おかしい、どうもおかしい。
俺、どっか変だ。
どうしちまったんだー!

練習の合間の休憩中、ベンチに腰掛け、一本木は悩んでいた。
2週間前、地球の危機を朝日町応援団と共に救った。
それまでも、朝日町応援団と交流はあったが、あの応援以来、より深いものになった。
以前に比べると、合同練習の機会も増えたものだ。
そして、明日が二つの応援団の合同練習の日になっていた。

はぁー、明日かぁ、合同練習は。
あいつも来るんだよな、西園寺も。
いけ好かないヤローだったはずなのに。
西園寺と一緒に応援をしてから、どうも調子が狂っちまった。
街をぶらぶら歩いていても、金髪で長髪を見つけると、西園寺なのかと思ってしまう。
昨日は驚いた、あいつのほうから声を掛けてきたんだ。

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昼過ぎの夕日町商店街、様々な人で賑わっていた。
「やあ、一本木。」
不意に後ろから肩を叩かれた。
振り向くと、西園寺と菊地が立っていた。
「お、おう。」
とりあえず返事をした。
が、その先の言葉が出なかった。
西園寺の方を見ようとするのだが、光の加減か、
どうも眩しくてそちらを見ることができないのだ。
「こんにちは、一本木さん。一本木さんも買い出しですか?」
「いや、ちょっとブラブラしてただけだ。」
菊地の問いには答えることが出来た。
なぜなら、菊地の顔ははっきりと見えたからだ。
「あさって、そちらに伺っての合同練習だな。共にがんばって汗を流そうじゃないか。」
にこやかに西園寺が言うが、果たしてその笑顔が一本木の目に映ったのかどうか・・・。
「そうだな、お互いがんばろうぜ。」
眩しさに目を細めながら、二人を見送った。
すれ違いざま、西園寺の横顔を一瞬だけ見ることができた。
自信に溢れ、金色の髪をなびかせており、
一本木は自分の体温が上昇していくのを感じていた。
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あの時、何であんなに眩しかったんだろう?
西園寺の顔がまともに見れなかった・・・。
何か、こう、胸の奥から熱くなってきて。
いつだったか、そういう感じがしたことがあるな。
中学の時だ、初めて好きになった女の子を遠くに見つけたとき、そんな感じがしていた。
その後、何ヶ月か付き合ったりして、楽しかったなぁ、いい思い出だぜ。
ちょ、ちょっと待て、その時と同じって、俺は西園寺が好きなのか!?
いや、それは違う、違うと思う。
今まで何人か女の子を好きになったし、女の子と付き合ってきたし。
あいつは男だぞ、俺も男だ。
そんなことがあるわけない!・・・はずだ。

ベンチにゴロリと横になり、辺りを見渡すと斉藤と田中が並んで座っているのが見えた。
あいつら、仲いいよなぁ、いつも一緒にいるような気がする。
俺が田中をからかってニキビを潰したとき、斉藤にえらく怒られたよな。
ん?あれって・・・。
もしかして、あいつらって、えぇ!?‘そう’なのか!?

自分の考えたことに驚き体を起こすと、無意識ながら斉藤と田中を凝視した。
一本木に睨みつけられているような形の二人。
斉藤は田中に何か話すと、一本木の方に歩いて来た。

「リーダー、どうしたんですか?」
斉藤が隣に座り、声を掛けるまで、一本木は気が付かなかった。
「あっ、あぁ、斉藤、いつの間に・・・。」
そう言うと髪をクシャクシャと掻き毟り、頭を抱え込んだ。
「あのさ、お前らって、‘そう’なのか?」
苦しそうに上目遣いで斉藤の顔を覗き込む。
「‘そう’とは?」
「お前と田中だよ。いや、答えたくないなら答えなくてもいい。俺はどうかしてるんだ・・・。」

しばらく沈黙が続いた。
一本木に見つめられ、斉藤はゆっくりと口をあけた。
「・・・リーダーは何か悩んでいるんですか?話を聞くだけだったら、俺でも出来ますが。」
一本木は思いつめた顔で、それまで考えていたことを話し始めた。
時々相槌を打ちながら、斉藤は真剣に話を聞いていた。

「・・・なあ、斉藤。やっぱ、俺、どっか変だよな。」
話し終え、一本木は顔を上げた。
「リーダーが変かどうかは、俺にはよくわかりません。
 しかし、自分の気持ちに素直になってみるのもいいものですよ。」
穏やかな顔で、斉藤が言った。
「斉藤は素直になってみたのか?」
「素直になりきれませんがね。大切な人だと思っていますよ。」
照れくさそうに笑った視線の先には、田中の姿があった。

「好きなら好きでいいじゃん。男も女も関係ねーと思うぜ、お二人さんよっ。」
ベンチの後ろから鈴木が二人の間に入り込んできた。
「うわっ、鈴木っ。お前いつからそこにいたんだよ。」
「リーダーが悩んでた頃からいましたよ。」
「って、全部聞いてたのかよ。勘弁してくれー。」
「照れない、照れない。告れとは言わねぇけど、いいんじゃねーの、その気持ち。」
遠くでアンナが叫んでいた。
「おっ、アンナが呼んでる。じゃな。青春してんじゃん!」
鈴木はアンナの元に走っていった。

「青春かぁ。おーし、青春すっかー!」
一本木は立ち上がって叫んだ。
吹っ切れた顔をして、赤い髪を揺らし、後半の練習を張り切って行ったのだった。


悩める龍太です。
西園寺はどう想っているのかは、まだわかりません〜。
結局、斉藤も田中への想いを喋っちゃったわけなんだけど、
そっちもどう転ぶか・・・。
まあ、堅いけどね。
鈴木の言葉で、二人の肩の荷が少し軽くなったと思います。
おちゃらけキャラだけど、いいとこ取ってくね、鈴木って。