僕の顔を見た綱吉は、一瞬驚いた顔を見せてからゆっくりと微笑んだ。たいそう安心したような、そんな顔だった。 の無実は証明されたらしい。本当は証拠不十分で、普通ならまだまだ様子見にしたいところだけれど、色んなやつらに説得されたらし い。獄寺に山本に、がここにいると聞きつけたほかのやつらからもかばう声が色々なところから聞こえてきたらしい。がどれだけ 愛されてきたのか、一目瞭然だ。しかし驚いたのが綱吉の判断だ。普段の綱吉ならば自分の決めたことなら、誰に反対されようと首を縦には振らない男だ。 みんなに言われた、ということを言い訳に、自分の慈悲も加わっての潔白を認めたんだろう。これでとりあえずは、 一安心だ。はひとまず安全だ。もっとも、ここで綱吉がを殺せと言うのもおかしな話だろう。僕がを殺そうとしたのを止めたくせ に、守るという、もう何者にも揺るがされそうにない決心をしたあとで殺せと命じられても、僕を動かせるわけもない。はもう、絶対に 僕が守ってみせる。


「雲雀さん、ちゃんをできるだけ傷つけたくはありませんよね」
「…ああ」
「わかりました」


綱吉のこの言葉の意味を、僕はあとから知ることになる。綱吉自身がに面会すると言い出し、僕が誘導した。そして綱吉からに説明を したことのほとんどが、でたらめだった。でたらめというにはひどくリアルで、笑ってしまいたくなるほどだった。正しいことを言って いたのはせいぜいでの両親の仕事ことだ。ボンゴレに勤め、優秀なヒットマンであったということくらいだろうか。ここがボンゴレのアジトで あるとか、抗争の中でボンゴレを恨む敵勢力に襲われて夫妻は死んだとか、よくもまあそこまで嘘を並べられるものだと感心した。 の両親を殺せと命じたのは自分のくせに。ちなみにここはボンゴレのアジトというにはいささか小さすぎる場所だ。ここは急きょ設け られたボンゴレの緊急医療機関。こんなに無防備なまま、設備も十分でないここがボンゴレのアジトであってなるものか。それこそ ボンゴレは笑われてしまう。天下のボンゴレがこんなに目立つ場所をアジトにしているだなんて。つぶしてくれといっているようなもの だ。ここはもうすでに廃墟になることが決定している。これが綱吉なりの、の守り方なんだろうか。


「雲雀さん」
「なに」
「あなたに重大な任務を与えます」
「ああ」
「あの日が来るまで、ちゃんを守りきってください」


そんなこと、言われるまでもない。


「もちろんだよ」











20070417