「ピーター?」室内はもぬけの殻。特に争った形跡はない。
「ピーター?どこだ?」返事はない。冷や汗が背中を伝う。 どこだ、どこに隠れている?落ち合う約束の時間を間違えたのだろうか? それとも場所を勘違いしているのだろうか? そうだ、きっとそうだ、あいつは昔からおっちょこちょいで、 何度、あいつの尻拭いに手を焼かされただろう? きっと、ジェームズたちの所へ行ったんだ。 あいつはバカだから、間違えたんだ。 そうだろ、そうなんだろう、ピーター? 玄関を出て、バイクに駆け寄った。エンジンをふかし、跨る。 ハロウィーンの夜空は、美しかった。 |
半分だけ崩れた家屋、大勢の人が集まっている。
その中の見知った巨体に気付き、駆け寄った。 「ハグリッド、これは、ジェームズは、リリーは、ハリーは、」 「…シリウスか…見ての通りよ、ふたりは死んじまった…」 「う――うそだ、そんな、だって、」 瓦礫の横には、傷だらけのジェームズの姿がある。 それに並ぶようにして、リリー。うそだ、こんなのは、うそだ。 計画は完璧だったはずだ、自分が囮になって、それで、ピーターが、 ピーター が 「ほれ、ハリーだ。リリーが守ったんだ…額に傷がある…」 「俺――俺が育てる。名付け親だ。ハグリッド、俺が――」 「いんや、ダンブルドアが親戚に預けるとおっしゃった」 「俺……俺とで、」 「ダメだ、辛いだろうが、諦めてくれ…」 ピーター が ? 「……わかった。バイク使えよ、ハグリッド」 「だがお前さんは――」 「俺にはもう必要ない。することが――できたんだ」 |
「見つけたぞ、ピーター」 大通り。マグル風のシャツを着たピーター。通行人が何人か振り返るが気にしていられない。 「シ――シリウス!よくもジェームズとリリーを!」 「どの口でそんな事ほざきやがる!てめえが――」 「うるさい!君が悪いんだ!君が全部悪いんだ!!」 逆上する声は耳障りだ。ポケットに手を伸ばす。しかし、それより早くピーターが杖を抜く。 爆発音。 悲鳴。血だまり。悲鳴。抉れた道路。なんだこれ。喉が鳴る。笑いが零れた。 ああ、やってらんねえな。ほんとに、なんだ、どうしてくれるんだ、これじゃあ に怒られちまう。 お前、そんなに素早く動けたんだな、ピーター! |