うん、うん、えっと、え?ああ、だめだ一日たった今も頭がぐるぐるしてなんにも考えられない!昨日、うん、えっと、なんだっけ。昨日はあれだよ、ひ、雲雀先生から付き合いなよとかいわれて、なんだかよくわからない間に付き合うことになっちゃった、らしい。先生とこういう関係になったことなんて、私の今までの人生に経験したことがあるはずもないし、なんかもうわけがわからないんですが。あれから先生にもう一回キスされて遅くならないうちに帰りなさいとかいわれて何も言えないまま帰ったけど、先生のことがずっと頭ぐるぐるして眠れなかったし、よく考えたらこれってやっぱりいけないことなんじゃないかとか思ったらなんか恐くなって先生仕事クビとかなったらどうしようとか考えて、もう、眠れるわけないじゃないか!だからって、授業中ぐっすりというわけでもなく、授業内容なんてまったく頭に入らないかわりに先生のことがエンドレス。だんだん頭痛くなってきた。




「は、はい!」
「前に出てこの問題を解いて」



いつの間にか、物理の時間になっていたようだ!うっわ私ってば二時間前の国語の教科書をずっと立てて国語の教科書とにらめっこしながら先生のこと考えてたよ。国語の時間が終わって世界史の授業中も国語の教科書みてたのか私は!は、恥ずかしいよく先生に怒られなかったもんだ。そして今は物理の授業。黒板を見たらわけのわからない式やら言葉やらが並んでいて、今まさに先生は黒板の左側半分を消して私の解くべき問題の文章を書いていた。絶体絶命だ!口をぱくぱくさせていたら先生が「早くしなさい」ってちょっと低い声で言った。雲雀先生、私はあなたのことで頭いっぱいになって悩んでて頭痛くなるくらい悩んでいるっていうのになんですかその態度は!誰のせいでこんなことになっていると思っているんだ馬鹿!いや、あの、ごめんなさい先生に馬鹿とか言ったことは謝りますからせめてここは見逃してください。まったくわけわからないです、はい。とりあえず席を立って前に出ても、問題文からしてもうわけのわからない言葉が書いてあって、どうすればいいのかわからない。チョークを持って黒板をみつめていたって何がわかるわけでもなくて、呆然と立ち尽くしていた。



「わからないの?」
「は、はい…」
「さっき僕が黒板に書いた公式を用いれば簡単なはずだけど。君は授業きいていたのかな」
「すみま、せん」
「もういい、戻りなさい」



先生のあきれた声が、すっごく寂しかった。ごめんなさい、ごめんなさい先生って心の中で繰り返して、ああ先生の授業大好きだからちゃんと聞いていればよかったのに馬鹿だな私の馬鹿って何度も思った。ああ、悩みと授業は別ですよね。ちゃんと先生の言うことは聞いていなきゃ。先生、ごめんなさい。どうしよう先生に嫌われたら、どうしよう。今まで、ちょっとはほかの生徒より仲良くしてくれているかなって、光栄だなって思っていたのに、それがもう終わりを告げてしまうんだろうか。昨日の今日で、嫌われてしまったらどうしよう。どうしよう先生、ごめんなさいごめんなさい。結局、先生に嫌われてしまったかもと思ったら残りの授業も聞いていられなくて、いつの間にかチャイムが鳴っていた。



、放課後に職員室にきなさい」



雲雀先生の声が教室に響いて、それから間もなく出て行ってしまった。ああ、どうしよう、さっそく別れ話をきりだされたら。いや、これはもしかしたら私にしたら都合がいいことなのかも、よ?先生と付き合うのは私の意思じゃないし、先生が無理やり。でも、でも悲しすぎる。なんでかわからないけどそんなのいやだ、別れたくない。お別れなんて告げられたくない。もう、わかんないよ先生。どうしてくれるんですか。あとの授業は、もう本当に、あっという間に終わった。放課後、今日にかぎって掃除当番でもなくて、できることならもうちょっと心の準備をしてから行きたかった。心の準備というのがどういうふうにするのかもよくわからないんだけど。先生を待たせるってことはとっても失礼なことなんで、ホームルームが終わって重い足を引きずって職員室に行った。



「ああ、きたね。ついておいで」



職員室で書類をいろいろ整理していたらしい先生は、私を見たらちょっとだけ口角を上げて席を立った。そのまま先生の後ろをついていったら、どこへ行くのかと思えば理科準備室だった。昨日とおんなじシチュエーション。昨日とまったく同じ場所で、同じような時間帯で、ふられるんだろうか。いやだから、どうしてショックなんだよ。私は別に、先生のこと、好き、じゃない?いや、好きだけどそれは先生に対しての好きで、恋愛対象としては、恋愛?恋、好きってなんだ。でも、とにかくお別れなんてしたくない。



「どうしたの」
「え?」
「顔色が悪い」
「せ、先生、あの、呼び出しの用件、は」
「理由がなきゃ呼び出しちゃいけないの?」
「は?」
「君と二人になりたいから呼び出した。これじゃ用件にはならないのかい?」
「いや、あの、え?」
「あえて理由をつけるというなら、君の目の下の隈が原因だよ」



今日の先生は、すごくよくしゃべる。なんだろう、どうしよう嬉しい。先生、あの、心配してくれたんだ。先生は本当に、私のことが好きなんだ。うわあどうしよう、なんだか胸のあたりがきゅうってなった。とてつもなく嬉しい。



「それで、どうしたの」
「昨日眠れなくて」
「どうして?」
「先生、私と付き合って、学校クビになったりしない?」
「するかもね、この職業で生徒との恋はご法度だから」
「それでも私に告白したのはなんでですか」
「危険を冒してでも手に入れたかったからだよ、



胸のあたりがまたきゅうってなって、顔が熱くなってくる。




「先生、私も好きみたいです」





だって、恋みたい




「うん、知ってる」
「ええ!?」


20070423(大して話が進んでいないという罠)