「文章依存症心的無言性障害者」

 

何故 そのたった一言が言えないんだ

何故 心の叫びや想いを書きつづる事に留まる

言えよ

たった一言

『淋しい』と

『離れないで』と

『愛している』と

言えよ 言えよ 言えよ

テメエの想いを全て吐き出せ

俺の中に存在する

文章依存症心的無言性障害者よ

 

症例 一

俺の心は何も言わない

症例 二

俺は夜中衝動的に文章を書く

症例 三

言葉が心の中にたまる

症例 その他諸々

etcetcetcetcetcetcetc…苦しい

そんな苦しみがお前を作った

文章依存症心的無言性障害者よ

 

何か言いたかった

何が言いたかった

自分に叫び

自分に問う

何を言いたかった

何に言いたかった


俺を捨て 離れて行こうとする 愛すべきモノ達に

お前は言いたかったはずだ

文章依存症心的無言性障害者よ

俺は旅立つモノ達にこんな事を適当に言った

「頑張れ、いつかまた会おう」と

または ただ普通に

「さよなら」とか「バイバイ」と

しかしお前はこう言いたかったはずだ

「僕を置いて行かないで。僕から離れて行かないで。淋しいんだよ」

叫んで 泣いてすがれよ もう一人の俺よ

文章依存症心的無言性障害者よ

 

書きつづる事に留まる

想いを口に出せぬ弱虫で腰抜けな俺よ

言え! 叫べ! 訴えろ!

言えぬ言葉がつのり 心を埋める

流さぬ涙がたまり 水没する精神

言葉の土に埋もれて

そのまま永久の眠りにつこうとするのか

埋没する自我よ

目覚めよ!

文章依存症心的無言性障害者よ!

 

愛しい者がいた 昔の俺よ

もはや恋心など有り得ぬ

何を引きずる想いが有る

消化不良の恋愛感情

常に胸焼けたまに嘔吐

恋愛の胃液が己が身を焼き

胃壁を溶かし 腹を突き破って

変色した内臓をぶちまける

伝えろよ…届けろよ…ふられたっていいじゃないか

そう この苦しみよりはましなはず

文章依存症心的無言性障害者よ

 

 

何のために書き続けるんだ

文章依存症心的無言性障害者よ

何で暗がりの中で黙々とやってんだよ

暗いんだよ…このクソが…

文章依存症心的無言性障害者よ

伝えたい想いばかりつのらせ

自我を殺す

自虐的だと知りながらお前はそれをやめないんだな

文章依存症心的無言性障害者よ

もう楽になってもいいじゃないか

見ているこっちが痛いんだ

文章依存症心的無言性障害者よ

 

小さい頃には色鉛筆とかクレヨンとか

画用紙やスケッチブック 広告の白い裏に

俺達は書き殴っていたな

文章依存症心的無言性障害者よ

少し成長してからは

シャープペン HBの鉛筆 ボールペン 万年筆 マジック サインペン

ありとあらゆる 筆記用具で

ノート ルーズリーフ A4やB5のコピー用紙に

時折 カッターで机に彫り込む

たまに パソコン

指先で連打する想い

無言で吐露する感情

そうやって書いたモノ達を

後でどんなに燃やそうとも

ゴミとして捨てようとも

データを消去しても

その想いは灰にならない

手放そうとも捨てきれない

記憶喪失にでもならない限り引きずり続ける

文章依存症心的無言性障害者よ

宛名の無い手紙達

差出人は

――文章依存症心的無言性障害者


愛する者がたくさんいたんだろう

家族も友達も兄弟姉妹も親戚も

特別な感情を持っていた者も

伝えるべき想いを伝えず

愛するモノ達を追い駆けるけれども

追いつく事ができない

哀れなるもう一人の俺よ

言わなきゃ辛い言葉を

お前が俺から盗み

何処か深いところへ埋めた

文章依存症心的無言性障害者よ

 

俺からその言葉と声を返せ

 

俺は文章依存症心的無言性障害者

 

症状は愛別離苦による孤独感

恋愛消化不良による腹痛や嘔吐、食欲の減退など

また真実の言葉を言えない事から見て

心の無言性

極度の悲観的また退廃的感覚

それから来る劣等感

精神的負担…ストレスから来る

腹痛 頭痛 脱毛 呼吸系の発作

時折来る衝動的な自殺行為

 

診断は 「文章依存症心的無言性障害者」

治療法は  ―――――未発見

 

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