ガチャ。
百目鬼魁は夕日町応援団室の鍵を掛けた。
団長であろうと、鍵当番は回ってくる。
練習が終わったこの時間は、夕日がとても綺麗に町を染めていた。
「今日の夕日もいい色をしているな。」
そう呟くと歩き始めた。

今日は半同棲中の神田葵が夕食を作って待っていると言って
先に百目鬼のアパートに帰っているはずだった。
きっと四苦八苦してるだろう、そう思い、少し寄り道をして帰ることにした。
帰り道にある公園、百目鬼と神田がお気に入りの場所である。
ぶらっと歩いていると、
「魁ちゃーん、こっち、こっち!」
と神田の声が聞こえてきた。
どこから声がするのかと、辺りを見回すと、少し先の木の枝に神田がいた。
木の側まで歩み寄ると、
「そんな所で何をしているんだ?」
と聞くと、神田の手からピイピイと返事があった。
どうやら鳥の雛をもっているようだ。
「あのね、葵がここを通ったら、この子が巣から落っこちてて、
 お母さん達も困ってるから、巣に戻してあげようと思ったの。」
見ると、親鳥らしき鳥が2羽、神田の近くで羽ばたいていた。
「もう少しで巣に届くんだけど・・・。」
そう言うと、雛を持った手を上に伸ばした。
「よ、い、しょっっと・・・やっ、あっ・・・!」
雛を巣の中に戻せる、というところでバランスを崩し、神田は雛と共に落っこちてしまった。
「キャンッ。(ドスン)」
地面とぶつかるっ、と目をギュッと閉じたが、いつまで経っても激しい衝撃がこなかった。
「・・・あ、れ?」
目を開けると、心配そうに笑った百目鬼の顔があった。
「・・・ったく。」
神田が落ちてくるのを、百目鬼がうまくキャッチしたのだ。
しかし、上から降ってくる人間を抱きかかえるというのは、
鍛え上げた体の百目鬼でも、さすがにふらつき、尻餅をついてしまった。
「魁ちゃん、ありがとー。重くなかった?痛くなかった?」
「俺は大丈夫だ。ほれ。」
差し出した大きな手の中には、雛がピイピイと鳴いていた。
「あ、雛ちゃん。よかったぁ、無事で。」
神田も半泣きである。
「よし、こいつを巣に戻してやろう。」
そう言うと、神田をひょいと抱えると、肩車をした。
「んー、も少し前。・・・はい、お家だよ。」
手を伸ばし、そっと雛を戻すと、にっこりと笑った。
親鳥達は雛の側に降り立ち、安心しているようだった。
「よかったね、鳥さん達。それもこれも魁ちゃんのおかげだよ、ありがとね。」
百目鬼の肩に乗ったまま、ゴワゴワの髪の毛をグシャをかき回した。
「こらこら、やめろ。」
そう言いながら、全然嫌な様には見えない、笑顔をしている。
「それにしても、よくあんなところに登ったな。」
「うん、葵はね、こう見えても木登りは得意なんだよ。
 今日はちょっと失敗しちゃったけどね。」
「得意でも、あまり感心しないぞ。その度に俺が心配するからな。」
「わかった。魁ちゃんがそう言うならもうしなーい。(ぎゅっ)」
抱きしめたつもりが肩車のままなので、目隠し状態になってしまった。
「お、おい。前が見えないから、手をどけてくれ。」
「はーい。・・・あ、夕食の買い物まだだった!」
神田は百目鬼の顔から手を離した。
「一緒に買い物に行くか?」
「じゃあ、このまま夕日町マーケットに出発ー!」
「このまま!?しょうがないなあ、マーケットの前までだぞ。」
「わーい。」
「こらこら、暴れない。」
肩車のまま、二人は夕焼けの中に消えていった。

このSSは、山田甲八さんのサイト“エールの鬼”の‘絵→葵と団長3’をみて、
頭の中に沸き起こったものを字にしてみたものです。
山田さんから掲載許可を頂いたので、UPしました。
もう、足を向けて寝れません!心から感謝です!
あの、素敵な絵に添えてあった説明文、それでストーリーが沸いてきました。
素敵な絵に出合うと妄想してしまう・・・、こんな自分でいいのか、悪いのか!?
いいことにして、日々妄想します!