どこから聞こえてきたのかわからないその声のような声じゃないようなものが私の耳を通る前に、私の思考回路は停止してしまったので 私の耳なんて使い物にならなくなってしまった。どういう状況ですか、これ。扉を開けたらきれいなお姉さんが立っていました。 「あの、銀時くんいますか」 インターホンが鳴るので玄関までかけていって扉を開けると、きれいな女の人が立っていて銀時くんいますかなんて聞いてくるもんだか ら、使い物にならなくなってしまったはずの耳が機能していたことに驚いた。いや、ちがう。本当はそんなところに驚いたんじゃない。 このお姉さんの妙に低い声が耳に入ってきたことに驚いたんじゃない、銀ちゃんに彼女がいたという事実に驚いたんだ。一目で、わかって しまった。このお姉さん銀ちゃんの彼女さんだ。だってなんか、親しそうな顔してるもん。銀ちゃんとおんなじようなにおいするもんよ。 いや別に銀ちゃんみたいに糖分のにおいがぷんぷんしているわけじゃない。なんていうか、どこか、繋がってる、ような。 この人が銀ちゃんの彼女なんだと思ったとたん、心臓がずきずきと痛み出すものだから、私は銀ちゃんが好きだったんだろうかと新事実に 気付きかけてしまった。まじでか、私って銀ちゃんのこと好きだったのか。そりゃ銀ちゃんはかっこいい(ときもあるだろう)し、強い( らしい)し、こう考えてみると好きにならないほうがおかしいのかもしれない!そうか、そうなんだ私は銀ちゃんが。うだうだ考えていた ら、きれいな女の人があの、というので私はドキリとした。心臓が、はね、た。ああそうだよ銀ちゃんにはこんなにきれいな彼女さんがい るんだよ。私には敵うはずない。じーっとその人の顔をみつめていたら、心臓の音が速くなる。それにしても、きれいな人だ、な。 「あの、だから銀時くんは」 「おーいよォ、誰が来たんだ…ってヅラァ?」 「ヅラじゃない桂だ!おぉ、銀時よ」 振り返ると頭かきながらこっちに歩いてくる銀ちゃんの姿があって、寝癖のついたままの頭が少し笑えた。彼女さんの前でそんな頭してて いいんですか。あ、銀ちゃんの顔を見てたら心臓が少しずつ落ち着いてきたかもしれない。おお、たぶん好きな人の近くだと落ち着くって やつですねなるほど!またきれいな女の人、銀ちゃんの彼女さんのほうを見たらまた心臓がばくばく言い出した。やっぱり、きれいな人だ なあ。 「また女装なんてしちゃって、なんですかァ?結構はまっちゃってんじゃないの?」 「カモフラージュだ。これなら真撰組の目も誤魔化せるだろう」 「それにしちゃ化粧に力入ってるんじゃないの?」 「気のせいだ。それと」 本当にきれいな人だなあ。二人の話なんて耳に入ってこないで、銀ちゃんの彼女さんのほうばかり見ていたら、銀ちゃんの彼女さんがこっ ちを向いてばちっと目が合った。う、わ、本当にきれいな、人。顔が急に熱くなるのがわかる。なんだ、なんでだ。ああそっか、これが 嫉妬ってやつだな!銀ちゃんの彼女さんがあまりにきれいで嫉妬しているんだ!と思う。恋なんてはじめてしたからよくわからないけど、 これが世間でいう恋の病ってやつなんだね! 「この間、野暮用で京のほうまで行ってきてな。土産だ」 「お!八つ橋じゃねェか!、茶淹れてくれ」 銀ちゃんが私の名前を呼んで視界に入ってきたとたん、ちょっと心臓がまた落ち着いた。ちょっと銀ちゃん邪魔だよ!銀ちゃんの彼女さん がよく見えな…あれ?私はどうして彼女さんを見ていたいんだ?こういうときって銀ちゃんを見ていたいはずじゃ、ないの?これじゃあ まるで私は銀ちゃんの彼女さんを好きみたいじゃ、あれ?女の人を好きになるはずないじゃないか!ちがうちがう、私は銀ちゃんが、好き なのか? 「、おーい顔赤いぞ?もしかして惚れちゃった?銀さんはいつでも受け付け中だぞー」 「ぎ、銀ちゃん大変だよ!わたし銀ちゃんの彼女さんに恋しちゃったみたい!」 「は」 て、何を言っているんだ!これって、これって世間で言う告白じゃないですか!?ちょ、何を私はいきなり告白しちゃっているんだなんか いっぱいいっぱいになって口走ってしまったよ!う、わ、変なやつって思われたかも。というか女が女の人を好きになるって時点でそうと う変なやつ、じゃんか。口をぱくぱくさせて、弁解も何もいえないままでいるときょとんとした銀ちゃんと銀ちゃんの彼女さんがこっちを みつめている。うわ、やっぱり変なやつって思われてるんだ。 「彼女?って、だれ」 「こここちらの方、に…!」 銀ちゃんが壮絶そうな顔をして彼女さんをみつめている。わ、わ、ショックなんだ!私が銀ちゃんの彼女を好きとかいうからショック受け ちゃったんだ!ら、ライバル視されたりするんだろうか。銀ちゃんと気まずくなるのはいやだなあ。 「ヅラにィ!?」 「ヅラじゃない桂だ。それと俺は銀時の彼女でもなければ、女でもない」 「うそ!こんなにきれいなのに!」 「いや、あの、ちゃん落ち着いて?それは恋じゃない、恋じゃないでしょう?」 銀ちゃんの彼女さんだと思っていた人は、彼女さんでもなくて、女の人でもないらしい。ということは、男の人?そう思ったとたんにさっ きまで爆発しそうなくらいばくばくいっていた心臓がもっとバクバクいいだして、なんか、心臓発作を起こしそうだ。顔どころか体中が 熱くなって、沸騰してしまいそう。恋じゃない?銀ちゃん、じゃあこれはなんですか。恋じゃないならこれはなんという病気ですか。息も ままならないくらい、くるし、い。 「す、す」 好きです!と言おうとしたら銀ちゃんが急に私の口を手で塞いで続きが言えなくなってしまった。銀ちゃんどうして邪魔するの! 「ヅラァ!お前用が済んだなら早く帰れよ!」 「待て銀時、俺は今一度お前と攘夷の」 「うるっせェな!今それどころじゃねーんだよ!」 「それどころとはなんだ。俺はお前と」 「(むがっ)銀ちゃんどうして邪魔するの!」 「あーもう、うるせー!」 溶け合う水平線、 異色のコントラスト 20070722 |