ML戦記

001-開幕






「皆さんよろしくお願いします」

ピッチで挨拶しているのは、数十人の中のただ一人の日本人・椿一馬である。高卒ながら、イタリアの名門ACミランに引き抜かれて今ここに立っている。周りにはあのセレソンの10番「カカ」や、同じくセレソンの怪物「ロナウド」、中盤の要「ガットゥーゾ」「セードルフ」、イタリアの「ジラルディーノ」、世界最高CBの一人「ネスタ」など桁外れのタレントが揃っている。
外国語科で高校を過ごしてきたので日本語だけでなく英語、イタリア語、スペイン語が話せる。ちなみに通訳はいらない。

「Hey、ツバキ。よろしくな」

話しかけてきたのはイタリアのジラルディーノだ。優れたディフェンスを排出し続けているイタリアだが、彼のような優秀なフォワードも生んでいる。ジラルディーノは、椿に早くチームに馴染んでもらおうと考えて話しかけたのだろう。

「こちらこそ、よろしく」

椿は流暢なイタリア語でジラルディーノに話し返した。それに驚かされたジラルディーノはおぉ、と感嘆の声をあげてしまった。そしてそれから練習開始まで少しの間会話を続け、なかなか明るい雰囲気で話すことが出来た。
途中、アンドレア・ピルロも参加してきてあこがれだった二人と話すことができて椿はそれだけでも感激してしまった。やはり、オーラが違う。思わず身震いするほど、一般人とは違うオーラが出ていた。

「明日の開幕戦のフォーメーションを発表する」

ミランのコウータ監督が全員を招集し、練習前ながらもこう告げた。

「4−2−2−1だ。先に言っておく、トップはロナウド。シャドウ二人にカカとセードルフだ。後は今日の練習次第で決まる」

OK,ボス。と全員がうなずき練習が開始した。大体椿自身が予想していたフォーメーションだったがやはり凄い面子だな、と思った。しかし新人の自分が初めから準備するなど考えてもなかった。そこまで評価してもらえているとは……。
アップを終えて、一連のシュート・ドリブル練習を終えてチームは開幕を迎えようとしていた。





(つづけ)