そうだな、どこから話そうか。











  BEHIND THE SCENES : XXXV.











わたしとが出会ったのは、4年生の時だったな。
それまでだってという生徒が居るのは知っていたさ、有名だったんだ。
どう有名だったかというのは、娘のきみなら予想がつくんじゃないか?



え?えーと……寮で庭小人を飼ってて、芸をしこもうとしてた、とか…?



……まあ、そんな感じだ。
変な女だ、って。そうとしか思ってなかったんだ。
なにせ当時、変人で有名な奴をボーイフレンドにしていたくらいだからな。



うそ!初めて聞いた!それ、どんなひとだったの?ママとおんなじようなひと?



おい、どうしてそこに食いつくんだ。
もっとわたしとの馴れ初めに興味を持ってくれよ。……いや、冗談だ。
そうだな、それで、変な女だと思ったからわたしから声をかけた。
そしたら2秒でふられた。あれは…かなりの衝撃だったな。



あははは!やだ、かっこわるーい!



そんなに笑わないでくれよ、古傷が痛むじゃないか。
はわたしを、ほとんど相手にしてくれなかった。
女ばっかり追いかけてないで自分の内面を磨けとかな、説教してきたりした。
それでも諦めきれなくて、ほぼ1年間、すごく頑張ってアプローチし続けたんだ。



ふーん…それでママとそのひとはどうだったの?
なんかこう、シュラ場っていうの?そういうのがあったりは……



しなかったな。……いや、あったといえばあったか?
はわたしからの誘いは断っても、追い返そうとはしなかったんだ。
『じゃあ、あたしがふられたら貴方に一番に報告に行くわ』なんて言ってな。
そういう態度がそのボーイフレンドの気に障ったというのか、愛想が尽きたというのか…
ある日突然、他に好きなひとが出来たという理由で、はそいつにふられた。



う、わ、ママかわいそう…



しかしな、はさほどショックを受けなかった。
あとから聞いた話なんだが、どうやらこの時、もわたしのことが気になり始めていたらしい。



え!?うそ!まさか!なんで!?



……今はこんなだがな、当時のわたしは女子からの人気が高かったんだぞ。
偶然にも同じ日、わたしは別の女子から愛の告白をうけたところだった。
それまでならサックリと断っていただろうな。もしくは、惰性で付き合うか…
いや、すまん、わたしは正直、えー、なんだ、だらしがないと言われていたというか、その、つまり……



知ってる。タラシだったんでしょ?
『女の子を連れ歩いてたのを何回も見た』ってマダム・ロスメルタが言ってたの聞いたことあるよ。



はあ!?ロスメルタめ子供になんてこと吹き込んでんだ!



……………



………話を戻すぞ。頼む、そんなに睨まないでくれ。これからクライマックスだから。
それでわたしは、だらしがなかった自分を変えなければに認めてもらえないと考えた。
がわたしに求めていたのは『好きだという感情を正しく理解すること』だったんだ。
場当たり的な感情ではなくて、本気で誰かを好きになってみろ、と。そういう意味だ。



……ママかっこいい…



そうだな、カッコいい女だった。
だからわたしはに釣り合うくらいカッコいい男になろうと思った。
のことを諦めるわけじゃないが、一度別の相手と真剣に付き合ってみて、
自分を見つめなおして、自分に自信を持てるようになったらもう一度告白しようと思った。



つまり、たまたま告白されたそれにオッケーしたってこと?



……本当にきみはにそっくりだな。言葉に容赦が無い。
つまり、えー…そういうことだ。
そしてわたしがイエスの返事をしたとき、ふられた直後のが偶然その場を通りかかった。



え、なにその昼ドラ……



昼ドラ?…ああ、テレビのことか。
わたしはマグルの文化に興味があってな、オートバイも持っていたんだ。
……それでそのとき、な。が半泣きの顔をして『おめでとう』と言った。
後にも先にも、その時くらいだった…が泣くところ、なんていうのは。



うん……今も、ほとんど泣かないよ。



………変わってないな、あいつも。
一旦その場を連れ出し、泣く理由を聞こうとしたんだが、は答えようとしない。
わたしとはあわや決闘というところまで揉めに揉めて、
最後は『あたしだってあんたのこと大好きだって言ってんのよ!』というの言葉で一段落した。
その後の展開は結果を見ればわかるだろう?



…その人と即行で別れて、ママとくっついたっていうこと?



結論をいえばそうなる。
わたしはその相手にひたすら謝ってイエスという言葉を取り消してもらい、
『そういうことをさせるために自分の気持ちを言ったわけじゃない』と怒るにもひたすら謝った。



……っはー、なんだかなあ……



修羅場といえば修羅場だが、わたしの修羅場だな。
そしてそれから先、わたしはずっと一筋だった。
そうそう、きみの持っている“時計”は、わたしがに贈ったものだ。
今から何年も前のクリスマスにな。



……待って。ファイアボルトといい、靴といい、時計といい…
もしかして、マルフォイんちみたいに、すっごいお金持ちだったの?



……………あー、まあ、それなりに、な…
だからとの関係は、わたしの家の人間たちの猛反発を招いた。
の家族は賛成も反対もしなかった。家はどちらかというと学者タイプが多いらしい。
純血の一族ではないが、何人か風変わりな著書を残した有名な魔法使いもいるな。



じゃあ、わたしのお祖父ちゃんやお祖母ちゃんも魔法使いなの?



ああ。確か、の母方の祖母はマグルだったと聞いたな。きみの曾お祖母さんだ。
そしての両親は、の卒業と同時にモルディブに移住して隠居生活を始めた。
まだそんな年齢でもなかったのにな、面白い人たちだった。
……まさか、親戚に会ったことがないのか?



…………うん。ずーっと、ママとふたり暮し。



しかし仕事は?は闇払いだろう?
家を長期で空けることだって多かったはずだ。



………………………闇払いじゃ、ないよ。
ママ、いまはマグルの仕事してる。女優なの。
わたしも、ずっと自分のこと、マグルだと思ってた。



……そうだったのか…
ではわたしのせいでホグワーツに呼び戻してしまったのだろうな…



…“フェンズの大嵐”っていう事件は知ってる?



……何となく、アズカバンの噂で聞いたことがある気がする。
たしか、死喰い人たちがたったひとりを相手に完敗したんだろう?
その英雄がその後どうなったかというのは不思議と聞こえてこなかったが…



あのね、これから喋ること、本当のことかどうかは解んないから、そのつもりで聞いて欲しいの。
―――ママがマグルになった、そのときに起こった事件のこと……



















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シリウスと娘ヒロインが交互におしゃべりしてる状況です(わかりにくくてすいません)