※微エロのようなちがうようななのでご注意ください!













「総悟くんさぁ」
「…っあァ?」

情事が終わって、の中から俺自身を抜かず余韻に浸っているときだった。さっきまで苦しそうに喘いでいたが、今では普通の顔をして 普通の声でほかの男の名を出すものだから、こいつもう一回泣かせてやろうかと思った。しかしさっきと変わっていない頬の赤みと瞳の 潤んでいる様子でなにやらこいつがとてつもなく愛おしく感じてしまうんだから、俺も単純だ。の頬に一度だけキスをしてゆっくりと中 から出て行くと、が小さく「んっ」と呻くものだから俺は自身を抑えるのに必死にならなくてはいけなかった。明日は非番というわけで もねぇからここらへんで寝ちまわねぇと、明日の仕事に支障をきたすかもしれねぇ。に布団をかぶせると、さっきと同じように総悟の 名前をつぶやいた。

「総悟くん、さ」
「んだよ、総悟がどうした」
「幸せそうな顔してたよね」

なんだか、当たり前のことを言う。最近の総悟には女ができたようで、俺たちにはあんまり会わせたくねぇみたいだが今日それを目撃して しまったのだ。総悟と女が二人で歩いているところを。総悟の隣を少し照れたように歩く女は同じく照れたように微笑んでいて、それを 見る総悟の顔は何をしているときよりも穏やかで幸せそうで、そうだな例えるなら愛娘を見守る父親のような顔をしていた。いや愛娘なん て表現はおかしいかもしれねぇが、それくらい優しそうな愛おしそうな、幸せそうな顔をしていたんだ。あいつもあんな顔できるもんだ な。好きな女の前だとああも変われるもんなのか。俺も、こいつの隣歩いてるときはあんな顔してんのか?ためしに頬の肉を引っ張ると、 反対の頬を同じようにつねる白い手が伸びてきた。きゃらきゃら笑う顔が可愛くて、顎に手をかけて口付けると照れたように顔を赤くし て、その顔を隠すようにうつむいてしまった。ゆるゆると自分の頬の肉が釣りあがるのがわかって、たぶん俺は今すごくかっこ悪い顔をし ている。真選組のやつらが見たら指をさして笑われそうな情けない顔だ。でも、こんな自分が嫌いじゃねぇよ。好きな女の前で幸せそうな 顔をして何が悪い。だって俺は、幸せだ。

「ね、トシ」

細い手が今度は俺の背中に回ってきて、いつもよりも少し強い力で抱き寄せられた。の頭を撫ぜると髪がさらさら通り抜けて、俺をくす くす笑っているようだった。

「それでも、私たちのほうが幸せだよね」

どのへんを比べて、どっからその自信がわいてくるんだよ。思わず突っ込みたくなったがそれをしなかったのは、あまりに可愛いことを 言う俺の可愛い恋人が今までにないくらい可愛い顔して笑ったからと、俺の頭でもっと恥ずかしくなるような言葉が浮かんだからだ。今こ の世界中を探しても、俺以上に幸せなやつはいないと断言できる。なぜなら俺は、好きな女のとっておきの笑顔を見ながら、脳髄までしび れるような殺し文句を聞いたからだ。俺はどうしようもなくこいつに惚れていると感じる。





幸せくらべ


20071029