「ホワイトデーだよ、フレッド、ジョージ!」


がそう言って両手を差し出すと、フレッドとジョージは互いに顔を見合わせて首を傾げた。


「…我らがマネージャー殿はどうしちまったんだ?」
「まさか落ちてきたクァッフルで頭でも打ったとか?」
「それは大変だ!今すぐ医務室に担ぎ上げて行かなければ!」
「もう!先月教えたのにそうやってしらばっくれて!」


まるでが変なことを言っているかのように振舞う二人に、は頬を膨らませた。

先月の14日、バレンタインデー。
フレッドとジョージにプレゼントをねだられた(強請られた、とも言う)は、から聞いた『ジャパン式ホワイトデー』に則ってキチンとお返しをしてくれる ことを条件にガトーショコラを焼いた。つまり3月14日は、今度はがプレゼントを貰える番なのだ。
なのにフレッドもジョージも、「ホワイトデーなんて聞いたこともない」 みたいな顔をする。


「覚えがないなあ、さてはお嬢さん、俺に言ったつもりでジョージに言ったんじゃないか?」
「いやいや、俺に言ったつもりでフレッドに言ったんじゃないか?」
「二人とも一緒に居るときに言・い・ま・し・た!」


互いに互いを指で示すフレッドとジョージに、はピシャリと言い放った。
二人はわざとらしく「おお怖い」と震え上がるフリをして、それからに向けて手を差し出して来た。


「残念だが俺たちには身に覚えがない」
「うむ。なんか美味いもん食ったような曖昧な記憶があるだけだ」
「お返しをしようにも、貰った記憶がこれじゃあとてもとても」
「という訳だから、、もう1回くれないか」


なんだその屁理屈は。
が大きな溜息を吐くと、二人は声を揃えて笑うのだった。


「「与えよ、さらば与えられん!」」