どくんどくんどくんどくん。心臓の音、どんどん速くなっている。いつもと変わらないキスのはずなのに、私の心の中はいつもとちがう。緊張、だと思う。期待、ではないと思う。不安、もあると思う。とにかく獄寺が愛しいと思った。目をつむっている間についばむようなキスが繰り返されて、そのたびにちゅっていう音が鼓膜よりも奥のほうに響いている気がして、頭の奥がむずかゆいようなどろどろした感覚に襲われる。いつもと、何がちがうっていうんでしょう。獄寺は私が言った言葉に、何の答えを返してくれるわけでもなくキスを繰り返す。どうしよう、今さらになって、恐くなってきたかもしれない。ここでやっぱり嫌だなんて言ったら、きっと獄寺は傷つくんだろうか。残念がるんだろうか。それはちょっと、いやだなぁ。言い出しにくいし、でもちょっと恐い。できることならいつまでもこのキスが続いてほしい。私はキスだけで満足しているんですから。ああ、嘘かもしれない。むずむずするような、この物足りなさは、きっと体がキスよりもっと獄寺を求めているからなんだと思う。したい、はず。でも恐いのは許してほしい。あなたには言わないから。我慢するから。どうか優しく、ゆっくりでありますように。


キスが終わって、唇が離れていったのがわかって、私はゆっくりと目を開けたら、そのとたんにぎゅっと抱きしめられた。それはもう強い力で。苦しくはないけど、いつも遠慮がちな獄寺にしてはとても強い力。煙草のにおいがして、獄寺のにおいだなぁと安心する自分がいて、少しだけほっとする自分がいた。すぐに服ひっぺがされて食われちゃったらどうしようかと思った。きっと、それはさすがに私泣いちゃうぞ。自分から言い出しておいてなんですが、泣いちゃうぞ。はじめて、なんですから。はじめてって大切だと思うんだ。その大切なはじめてを獄寺に捧げるんだから、獄寺は私に優しくする義務があると思う。いや、ごめんなさい義務なんて言わないから、土下座でもするから、優しくしてほしいです。やめてって言えないのは私の弱さと、獄寺への負い目があるから。エロビデオなんか見て、抜いちゃいやだよ。私のことだけ考えてほしいと思うのは、わがままでしょうか。そのためにも、セックス、したい、かなぁ。


「本当に、いいのかよ…」
「わかんない」
「なんだそれ。正直に言いやがれ。じゃねえと、俺が、あせる」
「獄寺でもあせったりするんだね」
「俺があせってみろ。お前泣かすぞ」


おどしにしては、すごく優しい口調だった。優しい中にも不安みたいなものが見え隠れしているようで、ああ獄寺も緊張したり不安になったりするんだなと、すごく当たり前なことを今さら実感してしまった。やばい、この人がとてつもなく愛おしい。


「恐いなら、言えよ」
「恐い」
「はえーな」


笑った顔が、可愛くて、かっこよくて、きれいで。表現できない、えっと、お腹よりも下の部分がきゅんとするような、全身の毛が逆立つような身震いみたいなのがして、言葉にうまくできない、獄寺をもっとほしいと思った。ほしいって、具体的にどんなふうかはよくわからないけど、食べてしまいたいくらい愛おしいと感じた。獄寺が私の顔を見て、頭をなでて、おでこと目にキスをした。


「無理すんな」
「今ね、わたし獄寺がほしくてたまらなくなったよ」
「お前言ってること矛盾してる」
「恐いけど、優しくしてくれるなら許す」
「ばーか、お前に無理させたくねえっつってんだよ」
「無理じゃない。恐いけど、もっとほしいし、知りたいの」


獄寺が顔をゆがめて苦しそうな、痛そうな顔をした。それから私の肩に頭をのっけて、「お前俺をどうするつもりだよ」って弱々しい少しかすれた声で小さく言ったのが聞こえて、それにまた、ぞくぞくした。キスしたくてたまらなくなって。どろどろに溶け合いたいと思った。衝動っていうのは恐い。体中が熱くなってくみたいだ。獄寺の吐息が首筋にあたるのがくすぐったくてたまらなくて、でもくすぐったいっていうのとはちょっとちがう感覚に戸惑ったりした。どうしてくれるんだ、私の体はもうどうにかなってしまいそうです。


「優しく、してね」


獄寺が顔をあげて、私にキスをして、ベッドに倒れこんだ。シーツが妙に冷たく感じて、恐怖という名の冷たい液体ががじわりと頭にしみこむようだと思った。落ち着け、落ち着け。できることなら頭を真っ白にしてしまいたいと思った。緊張も不安も恐怖も何も感じず、ただされるがままになる人形になれたらどれだけ幸せだろうか。やっぱりちょっと、恐いみたいです。でも獄寺はずっと私にキスをする。ちゅ、ちゅ、ちゅ、ちゅ。少し湿ったみたいなキスの音が止まない。何十回も私をなだめるようにされるキスの雨は、ひどく優しい。ゆっくりと舌が入ってきて、獄寺の舌先をちょろっと舐めたら私の舌に獄寺の舌が絡んできてなんだか不思議な感覚だった。何度しても不思議になる。人間のべろってこんなにもやわらかいものだろうか。ふにふにしてるのに湿っていて、獄寺の唾液が私の中に入ってきて私の唾液と絡んでべちょべちょになる。飲み込むことなんて忘れて翻弄されていたら、口の端から唾液がこぼれた。キス、気持ち良い。どうして気持ち良いんだろう。少しだけ目を開けたら、細く目を開けている獄寺の顔がみえて、それがとても色っぽくて、見とれた。獄寺のこんな顔知っているの、私だけかな。そうだったら、すごく嬉しい。


服の上から胸のあたりを控えめに触る手があって、最初はそれに体を強張らせたものの、キスが激しくて頭がぼんやりしてくる。ゆっくりと私の胸を揉む手のひらは大きくて、優しいその手つきに思わず声が漏れた。キスの最中だったからくぐもってよく聞こえなかったけど、その声は私の声とは思えないくらい高くて甘ったるくて、エロビに出てきた女の人に近い感じで、顔に火がつきそうになった。恥ずかしくて目をぎゅっとつむったらキスがやんで、手は止まらないまま。


「大丈夫、か…?」


不安そうな声。ちがうよ、今のは恐くて目を閉じたんじゃないよ。恥ずかしかったからだよ。だから、やめないで。気にしないで続けてよ。優しくしてって言ったのは私のほうなのに、獄寺のその優しい声とか気遣いとかがこそばゆく感じた。ふたつくらいうなずいたら少し安心したような顔をして、それがまた愛しく感じた。今日はどれだけ獄寺を愛しく感じれば気が済むんだろう。大好きすぎる。ああ、唇がべたべただ。舌で舐めたら「えろい」って苦笑いして言われた。お前の顔のほうがよっぽどえろいですよ獄寺くん。言ってしまおうかと思ったけど、いえなかった。服の中に手が入ってきて、私の体は無意識に跳ねた。びくってなったのが自分でも驚いて目を見開いたのに、獄寺は気にする様子もなく服を少しだけまくりあげて下着をあらわにした。うひゃあ、これも、恥ずかしい。


「ちょい腰浮かせ」


言われるがままに腰を浮かしたら、すぐにシーツと背中の間に手が入ってきて、驚く間もなくブラジャーのホックをはずされた。な、なんか手馴れてませんか獄寺、くん。思わず獄寺に抱きついてしまって、抱きついた私が一番驚いた。なんだこりゃ、何をしているんだ私は。これじゃあ誘っているみたいじゃないか。ちがう、そんなつもりはなかったの。ただ本当にびっくりして、とっさに腕が伸びてしまっただけで。どうしよう誤解されて、急にテンポが上がってしまったら。いや、それよりも淫乱な女だと思われたくない。色々考えていたら、獄寺がまた頭をなでてくれた。「大丈夫、ゆっくりやっから」ああ、なんだ、わかってくれてたんだ。よかった。私の頬にキスをして、それから私の素肌に獄寺の手がふれる。獄寺の手、あったかいのに、なぜか私は鳥肌が立ってしまいそうになった。胸をもまれるたびに、息遣いが荒くなっていく自分が不思議でたまらなかった。きっとあれだ、獄寺が胸をおさえつけるから息苦しくてだよ、うんきっと。ちがうだろうな。揉むのが一瞬とまって、不思議がる暇もなくいつの間にかかたくなっていた先っぽをくりっていじられるのがわかって、体中に電気が通っていくみたいにびりびりした。変な声もでた。「ひゃん」みたいな、高くて鼻につくような声。は、恥ずかしい。獄寺の頭が下にいっちゃって、何をするかと思えば右の胸の乳首をぱくりと口にいれちゃうから、私はもう恥ずかしいのとどこ見ていいのかわかんないのと、あと、声が出るのがわかったからとっさに口に手をやったら間に合わなくて、ひどい声が出た。


「ぅあんっ…ゃ…!ごくで、らのばかぁ…っ!」
「うるへー」


ばかだ、ばかだばかだばかだ。獄寺の声が響いて、吐息が素肌にあたって、頭がおかしくなりそうだった。ぞくぞくした。そんな私に気付いてないのか気付かないようにしているのか、無視してころころと私の乳首をもてあそんでいる。右手はせわしなく私の左胸をさわっていて、両方なんて、ひどいと思う。すでに私の頭の中はひどいことになっているんだから。


ばかみたいに声を上げ続けて、ばかみたいに獄寺は私の胸を舐めまわして、獄寺がやっと顔をあげたときは頭がほとんど真っ白になっていた。もうこのまま眠ってしまいたい。変に疲れた。体中に力を入れていたのがよっぽどきいたのか、もう今では体中の力は抜けきってふにゃふにゃになっている。体に力うまく入んないな。えっと、まだ続くんだよね。胸は、結構、気持ちよかった、かな?獄寺が私を恐がらせないように慎重に丁寧にやっているのかはわからないけど、時間が妙にゆっくり流れているように感じる。頭が、疲れた。うまいこと回らないです。獄寺と目が合って、自然と顔がほころんだ。そしたら獄寺は唇に触れるだけのキスをしてくれて、それが私を落ち着かせた。このまま眠っていいですか、今ならすっごく安らかに眠れそう。そう思っていたら、スカートを少しめくって足をなぞる手の感触がして、ぼんやりしていた頭がふっとんでいくようだった。内側の太ももなでる手が、え、えろい。手はどんどん上へあがってきてパンツの上をなでるように動く。びくびくってせわしなく私の体は震えて、だんだん恐怖がよみがえってきた。やばい、どうしよう。緊張とか恥ずかしさとか、やっぱり恐怖とか、とまんない。泣きそうってほどじゃないけど、恐くて逃げてしまいたい。でも、でも、我慢しなきゃ。



「は、はあい…」
「無理すんな。顔真っ青。ここでやめとくか?」
「だ、だめ!」
「そんな顔してなに言ってんだよばーか」
「ご、獄寺が落ち着かせて。不安とか、恐いのとか、吹き飛ばしてよ」


泣きたくなった。どうして必死でとめているんだろうか。せっかく獄寺がやめてもいいと言ってくれたのに。なんでか、だめだと思った。今日やらないと一生できないような気がして、逆に恐かった。えっと、つまり私は獄寺としたいのかなぁ。さっきからの獄寺はとっても優しくて、今日だけで昨日よりも獄寺を二倍くらい愛している。そんな獄寺を信じたいし、気持ちよくさせたいし。無理なんかじゃない。これってきっとすごく素敵なことなんだ。私の体が獄寺を求めて、もっともっと、知りたくて、特別がほしいんだ。獄寺が優しく笑って私にいっぱいいっぱいキスしてくれて、キスが終わると私の腕をとって自分の首に絡めた。


「恐くなったら思い切りしがみつけ」


そう言ったとたん、またスカートの中に手が入ってきて、すぐにパンツの上をなぞる。思わずぎゅうっと首に抱きついたら、パンツをさわっているほうとは逆の手で私の頭をすごく優しい手つきで撫でてくれた。ああ、なんか、獄寺のこと好きすぎて、今なら何されても良い気がしてきた。獄寺が喜ぶことならなんでもしてあげたいと思える。これって素敵なことじゃないか。パンツの上から足の間の部分を撫でられるたびに、弱いびりびりが私の体中に響いて小さく声をあげることになる。へ、変な感じ。たまに獄寺がキスをしてくれて、私はもう獄寺が好きすぎて頭がおかしくなってしまうんじゃないかと思った。じわり、パンツに温かいものが染みた。え、うそ、もしかして私、おしっこ漏らしたとか、ないよね…?


「ご、ごく…!」
「気持ち良い?」
「え、や、あの」
「ちょびっと、濡れてきた」


あ、ああ、漏らしたわけじゃないのか!これが世にいう濡れるって感覚なんだろうか。変な感じ、恥ずかしい。力抜け。小さい獄寺の声が聞こえて、何が起こるんだろうと思った。思っていたら、ぱ、パンツの中に手が入ってきて、誰にもさわられたことのない部分に獄寺の手がふれて、なんだか、気が狂いそうだった。恥ずかしすぎる、恥ずかしすぎる。なんだこれ、ちょ、獄寺どう思ってんのかな。な、なんかどうしよう恥ずかしくてしょうがない。恐いとかより、恥ずかしい。さっきまでパンツの上から触られていたところを直接なでられて、私は小さく悲鳴みたいなのをあげてしまった。だ、誰か助けてください。恥ずかしくて死んじゃいそう。つぷり、間を分け入るように、中にゆっくりと指が入る。ちょびっとだけ入って、出て、入って、出てが繰り返される。それだけで私はあられもない声をあげてしまっているんだから、頭おかしくなっちゃったのかもしれない。


「痛くねえ…?」
「痛く、ないけ、どぉ…っ、ひっ、ぁっ、変な感じ…!」
「どんな?」
「びりびり…!」


わかんねえよ。ちょっと笑い声が混じった声が聞こえて、今までぎゅっと閉じていた目を少しだけ開けてみたら、すごくきれいな獄寺の苦笑した顔があって、目を閉じていたことを少し後悔した。獄寺のこんな顔、見なきゃ損だ。でもあんまり見てられない。恥ずかしいし、獄寺のこともっともっと好きになってしまいそうで、だめだ。ゆっくり、本当にゆっくりと指が奥に入ってきて、指が動き続けている間、私はずっと息を止めていた。指が全部入りきったところでやっと止まって、私はほっと息をついた。そんなに痛くない。でも変な感じ。異物感?気持ち悪いってわけじゃないけど、変な感じ。指がもう一度抜けてしまいそうなところまで引かれて、また奥まで入れられて、それが繰り返される。少しずつ速くなりながら。


「あ、ひっ、ご、くで、ら、ん、ぁ」
「お前、声えろ」
「しょが、な、ひい…っ」
「指増やすな。力抜いてろ」


指が出て行ってしまって、なんでか私は少し物足りなさを感じた。ああ、出て行っちゃった。そう思っていたら、今度はもう少し重みのある、大きなものがゆっくりと入ってきた。ちょっと、きつい、かな。痛くはないけどきゅうきゅうする。さっきみたいに出たり入ったりが繰り返されて、そのたびに、ぴちゃ、ぴちゃって音がして、なんだかもう恥ずかしすぎて気を失ってしまいたいと思った。でもそんなことは絶対にできそうにない。だって、今の私は声が枯れそうなくらい喘いで獄寺にしがみついているんだから。出たり入ったりだけじゃなくて、ぐるぐるかき回すみたいに動き出した指に翻弄される。ぐちゃぐちゃだ、もう、頭も獄寺が触ってるとこも、ぐちゃぐちゃ。そんで両方とも原因は全部獄寺にある。獄寺をこんなにも好きにさせるのが悪い。ああ、なんだろう、この変な感じになれてきたんだけどなんていうか、気持ち良いかも、しれない。もっともっとって求めてる自分がいる、気がする。手を止めてほしくない。気持ち良い。


「あ、やだ、も、きもち、い、よぉ…っ」
「気持ち良いか?」
「ん、ぅ、もだめ、壊れちゃう…!」
「はえーっての」


もう一本指が増やされる。きっと今は、三本くらい入っているんだと思う。一本よりも二本よりも、三本の重みはやっぱりちがって、最初入ってきたときはちょっと痛くて思わず小さな悲鳴をあげた。獄寺はすぐに気付いてくれて、そのまま動かさずに待っていてくれた。ちょっとして、慣れてきてから動かしだす。ああ、一本よりも二本よりも重みのちがう三本は、一本よりも二本よりも、重みの分なれたら気持ち良くて、もう音はべちゃべちゃぬめった音がしていた。ああ、お尻が湿った感触がある。シーツ濡れていたらどうしよう。恥ずかしいなぁ。



「ん、な、あに…ひぁっ」
「今日は指だけにしとくか?」
「ふぇ、ぁん」
「決めといてくんねーと、俺が、期待する、し…」


期待、期待って言った。こんなふうに私ばかり気持ちよくしてもらっているけど、今の獄寺はするばかりで自分は気持ちよくないよね。やっぱり、したいよね、最後まで。私もなんだか、もっとほしくなってしまっている。もっと獄寺がほしいよ。こんな気持ち良い思いを私だけしているのはずるい気がしてきた。それに、獄寺にも気持ち良くなってほしい。一緒に気持ちよくなれるなんて、最高に素敵じゃないだろうか。ひとつになれるって、素敵なことじゃないか。獄寺、獄寺、今はもうあなたのことしか考えられない。ただ、ほしい。


「獄寺、いっしょ、に、きもちよく、な、ろ…?」
「お前、それがどういう意味かわかって言ってんのかよ」


ただひたすら頭を縦に振ったら、指がゆっくりとまっていって、抜かれはしないものの動かなくなった。本当にいいんだな。確認の声。私はしっかり目を開けて、獄寺をみつめて、一度だけ、小さくうなずいた。優しい唇が私の額にふれて、それから指が引き抜かれた。一緒にパンツもおろされて、なんだか急に不安がわいてきた。おお、ついに、するのかな。のっそりと起き上がった獄寺はなんか引き出し開けだして、そっから何かを取り出していた。パッケージ、見えた。普通の箱にみえるそれは、コンビニとかで見たことある。最初みつけたときは顔から火が出そうなくらい恥ずかしくなった。獄寺がそのふたを開けて、ひとつのビニールみたいなちっちゃいのを取り出した。あの中に飴が、入ってるわけないよね。実物見るのははじめてだなぁ。そのままそれを目で追っていたら、獄寺がベルトをはずしだすからあわてて目をそらした。いや、あの、み、見れるわけない、よ、ね…!は、恥ずかしい。コンドームちゃんと持ってるんだ、獄寺。当たり前か、じゃなきゃできないし。避妊はちゃんとしないと、後悔するの自分たちだから、うん。でも、持ってたの意外かもしれない。いつでもできるように、用意してたんだろうか。つまり獄寺はいつでも、やる気、満々だったってこと…?ずっと待っていてくれたんだろうか。「、足広げろ」低い、甘い声が聞こえた。ついにきました、この瞬間が。


「できるだけ力抜いてろ。痛み感じたらゆっくり息吐け」
「ご、獄寺…」
「なんだ、やめっか?」
「ちがう。あの、えっと、しがみついてても、いっかな…?」


そう聞いたら、獄寺は優しくふっと笑って、殺すくらいの力でもいいからって言った。かっこいい。男らしいなぁ、獄寺。やっぱり男の子で、私の素敵すぎる恋人だ。私の足を持つ手、は、恥ずかしいなぁ。ゆっくり、息を吸って、吐いて。「いくぞ」心臓の音がうるさい。あったかいものが、押し付けられるみたいにぐっぐっぐって入ってくる。い、痛い。きつい、痛い痛い痛い痛い痛いきつい。せまいよ。な、なにこれ、やだ、ぐぐぐって、すごい、重みが。指なんか比にならない。獄寺が私の腰をつかんで、引き寄せる。い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い。目が開けられなくて、濁点がつきそうな声と悲鳴をたくさんあげた。獄寺の呻き声みたいな、うっ、とか、ぐっ、とか、聞こえたけど構ってられなかった。とにかく獄寺にしがみついて痛みにたえるしかなかった。歯を食いしばって、まだ痛みは続くのかと頭の隅で思った。獄寺がとまったのは、それからすぐだった。じんじんじんじんまだ痛む。目をゆっくり開けたら、視界はぼんやりしていて、そこでやっと私は泣いているんだとわかった。獄寺の顔は苦しそうにゆがんでいる。


「は、っ痛い、か…?」
「い、た、いたい、よぉ…っ」
「ごめん、な」


ぼろぼろ泣いている私の目にキスをするたびに、ひどく痛んだけどあえて言わなかった。キスはしてほしかったし、痛いと言ったらまた獄寺が悲しそうな顔をして謝る気がしたから。どうして謝るんだよ。なんにも悪いことしてないのに。ああ、お腹がいっぱいって言ったら表現はおかしいけど、そんな感じ。獄寺がちょっと動くたびに揺れて痛む。ああ、やっぱり痛かったんだね。もう、抜くのも恐い。あんだけ痛いのがまたきそうで、こわい。もうこのまま一生動けないんじゃないかと思った。どうしよう、それは困るなぁ。痛いのもうちょっと我慢すればいいだけだ。だけど今すぐにはちょっと無理、痛すぎた。すごく疲れて、ちょっと眠い。


「ご、めん、ちょ、うご、く…っ」


獄寺の苦しそうな声が聞こえて、一番奥まで入っていた大きなものがゆっくり引かれて、中を引っかかれるみたいに痛みが走った。でもさっきよりも少し、痛くない。それがまたゆっくり入ってきて、ゆっくりゆっくり出したり入れたりが繰り返される。ああ、うう、痛い、でも、指のときよりも大きい変な感じが、私を襲う。むずむずするみたいに、うずく。出し入れが速くなって、痛みなんてもうわけがわからなくなった。ぱん、ぱん、ぱんって音が耳に届いているのに、頭に響いているのに、私は別世界へ飛んでいるかのような錯覚に陥る。ああ、壊れそうだ。気持ち良い。こすれて痛いはずなのに、もうわけがわからない。溶ける、溶ける。熱い熱い熱い。獄寺、獄寺。


「ご、く、でらぁあ…!」
「ばっか、な、まえ、よ、べ」
「は、はや、は、は、はやと、ぉ…っ」
「ぅ、くっ」

ぱーんって、頭がはじけたみたいに真っ白になった。私の中でびくびく震えた獄寺を感じて、苦しそうに吐かれた獄寺の吐息を感じて、それから、飛んだ。意識がどっかーんって飛んでしまって、私は本当に真っ白になってしまった。私は溶けてしまったんだろうか。もし私が溶けてしまったら、獄寺に飲んでもらいたい。獄寺に吸収されて、獄寺の一部になって、いつでも獄寺と一緒にいるんだ。


残念なことに、目が覚めた私にはまだ体があった。上体を起こしたら下っ腹と足の間がひどく痛んで、やけどでもしただろうかと勘違いした。起きるのがつらくてまたベッドに横になったら、獄寺がこっちを見ていてびっくりした。なんだ、どっかいっちゃったのかと思ってあせった私は馬鹿ですか。ぷかーって煙草をふかしているのが変に大人びて見えて、さっきまでしていたことが夢だったような錯覚する。煙草を灰皿に押し付けてから窓を閉めてこっちへよってきて、私のおでこを撫でた。


「いてえのか」
「みたいね」
「ご、めん…」
「気持ちかった?」
「うるせえ黙って寝とけ」


顔が赤いぞ獄寺。可愛いやつめ。ああ、でも今日は本当に疲れました。はじめて、したけど、なんかすごい、達成感みたいな。終わってよかったってほっとしている自分がいて。あとやっぱり、獄寺と繋がれたのが嬉しいと感じる自分がいて。獄寺が、口には出さないけど気持ちよかったみたいなんで満足です。これからちょっとずつなれていって、一緒に気持ち良いってなれてくといいなあ。なれるかな。そのためには回数こなさなきゃだめかな。次はまだ痛いかなぁ。痛くても、いっか。なんか、痛くてもつながれるって幸せだから。嬉しいから、さ。獄寺のこと愛しいって思いまくれるし。大好きで大好きでしょうがない人の苦しそうな、だけど気持ちよさそうな顔を見れるのは私だけだって思うと、やる気出る。とにかく、獄寺を愛して愛して愛しすぎているということを、今日とても知りました。



、愛してる」



不意打ちはないぜマイダーリン。





20070410(キスもセックスも理屈じゃない、心の底から相手を欲する衝動なのだ)