ML戦記
002-カカの決定力
開幕戦 ACミラン
| ロナウド | |
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セードルフ | カカ |
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ヤンクロフスキ | ガットゥーゾ |
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| ピルロ | |
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マルディーニ | カフー |
ネスタ | スタム |
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| ヂーダ | |
朝、スタジアム。
椿一馬は、コウータ監督のスタメン発表を聞いてまずは予想通りだな、と頷いた。4−3−2−1のクリスマスツリー型のフォーメーション。それにしても凄い面子だな、と椿は呟いた。
「これじゃあ俺の出る幕はないんじゃないのか?」
この一声が聞こえたらしく、セレソンの栄光の10番を背負う「カカ」が話しかけてきた。
「ツバ、そんな風に思うなよ。君は僕と同じレベルにある選手じゃないか。何を気落ちする必要がある」
「そんなこと言われてもなぁ……カカは試合にスタメンで出られるじゃないか」
「まぁそれは言わないでくれよ。だったら」
「―――何をやってるんだ二人とも。そろそろ時間が迫ってるぞ」
カカと椿が話している間に、一人の男が割って入ってきた。偉大なるパオロ・マルディーニだ、もう数年しかプレーしないと言っておきながらも世界最高のディフェンスとして君臨する背番号3。この背番号3は引退後永久欠番になることが決まっている。
マルディーニが話しかけてきたことに椿は感動した。あの、あのマルディーニが自分に…・・・? 海外っていいもんだなぁ。
「すいません、ミスター・マルディーニ」
「何だよ、気持ち悪いなツバ」
「気持ち悪いなんていうなよ、これが日本流の謝り方なんだって」
「そうなのか? ツバ」
「えぇ、はい、まぁ」
椿はしどろもどろになりながらもクラブハウス内での会話を楽しみながらも、ゆっくりとピッチに向かって歩を進めていった。途中、インザーギやアンブロジーニなどといった世界の一流選手たちとの会話を交わしつつピッチに辿りついた。そして、椿をある大きな音が襲った。
声援である。
「……すげぇ」
これまで、自分が体験してきた物の倍はある。全国高校サッカー選手権なんて比じゃなかった。アウェーなのに、まるでホームの様な声援を受けた気分だ。心の其処に響いてくるこの声援に後押しされ、椿はピッチへ駆け出した。
※
そして試合は始まった。相手はマスターリーグの中でも中堅に位置する、マルセイユ。
まず試合開始直後、ロナウドが得意のシザースからドリブル突破を見せてゴールを脅かすも、キーパーに阻まれる。更にカカが稲妻のごとき高速ドリブルで敵陣を切り裂くも、得点には結びつかない。
また逆に、相手のカウンター攻撃にゴールを脅かされる。ボランチ・中田浩二からの絶妙な浮き球スルーが襲うもネスタの懸命のクリアで何とか回避することが出来た。だがミランも、マルセイユもチャンスを決めきれないまま前半が終了する。
(何してるんだ、全く)
後半、椿がアップを開始する。
「よし、そこだっ!」
「ナイスパス、セードルフ!」
セードルフの絶妙なスルーパスを受けてロナウドがワンタッチで押し込む!
「・・・なんだと?」
が、これは痛恨のオフサイド。ロナウドは思わず審判に両手を広げて「何でだよ」と抗議するもこれは実らない。
そして後半も終了するか、というその時。
「ロナウド!」
ピルロからのコーナーキックをロナウドが頭で合わせる! だがディフェンスが体で防ぐも、中でボールは浮いている! キーパーは出て来れない!
―――そしてボールの落下点には、カカがいた。
(外すわけには……いかないっ!)
思いっきり右足を振りぬき、ボールはネットに突き刺さる。1−0、ようやく先制だ。
そして試合はこのまま進み、開幕戦勝利を挙げた。
ML LeagueA Division1 第一節 |
ACミラン |
1 |
0-0 |
0 |
マルセイユ |
1-0 |
カカ |
'87 |
|
「何をやってるんだ! 個人プレーだけで活きようと思うな! チームプレーに徹しての結果ならOKだが、何なんだこの試合は!」
試合後、コウータ監督が激怒した。その試合内容が余りに低調すぎるあまりに起こったものである。
カカの先制点とはいえ、苦し紛れの一点だった。
勝ったとはいえ、なんともいえない雰囲気がチームを覆う。そしてそのまま次の日へ向かった。
※
そして二節目。椿は驚愕した。
第二節 ACミラン
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ロナウド |
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椿一馬 |
カカ |
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セードルフ |
ガットゥーゾ |
|
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ピルロ |
|
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マルディーニ |
カフー |
ネスタ |
スタム |
|
|
ヂーダ |
|
先発メンバーに入っているのである。それも、重要なシャドウストライカーのポジションで。瞬く間に胸が高鳴り、緊張が走る。俺でつとまるのか? 俺でカカの相方が勤まるのか?不安が胸をよぎる。
「…マジかよ」
「まぁ、そう驚くなよツバ。俺がいるから」
「カカ」
「前はロナウドさんだ、大丈夫。安心しろ」
しかしいまだ不安はぬぐえない。椿は必死に自身を落ち着かせていく。瞬く間に時間は過ぎて、キックオフの笛が鳴る時間だ。
椿はピッチに駆け出した。
※
試合はミランのペースだった。前半、ロナウドのシュートはポスト。椿も果敢に勝負をしかけ、ドリブルで突破を試みる。だが、バイエルンミュンヘンのゴールマウスはなかなかこじ開けることを許してくれない。
逆に「ダズゲニー」アレックス・ランツァートを中心にバイエルンが攻勢に出る。チームの要であったミヒャエル・バラックを失ったとは思えないコンビネーションプレイを見せてミランを脅かす。ランツァートは度々チャンスメイク。浮き球スルーやスルーパス、ロングフィードやピンポイントクロス。だが、どれも鉄壁のディフェンスでゴールから遠ざかっている。しかし後半42分、ドイツの槍「ウェル・Q・ハルバード」が絶妙なラストパスを受けゴールキーパーと1VS1になる。
「貰った!」
ハイバードが思い切り右足を振りぬいた!……が!ミランのゴールにはこの男が居る!
「させん!!!!!」
ブラジル代表GKヂーダが鉄壁のセービングを見せてCKへと逃げる! 思わずハイバードは天を見上げた。確実に逆を突いたのに、足でセービングしてくるだと……!?この時、ミランに勢いが乗った。
このまま前半は終了するが、勢いはミランに乗っていた。
後半開始直後! ロナウドからのヒールパスを椿っ!!
「ツバ!!頼む!!」
「任せろ!」
アウトフロントで思いっきりミートしたボールは回転をほぼせず、ゴール右隅へ!だがミランにはヂーダがいるように、バイエルンにはこの男が居た! ドイツ代表の守護神が!
「ぬうん」
オリバー・カーンが驚異的な跳躍を見せ指先ではじく! ボールはタッチを割っていきコーナーキックになる、も後が続かない。
更にその後、カカが高速ドリブルで相手を抜き去りシュートを放つもまたもやポスト。こぼれ球を椿が押し込むがカーンに防がれる。
チャンスを活かしきれない―――また危ない雰囲気が漂いはじめた。
そんな時、椿にボールが渡った。
(どうする!? 前からはまだ誰も着ていない、ドリブル突破でいくか!?)
しかし、そう考えている間に一つ目に留まったことがあった。セレソンの10番が、フリーになっている。
(俺よりも、アイツのほうが決定力はある!)
そう思った椿は、右足でボールを射抜いた。絶妙なコースへ転がっていくボールは、フリーだった走りこむセレソンの10番の足元へ! 完璧なスルーパスが通った。そこから彼は凄まじい加速を見せ一人、また一人とマーカーを抜きさる。ペナルティエリアに進入し、カーンが少し前へくるか!? という絶妙なタイミングで彼はシュートを放った。
オリバー・カーンですら防げない最高のシュートがゴールへ突き刺さる。
ACミラン、先制!
ML LeagueA Division1 第ニ節 |
ACミラン |
1 |
0-0 |
0 |
バイエルン・ミュンヘン |
1-0 |
カカ |
'24 |
|
試合はこのまま流れて、なんとか二節目も勝利したACミラン。だがその内容は一試合目とは違っている。
「いける」という雰囲気がチームを包んでいた。
中でもカカの活躍は凄いものがある。
決定力だけでなくドリブルにその秘密があるのではないのか、椿はそう思った。何より早いのだ。相手DFがついてこれないほどのスピードで、あっという間にゴールを陥れる。
これにロナウドが絡みだしたら・・・? どうなるのだろうか、想像も出来ない。
今日はいい気分で寝れそうだ、と椿は呟いた。
気がついた頃、椿は海外でもやれる自身を身につけ始めていた。
(つづけ)