※"僕がここに在る理由"の続きのようなものです!











「山崎くん!何が食べたい?なんでも言って!」
「ど、どーしたんですかさんいきなり!やけにテンション高くて不気味なんですけど!」
「不気味とか言わない!この間のお礼にさ、何かおごらせてよ」
「この間?ああ、大江戸ビルのことか。あれはむしろ事前に防げなかったことを詫びなきゃいけねェところですよ。気にしないでくださ い」
「だめだめ!こうして私も総悟も、あのビルの中にいた人全員助かったのは山崎くんのおかげだと思ってるから!…いや、そこまでは 思ってないけど」
「どっち!?」
「そ、総悟がね、生きててくれてるのがすごく嬉しくて、それは本当に山崎くんのおかげだと思ってるの!だから何かさせてよ、ね?」
「…わかりましたよ、負けました。じゃあ今夜あたりなんかおごらせてもらいます。あ、でもくれぐれも沖田隊長には内緒ですよ」
「?うん、わかった!」

ということで、私と山崎くんで居酒屋に行ってきました!結局、私のおごりではなく割り勘にされちゃったけどね。こういうところしっか りしてるから、困っちゃうよ。なんかもうちょっと、お姉さんぶらせてほしいなーなんて。あれ?私のほうがお姉さん?いや、たぶん山崎 くんよりはお給料も安いだろうけど、なんだか気分はお姉さんなんだよ!わかるかなこの気持ち。軽く酔っ払った頭で家に帰ると、なぜか 電気がついていて驚いた。あれ、こんなときに思い当たる顔はいつの間にか勝手にうちの合鍵つくってアポイントもなく泊まりにくるあい つしかないけど、でも今日って屯所に泊まる日じゃなかったっけ。

「遅ぇじゃねぇかィ」
「え、総悟なんでいるの?今日は屯所に泊まりって」
「サボった」
「また!?土方さんに怒られても知らないからね」
「それより、遅かったじゃねぇかィ」
「あー…」

山崎くんと飲みに行ってたのーと言おうとして、口止めされていることを思い出した。何のための口止めかはわからないけど、面倒な約束 をしたものだと今さら反省だ。でも一度してしまった約束を破りたくもないし、な。私が答えあぐねていると、総悟はそんな私を訝しげに 見上げてくる。うまい言い訳がみつからない。私が普段から寄り道なんてせずに帰ってくることを総悟はよく知っているからこそ、面倒 だ。うーん、総悟が屯所に泊まって、うちに確実に来ない日をねらったのにまさかサボってくるとは。友達と飲みに行っていた、というの も、こんなに間を空けてからじゃなんだか不自然に聞こえるかもしれない。こういうときは無理な嘘はつかず、適当にやりすごすのがい い!…たぶん。

「どこだっていいでしょ。総悟お腹空いてるの?何か作ろうか」
「あからさまに話変えんじゃねェ」

こういうとき、普段から素直に生きている人間というのはふりだ。適当な嘘さえつけずに、話をそらそうとしてもすぐに戻されて。結局は 同じところをぐるぐる回るはめになってしまうんだから。私があーとかうーとか言っていると、総悟がなんだか不機嫌そうな顔をしての っそりと立ち上がる。なんだ、と思わず後ずさったもののすぐに捕まえられて壁に押しやられた。恐る恐る目を開ければ至近距離に総悟の 顔があって、ときめく間もなく腰に片腕を回されて引き寄せられた。ひいひい、なんだこの体勢は!片腕で腰を強く抱かれて、残ったほう の手で顎をくいと持ち上げられて。そのくせ総悟の顔は不機嫌そうな極悪面になってるし。でも、そんなとこにまでときめいてしまう私は いったいどんな趣味をしているというんだ。総悟は、妙にこういうことに手馴れているような気がして、困る。どこで得た経験値なんだろ うなんて悩まなければいけないし、そういうことになれていない私は無駄にどきどきさせられて、困りっぱなしだ。そして極めつけが、こ れ。

「言えよ」

私ね、総悟と付き合う前は自覚してなかったんですけど、結構エムの素質があるみたいなんですよ。いや、これはむしろ総悟によって培わ れてしまったと思ったほうがいいね!そうしよう。とにかくそんな感じで、こんなふうにちょいと命令口調なくせに甘い響きを持った言葉 を放たれると、とたんに色んなところがきゅんきゅんしてしまってこれはもう困るどころの問題じゃない。一大事、だ。

いつもならここで言ってしまったであろう隠し事も、今回は耐えました!選手こらえたー!ああ、誰か全力で私を褒めてください。総悟 のこういうお色気?攻撃を食らうとたいていのお嬢さんはいちころですよ、注意してくださいね。じゃなくて、なんとか堪えて抵抗して 口をぱくぱくさせるだけにとどめたんだけど、攻撃はまだ終わっていなかったようだ。第二撃とでも言うように、今度は言葉なく行動に 移してきました。がばっと口を開いたかと思うと、そのままがぶりと口を食べられました。え、何してるのこの人!唇をぬとりと舐める舌 にやわやわと噛んでくる歯に腰がむずむずしてしまって、何か毒でも盛られているような気分になった。ちょっと、どうしようこれ。約束 なんて無視してさっさと言ってしまえば、よかったかな。こうなった総悟はもうたとえ私が隠し事をばらしてしまっても、止まらないの に。

「言わせてくださいって泣かせてやらァ」

やけに熱っぽい瞳はとてつもなく色っぽくて、もういっそ好きにしてくれとまで思ってしまった。いや、されたら困るけど。


















壁で犯されたのは、初めてです。やけに興奮した総悟くんは壁で第1ラウンドこなすとぐったりとした私を抱えてベッドまで運び、そのまま 第2ラウンド突入です。若いってすばらしい。こちらとしては、困ったものだ。今日になって私は何回困ったといえば気が済むんでしょう ね。まだ熱の冷めない体にシーツがかけられて、冷たいシーツが心地よかった。こういう気遣いが、たまらないんですよね。まだ息の荒い 総悟を見ると、なんだか思い出したかのように口を開いた。こいつ、忘れてたな。

「言う気になったかィ?」
「もう、言わない。絶対いわない」
「言わせてくださいはなかったが、もっともっとって泣いてたくせによォ」
「もう総悟なんか知らない」

寝返り打って総悟に背中を見せると、めずらしく後ろから抱きついてきて首に顔をうずめられた。総悟の体、まだ熱いな。2回なんて久しぶ り、だったからかな。思い出して赤くなっているのもつかの間、首に鋭い痛みを感じてびっくりした。何をしているかと思えば総悟が私の 首筋にキスマークなんかつくっている。しかも、濃い!ああ、そんな服で隠せないところやめてよー!どうすんだよ明日から絆創膏でも 貼っていく?いやそれむしろあやしいよね、そんなところどうやって怪我するんだみたいなね。勘弁してよ。この間足につけられたやつが やっと消えてくれたっていうのに、今度はもっとわかりやすい場所に。

「やだやだ!だめだってそんなとこ、隠せない!」
「隠さなきゃいいんでさァ」

いつもならもうちょっと隠れるところにつけてくれたのに、今日にかぎってどうしてそんなところ!必死で抵抗しようとすると、ぐるんと 無理やり寝返りを打たされて総悟の正面向いたかと思えばすぐにキスをされた。有無を言わさない激しいキスに、どうにも体に力が抜けて しまってしょうがない。やっと離してくれたと思えば、また首に顔をうずめだす。もう、いいかげんにしてくれ。いくつ付けるつもりなん ですか、総悟くん。ため息をついたら、総悟が顔を上げないままでつぶやいた。

「一つ、聞きまさァ」
「なによーもう」
「今日のは、浮気じゃねぇよなァ」
「ちがう」

思わず即答して体を起こすと、総悟が真面目な顔してこっちを見ていた。そこだけは、疑われたくないのに。言うべきか、言わざるべきか 迷っていると、総悟は私の肩をぽんと押してまた寝転がされた。

「もしも浮気なら、相手にその跡を見せ付けてやりなせェ」
「だから、してないって!」
「してたら許さねェぜィ」
「…してないし、しないから安心してよ。あ、もう、つけないでってば!」
「虫除けのかわりでィ、大人しくしてな」

そんなことを言われたら、何にも言えなくなるじゃないか。

翌日、総悟が山崎くんを引きずっているところを見た。たぶん、ばれたんだろうなあ。じゃあ昨日私が隠し通そうとしたのは無駄だった ってことだろうか。こんなキスマークまでつけられて。首元にそっと手をやって、あからさまにあやしい絆創膏を撫でてみた。







Kiss Mark


20071014