もういいよ。その言葉の重み、が、こわい。先生、それはどういう意味で言ったんですか。私、私はまた、変な意味で考えてしまう。変な 意味、って、なんだろう。先生、ごめんなさい。ちがうんです。私はあなたのことが誰よりも何よりも好きだっていうのに。あなたは私 に、それを疑うことを怒ってくれました。それがとてもうれしかったっていうのに、あなたが疑うんですか。疑われる私が悪いんでしょう か。ああ、落ち込む。ちくしょう、なんでだよ。なんで補習なんか受けなくちゃいけないんだ!私が、ばかなのがいけないんですよね。 はい、わかってますけど、今日でなきゃ留年とか、厳しすぎるでしょう!うああ、もう、もう、獄寺先生の、獄寺先生の、



「獄寺先生のばかー!」
「てめえ喧嘩うってんのかおら!?」



私が叫んだらちょうど獄寺先生が教室に入ってくるところで、う、うわ、びっくりした!と思ったら怒られて私の机をがん!って蹴られ ました。ひ、ひい!ドメスティックバイオレンスだ!



「俺が説明したあとにテストやっから、それで満点とれなかったら留年決定な」
「先生、あの、脱ぎますから許してください」
「ばっ!てめ、お、女の子は自分の体大切にしなさい!」
「ご、獄寺せんせー声裏返っちゃってますけど!?」



は、腹踊りはだめだったか。お父さんがこの前の社員旅行でやったらうけたんだーはっはっはみたいなこと言ってたから、いけるかなって 思ったのに獄寺先生の顔を真っ赤にして怒られてしまった!なんてことだ!怒られないために笑わそうと思って腹踊りを提案したらもっと 怒られたって、私はばかでしょうか。獄寺先生が咳払いをして、黒板の前に立った。補習、私だけだったんだ。ため息をつきながらノート を出していると、獄寺先生が私のノートをのぞきこんできて、鼻で笑った。ひ、ひどい!眠気に耐えつつ、ここで寝たら確実に殺されるぞ と思いながら黒板に書かれたことを必死でノートに写し、理解できないけどとにかく写し、解説なんて聞かずに雲雀先生のこと考えちゃ ってるけどがむしゃらに写した。頭に入ったかといえば、もちろん入ってないわけで。



「よし、ここまでをテストすんぞ」



チョークの粉を払うように、ぱんぱんと手を叩く獄寺先生。あ、このテスト終わったら帰れるかな。時計をみたら、最終下校時間までまだ 少し時間があって、もしかしたら雲雀先生に会いに行けるかなと思った。会ったら誤解をといて、雲雀先生が一番好きだって、伝えられ る、かな。うわ、恥ずかしい!とにかく会えたら、えっと、元気をもらおう!最近は雲雀先生不足で困ってます、うんきっと。テストが終 わってからでもいいかな、会いに行くの。雲雀先生が誤解するとかイメージできない。いつでも正解をしってて、大人な先生。誤解してる なんていうのが実は誤解だったりするのかな。テストをひっくり返して名前を書いて、一番最初の問題を見て首をかしげた。



「あの、獄寺先生」
「あ?なんだ」
「問題まちがえてませんか?」
「あってんだろ。なにいってんだ」
「一桁のたしざん、ひきざん、かけざんわりざん。これですよ?」
「お前そんくらいしねえと満点とれねえだろうが!」
「え、満点って冗談じゃなかったんですか」
「まじ、まじまじ。お前今度の定期テスト赤点だったらまじでやべえから」
「獄寺先生のやべえきたー!?」



ご、獄寺先生がやべえって言った!獄寺先生のやべえには呪いがある、なんて言われている。理由はわかんないけどとにかく獄寺先生にや べえと言われた生徒にはよくないことが起こるって言い伝えがあるんだ!て、定期テスト本気で本気で頑張らないとだめかもしれない。 留年!?それは困る!だめなんです留年だけは!よしもういいほかの教科全部だめでも数学だけは力をいれてやる!あ、でも、物理落とし たら雲雀先生失望するかな。雲雀先生のことを少しだけ考えただけで、もう頭の中はそれだけでいっぱいになってしまう。雲雀先生、や っぱり疑ってるのかなあ。獄寺先生のこと、私が本当に好きだと思ったり、してないよね。シャープペンを左へ右へ、上へ下へ動かして、 解答用紙をうめていく作業がとても退屈に感じた。うわあ、数学の問題をこんなにたくさん解答するのなんて久しぶりじゃないだろうか。 テストも小テストも、いつも半分以上うめられていない気がするし。全部書き終わったところで、顔をあげたら獄寺先生と目があった。ま あ、かっこいい顔はしているわな。鼻高いし目の色黒じゃないし、髪は染めているのか色素が薄い。外国人みたいな顔してるけど、獄寺 隼人って日本人の名前だよね?ハーフだったりするのかなあ。やっぱり外国の血がまざっていたりすると、顔立ちがきれいなものなんだろ うか。あれ?でも雲雀先生だって顔立ちきれいだよね。でも目も髪も黒い。あれ?



「おっまえ、まじで小学生からやり直してこい!」
「はあ!?な、なぜに!」
「6+8は13じゃねえ!」
「ば、ばかですね獄寺先生。わ、わざとに決まってるじゃないですか!」

「は、はいな」
「1×0は?」
「いち?」
「お前なんて二度と進学できねえよー!」



いでー!獄寺先生が、がーん!って机蹴るからひざぶったー!ば、バイオレンスチックですよ獄寺先生!私どこか間違ったの!?獄寺先生 が間違っていらっしゃるんではないのですか!?キーンコーンカーンコーン。最終下校時間を告げるベルが鳴り響いた。





やっぱり、無理か




「うわん獄寺先生のばかー!嫌いだー!!」
「俺だってお前の馬鹿さかげんが嫌いだー!」


20070608(ばか×馬鹿は?)