レグルスは毎年、この日になると花をくれる。
それは小さなカスミソウの花束だったり、蘭の鉢植えだったり、大輪のチューリップを一輪だけだったりして、 “花”という共通のものでもバリエーションに富んでいた。わたしは彼の、そういう律儀で細やかなところが、 とても好きだ。きっとシリウスだったら、毎年同じカードを渡すだけなのだろうな、とも思う。



「ありがとう、レグルス。今年は薔薇なのね」
「きみは薔薇が好きだから」


そう言って、レグルスはわたしに薄い桃色の花束をくれた。
芍薬のような形に、果物のような甘い香り。これは何という名前なの?とわたしが尋ねると、 レグルスは少し考える素振りをして、それから「ロザリンデ、だったと思う」と答えた。
自分で選んだのだから、覚えていてよ。と、わたしは笑う。


「少し待っていて、いま紅茶を淹れるから」
「待って、。その前にもうひとつ」


レグルスはわたしを制し、ローブのポケットからしゃらりとした細長い鎖を取り出した。 そしてそれをそのまま、動きを止めたわたしの首にかける。目線を下げると、親指の爪ほどの大きさの ローズクォーツがペンダントヘッドで揺れているのが見えた。


「レグルス、これ、」
「セットで贈ると良いと店主に勧められたから。安物だけど」
「そんなことない、とっても綺麗!」


暖炉からの明かりを吸い込んで、わたしの胸元で石が輝く。レグルスは少しだけ口許を緩ませて、 似合うと思ったんだ、と言った。