ふと、足を止めて振り返った。
眼前に広がるのは、まっさらな雪原銀世界。
そこに残された、一人分の黒い足跡。

その足跡をぼぅと眺めた。

振り返り、また歩き出そうとして。
僕は固まった。

「僕の歩き方」が分からない。
僕はいつも、どうやって歩いていたっけ?

「歩み方」を意識したことなんて無かった。
意識すればするほどに、判らなくなってしまう。

慌てて新たに踏み出した一歩。
考えたこともなかった歩幅に、自信がない。

自信のない歩調で、多分にちぐはぐで滑稽なテンポで、歩む。

本当に、本当にこれは僕の足跡なんだろうか。

そう思って、また振り返った。
そこには、間違いなく僕へと続く足跡だけがあった。