窓の外は日が落ちてきたせいか、薄暗くなっている。
今日は元々曇りがちで、
お世辞にもいい天気とは言えなかった。
それに、天気予報ではお天気キャスターのみかちゃんが
「この調子だと、ホワイトクリスマスになるかもしれませんね。」
と喜んでいた。
みかちゃんが喜んでくれるんだったら、
雪が降ってもいっか・・・。
部屋の中が暖かいのか、外が寒いのか、
窓はうっすらと結露している。
白くなったガラスに手を触れようとして、
ふと、思い出した。
指でガラスにコッソリと落書きをしたのに、
謙信にばれて、寒い中、
団室の外の窓拭きをさせられたことがあった。
あれは寒かった。
ほんとに寒かった。
でも、几帳面な性格が汚れをほっとけるはずもなく、
ピカピカに磨き上げたんだった。
すべて終えて団室に入ると
ミルクたっぷりの温かいココアが用意してあった。
気が利くじゃないか、と感心していると、
「頭のてっぺんまで凍ってんじゃないの。」
と謙信の暖かい手が、冷え切った俺の頭を撫でた。
2人で飲むココアが温かかったからか、、
それとも、謙信の手が暖かかったせいか、
何だか涙が出そうになった。
どうして俺が落書きをしたとわかったのか、謙信に聞いてみると、
「お前以外に誰がいるんだ。」
と、当然のように言われた。
菊地だってやりそうなもんだが、
そんなこと言うと、どれだけ俺が悪いのか、
ごめんなさいと手をついて謝らないと、
口を閉じてくれないとわかっているので、
それ以上何も言えなかった。
窓越しに暗い空を睨み付けていると、
点々と白いものが降りてきた。
「雪かぁ・・・。」
どうしてだろう。
雪が降ってくるとつい、言ってしまう。
見ればわかることだし、
言うほどのことではない。
馬鹿の一つ覚えのようで、苦笑していると、
「気持ち悪いなぁ、何ニヤニヤしてんだ。」
慣れた手つきで、俺の頭はグリグリと揺らされた。
窓ガラスにはスキンヘッドの強面と三つ編みの優男が映っていた。
「見とれるほどのイケメンでもないんだから。ほら、早く支度しろよ。」
そう言い、渡されたのは、トナカイの角の被り物と赤い鼻だった。
はぁ、また今年もか・・・。
「俺もたまにはサンタ帽が被りてえよ。」
トナカイの角を被りながら呟くと、
「何言ってんだよ、こんなにトナカイが似合う男は、剛、お前以外いないんだ。」
とバンバンと背中を叩かれた。
煽てられているのはわかってはいるが、
そう言われて嬉しくないわけではない。
「ま、な。」
赤い鼻をつけ、斜に構えてみる。
「よっ、トナカイ!決まったところで、団長がお待ちだ。」
「了解!いくぞ!」
おっと、ベルを忘れるところだった。
トナカイの鳴り物に、ベルは必需品だ。
カラン、カラン、と鳴らしながら、俺たちは団室を飛び出した。
ケーキ販売に行く前のもりっちです。
こんな感じで毎年出掛けてると楽しそう。
薫ちゃんのケーキ販売は、やはりあの不思議な魅力で
あっという間に完売するのかしら?
これ書いてて何となく森杉な感じになってしまったような、
そうでもないような。