たまに部屋に無断で入ってくる桃井がこんなものを見ようものなら呆れるのは目に見えているが、彼女はこういうものに慣れてしまっただけでよく思われていないのは青峰も気付いていた。
てっきりもこんなものを見つければ騒ぎ出すのだと思っていたし、真剣な顔をしながらグラビア雑誌を見る姿を予想できるわけがない。
「よくそんな真面目な顔して見てられんな」
「青峰くんも学校で真面目な顔して雑誌読んでるよ……ねぇこれ見て、おっぱいがすごい」
がグラビア雑誌から顔も上げずに真面目な声でそんなことを言っている間に青峰はスウェットに履き替える。雑誌を指差しながら見せてくるを見て、頭いい奴の考えてることはよくわかんねぇなとお決まりの感想を呟いた。
青峰が家にを招いたのは、課題を教えてもらうよりももっともっと邪な理由がある。
恋人未満友達以上の関係になって二日目にしてもう次の次の段階に進んでしまおうと、自分に惚れてるんだしちょろいだろうと下衆なことを考えていた。
先程手を繋いでみたのだって彼女の反応を見るための手段の一つだ。あそこで触らないでと拒否されでもすれば自分の考えているようなことにまで発展させるのは難しい。いくら自分に惚れている相手だろうと無理矢理犯すようなことをすれば後々面倒なことになるのは青峰にも想像できた。
手を繋いだときの反応を見る限り恐らく上手く頼めば拒否されることもないだろうし最終的には合意に至るだろうとは思う。そういう意味ではやっぱりはちょろかった。
それでも今日、彼女とどうこうできるかという点においてはあまり期待はできない。本人にも期待できないうえにグラビア雑誌に恥ずかしがる素振りも見せない彼女を見て、青峰の性欲がみるみる萎んでいってしまったのだ。
少しくらい恥じらう姿を見れば煽られるものがあったかもしれない、しかし男よりも真面目にグラビア雑誌に食いつく姿は性的な魅力よりも意外性のほうが勝ってしまってただ面白いだけだった。
簡単に家に上がってくれたのは好都合だったが、青峰の気持ちが盛り上がっていないのならどうしようもない。
「それ持って帰ってもいいぜ?」
「流石にそれはちょっと」
制服のカッターシャツを脱いだ青峰がTシャツを探しながらに問うと、顔を上げた彼女とばっちり目が合った。
まさか上半身裸で青峰が部屋の中をうろついていると思いもしないはグラビア雑誌を見つけたときよりも目を見開いて、その後すぐに顔を背ける。
女のおっぱいはガン見するくせに男の上半身は見れねーってか。
よくわかんねぇなと思いながら相変わらずお目当てのTシャツが見つからない青峰は上半身裸のままに近付き、挑発的に声を掛ける。
「あからさますぎんだろ」
「着替えは見ちゃいけないかな、って……」
「気にしねぇよ」
ゆっくりとが視線を戻すとすぐ近くに青峰がしゃがんでいて、それに驚きつつも少し距離を取ってから彼の上半身をじっくりと観察した。
どうするのかと青峰が黙って見ていればがおずおずと右手を出してきて二の腕に軽く触れる。
「すごい、筋肉って本当に固いんだね」
「平野には無縁だろ」
「うん、無縁だと思う」
筋肉の部分を軽く握るように揉まれたり優しく撫でられたり、触られるのが嫌なわけではなかったが意外な行動に潜んでいた青峰の性欲が少しずつ見え隠れし始めた。
は先程のグラビア雑誌を見ている時のようにすごいすごいと興味津々で、どんなふうに鍛えたらこうなるのかと純粋な瞳を青峰に向ける。
やりとりをしながらも相変わらずは青峰の腕に触れていて小さな手から伝わる体温に彼は身震いした。完全にその気になってしまった青峰は質問にそっけなく答えつつ、この後どうやって行為に持ち込むかということや避妊具の隠し場所のことしか考えていない。
「……!つい夢中になっちゃった……ご、ごめんね」
「別に」
「課題しなきゃね。そういえば、上には何も着ないの……?」
「もういらね。つーか今度はお前の番だろ」
「?私はもう十分だけど……」
「今度はオレが楽しむ番だっつってんだよ」
青峰の手がブラウス越しにの乳房をやわやわと揉むと彼女は声を発することもなく固まった。気持ちいいとか気持ちよくないとかそういう感覚ではなく、今起こっていることと今から起ころうとしていることに頭がついて行っておらず、拒絶もできなかった。
自分と青峰は恋人未満友達以上なんだからこういうことをするのも当然なのか?と頭の中で理解しようにも、こういうのってセフレって言うんじゃとかまだ恋人未満友達以上とか言い出して2日目なのにこういうことをしていいのかとか、そういえばキスもしてないよと伝えたいことがありすぎて頭の中でこんがらがる。
が何も言わないことをいいことに青峰はブラウスのボタンを外し終えていて、イメージ通りの白い控えめなレースのあしらわれた胸を見て思っていたよりも大きいという感想を抱いていた。
床に座っていたを抱き上げベッドに座らせてから青峰は彼女のブラウスを床に投げ捨てる。まるで人形のように動かなかったの顔がみるみるうちに赤くなっていって、ベッドの上にあった布団を手繰り寄せながら青峰を見上げた。
「付き合ってないのに、こういうことってしてもいいのかな……?」
「人によんだろ」
「そうかもしれないけど……」
「家に呼んだ時点では何も考えてなかったのに、お前がペタペタ触ってくっから気が変わった」
「え、あ、ごめん……」
家に呼んだ時点では下心はなかっただなんて全くの嘘だが後半は事実なので青峰には何の罪悪感もなかった。
相変わらずのことはちょろいと思っているし、処女を相手にするのは初めてだがなんとかなるだろうと気持ちではなく身体の心配しかしていない。
「でも、私……」
「うっせーな、平野が悪いんだろ。おら」
「!?っわ!?!?」
青峰がの手を掴み握らせたのは下着越しの肉茎だった。
もちろん初めて触るそれに大騒ぎしながらもリアルな形とサイズ感、体温に一段との顔が赤く染まる。青峰の身体をこんなことにしてしまった罪悪感でいっぱいになりながらも、最後に一つだけとささやかなお願いをした。
「あの、えっと、す、する前にね、キス、して欲しいなって……」
「ん」
「……ありがとう、ございます」
としては何としてもこの順番だけは死守したい気持ちで告白したときよりも何倍もの勇気を振り絞って告げた言葉だったが、青峰はそんなことかと言わんばかりにキスする。
青峰がを押し倒し、彼女はぎゅっと目を閉じて顔を横に向けた。
「もっと力抜けって」
「っむり、痛いよぉ…………お願い、これ以上は、もう……」
「今我慢しねぇと次も痛ぇぞ」
「!?そ、そん、な……!」
避妊具を被せた青峰の肉茎は先端だけが膣口に刺さっている。は半泣きになりながらもイヤイヤと青峰の下で首を振った。
痛いものは痛いと訴えられたところで青峰にやめるつもりはなく、先程から乳房を揉んでみたり陰核をいじってみたりと試行錯誤を繰り返しながらようやく今の位置に至っていた。
次はどうしようかと考えを巡らせつつの唇をべろりと舐めてから口付けて舌を押し入れ、彼女の舌を絡めとるようにして口内を攻める。酸素を求め小さく口を開けていたの唇はいつもよりも魅力的に見えて何度でも口付けたくなった。
緊張で肉茎を一層締め付けていた粘膜が口付けの快感のせいか締め付けの力を弱める。そこを青峰は一気に、半ば強引にねじ込むようにして先へと進めた。
「っぁああ!痛い、だめっ、いたいっ!」
「……っは、少し、待っとけ。マシんなる」
「……うん、うん……ぐすっ」
あまりの痛さにぐずりだしたの頭を片手で撫でてから再び口付ける。口付けの角度を変えて繰り返しながら、ゆっくりと肉茎の抜き差しを繰り返した。
今まで遊び慣れた女の相手しかしてこなかった青峰はやきもきしながらも、徐々に可愛らしい声を上げ始めたを見て満足そうに笑う。
「んっ……!」
「お?」
「あ、おみね、く……あっ、やぁ……!」
「やっと余裕、出てきたのかよ」
「よゆ、なんてっ、そん、な……!」
あきらかにに余裕はなかったものの接合部から聞こえてくる音が少しずつ厭らしさを増して、痛さよりも気持ちよさを感じ始めているのが分かった。
彼女の陰核をつまみあげぐいぐいと押しながら自らの肉茎で中を突き上げると声が一段と大きくなり、それに気を良くした青峰は今度は肉茎の先端で膣の入り口を浅く擦る。
「あっ、ふあっ!?やっ、それ、だめっ、ん……!」
「はっ、何だって?」
「い、いやぁっ、だめっ、だめ、あっ、あお、みねく、ん、んん……!」
乳房に齧り付くようにしながら舌を這わせればまた締め付けがよくなり、青峰は身を捩ろうとするの腰を掴んで入口から奥へと一気に貫いた。悲鳴にも似た声を上げながらは必死に酸素を求めて口を開けるがその間も青峰は律動をやめることなく、がつがつと腰を打ちつける。
「はぁっ、あっ、あぁあ、やぁっ……!」
「お前、やだしか、言わねぇなっ……!」
「だって、だってぇ……」
自分で言葉を選んでいるわけではないのに勝手にそう口走ってしまうんだから仕方がない。青峰に指摘されて恥ずかしくなったは声が出ないように、両手で自分の口元を覆った。
「バカ、何してんだよ」
「んんっ……!だって、やだって言っちゃ……あっ、やぁっ!」
「本当に、バカだなっ……!」
「ふぁあ!んあっ、あ、や、んんっ……!」
口元を覆った手は簡単に青峰によって払われてしまう。それでも再び口元に持っていこうとした手は今度は彼の長い腕によって纏められ、頭上に縫い付けられてしまった。口元どころか顔や胸元も隠せなくなって余計に羞恥心が込み上げてくる。
「はっ、いい眺めだな」
「おねがいっ、手……はなしてっ……!」
「無理な相談してんじゃねーよ」
「あおみねくん、ず、ずるいっ!」
「何とでも言えっ……!」
「ぃやぁっ!んん、……んっ、あっ、あ、なん、か」
「あ?どしたっ?」
「だめっ、あっ……だめっ!あ、あっ、あ、ん……やぁああっ……!」
「……っは、くっそ」
きゅうきゅうと粘膜が纏わりついてきたかと思えば中がひくひくと痙攣し出し、は絶頂を迎えた。肩で息をするの上でもう少し耐えるつもりだった青峰はの絶頂の締め付けに限界を感じ、ほぼ同時に射精する。
わかっていたつもりだったけれども、いつもより何倍も疲れた。自分なりに気を遣ったし、ずっと泣かれては困るので普段他の女を抱いているときよりもかなり優しく接したと思う。それが関係したのかいつもよりも満足感と強い快感を得られたような気はしたので、結果的には良かったし得をした気分でいた。
纏わりつくような倦怠感のせいですぐに避妊具の処理を行う気になれず、彼女と繋がったままベッドに横になる。
「……私、明日、生きてるかな」
「……こんなことで死んでたまるかよ」
「……帰って勉強したくない」
「たまにはサボれ」
こんな時にも勉強のことを考えている真面目なにキスすると、膣が僅かに反応する。
「……締め付けんなよ、もう1回ヤりてぇのか?」
「ご、ごめんなさい……」
「お前やだしか言わねーな」を言わせたかった話。
2018/07/05