「いだっ!」
「瘤ができてる。あれだけ大きな音がしたんだから、当然か」



理科準備室。椅子に座らされて、雲雀先生は私の目の前に椅子を置いて座って、私の前髪をあげてたんこぶを撫でる。びりびりした痛みが 私の頭に響いてくらくらした。たんこぶさわられたせいだけじゃない、きっと、さわられている手が雲雀先生のものだからだ。おでこさわ られている部分が熱い。雲雀先生、雲雀先生。だめだ、変なこと考えちゃう。そんな資格ないのに。でも、それでも、思う。キスしてほし いなって。ばかだなあ、その前にすることがあるでしょう。お話しなくちゃ。それで白黒はっきりさせて、お別れ、お別れを、しなきゃ。 そう考えたとたんに涙がじわじわ浮かんできた。いや、これはきっとたんこぶさわられてるのが痛いからだよ!うん、そうに決まってる。



「彼女」
「ん」
「彼女いたんですね」
「は?」
「先生にとって、私は、なんでしょうか」



恐くて顔があげられない。先生がどんな表情で、どんなことを思っているのか、知りたくて聞いたくせに、恐くて聞きたくない。なにそれ、 ずるいよ私。できることならこの場からダッシュで逃げ出したい。でも、できるはずない。そんなことして一番後悔するのは私だもん。私 が一番答えを知りたがっていて、今聞いたのに、逃げ出したら意味がない。がんばれよ、がんばろう。でも、やっぱり恐いので、早く 言って、ください。私の両頬にふれる両手があって、ゆっくりと上を向けられた。てのひらの温度が心地良い。だめだ、よけい泣きそうに なってきた。今は優しくしないでほしい。先生に未練がたくさん残ってしまう。今でもどうしようもないくらい未練だらけなのに、これ 以上増えたら私はどうすればいいんだ。先生が好きすぎて、おかしくなりそうです。



「私はずっと、先生と私は恋人同士なんだと思っていました!」

「雲雀先生に言われた付き合ってって意味を、私は一人勘違いしていたんでしょうか」
、待って」
「三浦先生っていう可愛い彼女がいるのに、生徒をからかって遊んでちゃ、だめですよ…っ」



何か、重要な糸がぷつりと切れたみたいに、涙と感情が表にあふれて、抑えがきかない。だめだ、そう思って立ち上がって、逃げ出した。 最悪だなあ私って心のどこかで思いながらかけだした。かけだしたのに、私の腕を急にぐっと引っ張る何かがあって、私は引かれるがまま に後ろに倒れこんで、そのまま何センチかずるずると引きずられた。な、なんですか!こんなひどい顔みせたくないのに。これ以上変な こと言わないように逃げたいのに、どうして引き止めるんですか。嫌いになってほしくなんかないのに。嗚咽を抑えながら雲雀先生を 見上げると、とても不愉快そうな顔をしていた。ほら、ほら、そんな顔、見たくなかったのに。ひどいよ。



「自分の言いたいことだけ言って、人の言うことは聞かずに逃げるのか」
「ひ、ご、ごめんなさ、い、お話なら、明日にでも」
「いま」
「でも、あの、わた」
「うるさい、黙れ」



恐かった、声が、確実に怒っていた。どうしよう、ああ、もう、恐い。ごめんなさい、馬鹿でごめんなさい。勘違いしてごめんなさい。



「どこをどうしたらそういう考えにたどりつくんだ」
「ご、ごめ、ごめんなさい、貧相な頭で」
「うるさいって」



急に腰のあたりをつかまれたと思ったらそのまま抱え上げられて、びっくりする間もなく机の上に座らされた。なんて軽々持ち上げるんだ! 雲雀先生のそういう行動が私を勘違いさせるって、わかりませんか。雲雀先生が私のお尻の横に手を着く。逃げ場がない。それに顔が、 近い、です。



「教員の三浦とは付き合っていない」
「でも、一緒の車で」
「あれは学校からの仕事で買出しにいっていたんだ」
「じ、じゃあ彼女がいるっていうのは」
「君のことを言ったんだけど」



きみ、きみ?君って何ですか。ぱちくり目を瞬かせたら、あきれたみたいにため息をつかれた。彼女イコール君。きみ、君ってここでは 普通私のことを指す気がする。私、は、雲雀先生の彼女、でしょうか。あれ、それが間違っていたから私は今日一日悩み続けていたんだ けれども。あれ?私の考えていたことは勘違いじゃなかったってこと?



「まさか、君がそこを疑うとは」
「あ、あの、私は先生の恋人なんですか」
「怒るよ?」
「ひいい!どっちの意味でですか」
「馬鹿、恋人だよ彼女だよ。僕の大切な女の子。これで十分?もう疑わない?」



圧倒された私が、ちょっとだけうなずくとそのまま唇を食べられた。キスっていうか、食べられた。先生の唇で私の唇をはむって、は、 はむ!?ちゅうって吸われるみたいに、っていうか吸われてて、こんなのはじめてで、これもキスに含まれるんですか!?うわあなにこれ 誰か助けてください!とか思っていたら、べたっとする温かいものが唇にふれて、ふれるだけにとどまらず私の唇を舐めまわしてそのまま 口内に侵入してくるではありませんか!ちょ、ちょ、ま、なに!?なにって、そりゃベロなんだろうけど、ベロを口の中に入れられたこと なんて生まれてはじめてだよ!?ベロがそのまま私のベロを引っ張って遊んで舐めて遊んで、もうとにかくわからないんですがなんですか これひいひい。とにかく戸惑ってしょうがなくて、とにかく口を離そうと必死で、先生の肩をつかんで後ろに押すのにびくともしなくて、 逆に私の腕をつかまれて固定されてしまう。せ、先生ちょっと待ちなさい!は、破廉恥な!だんだん息苦しくなってきて、命の危機を 感じてきた!とにかく離れようと体を後ろにやるのに先生は追っかけてきて、そのうち先生の腕に力がこもってそのまま押し倒されてしま った。う、うわ!何事だよ!ちょ、頭打った。地味に痛いですいたた。でもそんなこと構ってる余裕なく先生の舌が暴れまわる。う、うわ ああああ誰かこれ止めてえええ!



「こんなこと、好きな子にしかしない。わかった?」



やっと離してくれたかと思えば、勝ち誇った顔で自分のべたべたになった唇をぬぐってそういった。え、えろ、エロ魔人だ。今日山本先生 が間違えてもってきたエッチなビデオくらいエロい!エッチなビデオの内容なんてぜんぜん見てないし、記憶にも残ってないけど、きっと 今の雲雀先生はそのくらいエロい!目がみょうに輝いていて楽しそうだし、なんか、私をいじめて満足げだし。う、うわあああああ顔に火 がつきそうだ。なんて破廉恥なことしてるんだエロ教師!このエロきょうしいい!ご、ごめんなさい。謝りますから神様どうか今言った こと雲雀先生に伝えないでくださいね。聞いたらきっとあきれて怒られるか、もしかしたらもう一回同じことされていじめられるか、ど っちかなんだから。もう一回は持たないです、なんかいろいろ持たないです。



「す、好きな、子…」
さん。君が僕の生徒で僕の好きな子僕の恋人、僕の彼女、僕の一番大切な子。全部のことだよ」
「ひば、り、先生の、物好き」
「本当にね」



そこは嘘でも、物好きじゃないって言うところですよ。馬鹿、雲雀先生、好きだ。





だって、間違えた




「それにしても、なかなかおいしい体勢だよね」
「せ、せ、先生の破廉恥いいいいああ!!」


20070514(続きは検討中)