「僕と付き合いなよ」
「は?」



みなさんこんにちは、です。ちょっと困った事態になりましたのでご報告します。よければ対処を教えていただけないでしょうか。誰かヘルプ!
えっと、とりあえず今の状況を軽く説明することにします。物理の教科担当である、割りと私と仲良い雲雀先生に放課後、理科準備室まできなさいって言われて、怒られるんだろうかそれともこの前小テストで満点とったのほめられるんだろうか何にしても雲雀先生に呼び出されるとかドキドキだなーとか思っていたら、机に腰掛ける雲雀先生が物思いにふけっていて、どうしたんですかと声をかけてみたら、表情ひとつ変えずにこういった。僕と付き合いなよ。一度聞いただけではすぐに理解できなくて、思わず先生に対しては不適切な声が出てしまった。「は」だって、なんか鼻で笑うみたいな言い方だ、先生に失礼だ。でも、未だに理解できない。僕と付き合いなよ。どういう意味でしょう。いや、この言葉から連想されるシチュエーションみたいなのはあるけど、でも、ありえないでしょう。うんそれはない。あ、わかった!私はきっと聞き間違いをしたんだ。「僕と付き合いなよ」じゃなくて、雲雀先生は「僕に付き合いなよ」って言ったんだよ!きっとそうだ!たぶんなんかお仕事手伝えみたいな感じだろう。みんなは雲雀先生が恐いとかいうけど、私はそんなこと思わないしむしろ仲良しだし。うん、まあ仲良しとか私が勝手に言ってるだけなんだけどね。あ、これなんかむなしいな。まあいいや、とりあえず聞き返すとか失礼なことせずに自分で理解できてよかった!



「はい!何をすればいいでしょう」
「何かしたいの?は」



私が元気よく返事をしたら、雲雀先生はちょっとびっくりした顔をしてから首をかしげた。何かしたいのってなんですか。何かさせたいんでしょう?あれ?付き合えって言いましたよね。付き合いますよ、何にだろうな。というかそれよりびっくりしたのがって呼ばれたことだ!ひ、雲雀先生に名前で呼んでもらえた!私の苗字ってそんなありきたりってわけでもないからかぶったことないんだよね。だから男子とか先生とか名前で呼ばれたことないし。なんだか新鮮だ。でもどうしたんだろう?急にって名前で呼ぶなんて、雲雀先生がっていうのがレアっぽくて感激だ!にやにや頬の肉が緩んでしまいそうなのをきゅっと抑えてから私も首を傾げてみた。何かってなんだろう。先生の次の言葉を待っていたら手が伸びてきて私の頬に添えられた。お、おお!先生の手が私のほっぺに「たとえば」はい?



私は馬鹿だ。びっくりして逃げる余裕も、目を閉じる余裕も、抵抗する余裕もあったはずなのに、私はどれ一つできずに固まって雲雀先生がすることをただ見ていたんだから。どんどん近付いてくる雲雀先生の顔はきれいで見とれた。だけどすぐに現実に引き戻されるような感触。すっごく痛かったわけじゃない。ただ、ふにゃってしただけ。先生が私にキスした、だけ。キス?お、え、キス?キスってこういうことをいうんだろうか。私は人生でキスなんて体験したことないからよくわからない。私が夢見ていたのは、好きな人とのファーストキス。もっと、なんかあるかと思ったら、意外にキスってあっさりしてる。あれ?でも待って、あれ?あっさりと通り過ぎてしまった私のファーストキスの相手は、だれ?



「せんせ、いま、なにしました…?」
「キス」
「へああああああああ!?」



あっさり認めたよこの人は!てか、なにやってるのこの人まじで。私が真っ赤になって口をぱくぱくしていたら雲雀先生は楽しそうに目を細めて笑っていた。笑った顔なんてめったに見たことない、なんか、心臓ばくばくでおかしくなっちゃいそう。先生の手が伸びてきてびっくりして目を閉じたら首に腕がまわってぐって引き寄せられた。わ、わ、また顔、近いよ。こ、これってセクハラなんじゃないだろうか雲雀先生がまさか生徒にセクハラするなんて思ってもみなかったぞ先生はもっとなんていうか紳士的な人だと思っていたのに心外です!あれ、生徒にちゅうすると紳士的じゃないのかな?あれ?そもそもセクハラってなに?おっぱいとか触るの?触られてないし、手と手が触れたとかそんなのは今までもあったし、ちゅうもそれに含まれたりするんだろうかそうだったらセクハラじゃないよねセクハラなんて言ったら先生がかわいそうなのかもしれない。いやでも、なんでキス!?



「ななななにゆえ、きききキスなんか」
「何かしたかったんでしょう?」
「付き合えってせせせんせいが」
「うん、僕と付き合って」
「…え?」
「僕と付き合って」



二回言われた。僕と付き合って。僕と付き合って。と?と?僕にじゃなくて僕と?僕に付き合ってじゃなくて僕と付き合って?え、あの、ちょっと待ってください。一文字ちがうだけで、意味が全然ちがってくる。僕と付き合ってって、どういうときに使い言葉だっけ。僕と付き合って、僕と付き合いなよ。これってさ、告白のときに言う言葉じゃないんですか。あれ、あの、それ以外のシチュエーションが思いつかないのは私の頭の中身が貧相だから?私がただただびっくりして口をぱっくり開けたままで固まっていたら、雲雀先生も驚いたみたいに目をぱちくりさせてた。



「お付き合い…?」
「うん」
「雲雀先生は私と、交際しようと」
「交際って」



先生が私を馬鹿にするみたいに笑った。あれ、やっぱり勘違いだった?私の頭が貧相なだけだったのか。じゃあ、どういう意味なんだろう。急に恥ずかしくなってきた。そうだよね、先生が生徒に告白ってそんな、漫画みたいなことがありえるはずないじゃないか馬鹿なを誰か殺してください!いや、やっぱりまだ死にたくないから一回殴ってください!痛いのもあんまり好きじゃないけど、恥ずかしすぎて早くこの場から逃げ出してしまいたい。でも、ちがうんだって思ったらなんだか残念みたいな、胸の奥の部分の熱が一気に冷めるみたいな、変な感じがした。じゃあなんで、キス、なんかしたんだろう。「うん、交際しよう」は?



「ひ、雲雀先生!生徒をからかうのはおおおよしになってください!」
「およしになって、なんて久しぶりに聞いたな」
「じ、純粋な生徒にそんな冗談いって楽しいですか!?」
「冗談じゃないよ。ある意味楽しいけど」



冗談じゃないよって、ことは、なに?本気なんですか。交際?交際ってなんだっけ、わからない。私の頭が貧相なせいですか。わからない。雲雀先生のせいで私の心臓はとっても忙しく動いていて、もうなんだか頭が沸騰してしまいそうだ。頭まっしろになって気絶できたらいいのかもしれない。いやでもしたくない気がする。あれ、もしかしてこれは夢だろうか。



「僕の言い方が悪かったみたいだから、特別にもう一度だけ言ってあげる」




「君が好きだよ」





だって、すきだから




「ちなみに、一度はいと言ったんだから拒否権はないから」
「もうすでに決定事項となっているんですか!?」


20070419(なんだか続きそうです。シリーズ化?)