「西園寺さん、鉢巻が・・・。」
と声をかけ、菊地は西園寺の後ろに付き、鉢巻を結びなおした。

この鉢巻は、気合を入れる為に重要な物。
曲がったり、緩んだりしていては駄目なのだ。

菊地はいったん西園寺の鉢巻を緩める。
金色の髪を指で軽く梳き、鉢巻と髪の割合を整える。
そして、真後ろできつくなく、緩くなく、
程よい強さで結んでいく。

「これでよし。西園寺さん、出来ましたよ。」
菊地は西園寺から手を離し、一歩下がりながら声をかける。
自分の結んだ西園寺の鉢巻と金髪を眺めていると、
髪をフワリと翻して、西園寺が振り向いてきた。
「新太、すまないな。」
そう言い、微笑んだ。
「いえ、そんな。」
菊地は顔の前で右手をブンブンと振っている。
顔をほんのり赤くし、それを気付かれまいと、少し俯いて。
菊地の手には、西園寺の髪と鉢巻から、
全身には西園寺の微笑から、
気合が充填されていた。

「さあ、いくぞ!」
「はい!」
2人は走り出した。