覚醒

 
「GURPS女神転生」においてPCとなるキャラクターは、すべて何らかの神や英雄の転生した存在であるものとして扱います(造魔や悪魔などの、人間ではないキャラクターであっても)。すべてPCたりえる存在は転生体を有するというのが、このシステムの大前提なのです。キャラクターは様々な経験を経ながら徐々に霊的な階梯を登ってゆき、その事実を受け入れるにせよ拒否するにせよ、いずれは自らの過去と直面する日を迎えることになります。
 「GURPS女神転生」において最も重要な概念のひとつである「霊格(覚醒段階)」の特徴については、前項で説明しました。ここでは、「霊格」を上昇させるための手続きである「覚醒」のルールを扱います。
 
 
◇覚醒イベント

 
 覚醒には、かならずその契機となる出来事があります。ある者は、生死に関わるような事故を経て超能力に目覚めました。またある者は、強敵との戦いを通じて、今まで学んできた武術の極意を会得しました。
 それは自覚的なものかもしれませんし、本人にも気付かないまま起こるものかもしれません。あるとき突然にもたらされる目眩のような体験かもしれませんし、あるいは花のつぼみが開くような、ごくゆるやかなものかもしれません。しかしいずれにせよ、人の成長には確かに何らかのきっかけが存在するのです。
 
 
覚醒イベントとは
 
 「覚醒」を喚起するような事件や状況のことを「覚醒イベント」と呼びます。これには以下のような状況が該当します。
 各イベントの横に付いている□は、そのイベントによってチェックを行える回数を表します。チェックを行ったら、その成否にかかわらず、チェックボックスをひとつ塗りつぶしてください。
 
・悪魔に関わるイベント
 悪魔の跳梁が囁かれるようになったのと時を同じくして、人を超えた力を持つ者たちの存在が多く報告されるようになりました。
 強力な「天敵」の存在によって人類の潜在能力が開花するのか、あるいは歴史の影で繰り返されてきた悪魔との戦いの記憶が、遺伝子の奥底から呼び覚まされるのか。いずれにせよ、悪魔の存在によって、人類が新たな力を身に付け始めたことは確かです。
 
悪魔との遭遇 □□□
 より強力な「霊格」を持つ悪魔(初めて悪魔と遭遇する場合は同レベル以下でも可)との遭遇によって発生します。
 覚醒チェックに悪魔との「霊格」レベルの差と同じ値のボーナスを受けます。同種の悪魔について2度以上このイベントを起こすことはできません。
 
悪魔による憑依 □
 悪魔に憑依され、その精神に直接触れることで覚醒が促されます。悪魔による憑依から解放された後、あるいは何らかの拍子で自分の意識を取り戻したときなどに覚醒チェックを行うことができます……まだキャラクターの精神が破壊されていなければ。
 チェックには悪魔との「霊格」レベルの差×2(最低2)のボーナスがあります。
 
悪魔の召喚 □
 悪魔召喚の秘儀に触れ、古の魔術師たちの精神を追体験することが覚醒のきっかけとなります。覚醒チェックに悪魔との「霊格」レベルの差と同じ値のボーナスを受けます。
 
悪魔との合体 □
 悪魔と合体し悪魔人となることにより、悪魔の支配に対抗しうる強靱な魂が顕在化します。おそらくそれは、キャラクターが神であった時代の名残でしょう。
 悪魔人となった時点で、悪魔との「霊格」レベルの差×3(最低3)のボーナスを受けてチェックを行ってください。
 
・事件に関わるイベント
 ある事件によって激しい感情が呼び起こされたり、前世の記憶が呼び覚まされたりすることが覚醒のきっかけとなります。GMは出来事の重大さに応じてボーナスおよびペナルティを与えてください。このイベントでは、何よりもロールプレイが重要になります。
 
魔力あるアイテムとの接触 □□□
 キャラクターと同じかより高い「霊格」を持つアイテムに触れることにより、覚醒が促されます。それがキャラクターの前世となんらかの関わりのあるアイテムであれば、「既視感」と同時に発生することもあるでしょう。
 チェックの際には、アイテムとの「霊格」レベルの差がボーナスとなります。
 
生死に関わる事故 □□
 一歩間違えれば命を落としていたかもしれないような事故との遭遇によって発生します。実際に生死の境をさまようような傷を受けたなら、下の「臨死体験」と同時に発生するかもしれません。
 このイベントによる覚醒は、命運を消費しても逃れ得ないような破滅的な状況から生き延びる、唯一の手段です。覚醒チェックに成功したら、奇跡的に助かったことになります。
 
臨死体験 □□
 擬似的な死を体験することにより、新たな力を得て再び「生まれ変わり」ます。上の「生死に関わる事故」と並び、現実世界において超能力や霊能力を身に付けたと主張する人々が、そのきっかけとして挙げることの多いイベントです。
 さまざまな原因により死亡判定を行わなくてはならなくなったとき、その直前に行います。このとき死亡判定にかかるペナルティが、そのまま覚醒チェックへのボーナスとなります。
 この覚醒チェックに成功しても、キャラクターは一時的に死んだような状態になります(まさしく死んでいるのですが)。この状態から「復活」するまでの時間は、一瞬から数日間までの間で自由に決定することができます。
 
愛する者の危機 □□□
 家族や恋人、義務感の対象といったキャラクターが危機に陥った(あるいは死んでしまった)際、その激しい感情が覚醒のきっかけとなることがあります。
 普段からのロールプレイによって、判定に−2〜+2程度の修正が加えられます。
 
激しい感情の発露 □□
 今まで味わったことがないほどの強い感情が、覚醒を促すことがあります。強力な敵に対したときの恐怖や高揚感、自分の無力さに対する怒りや悔しさ、非道な行いに対する悲しみや憎しみなど、さまざまな状況が考えられます。自制判定に17以上の出目で失敗したときなども相当します。ロールプレイしてください!
 
薬物によるトリップ □
 薬物による幻覚が、ときにキャラクターの精神の深い部分を顕在化させることがあります。これは、いわゆる麻薬によるものとは限りません。未開社会の宗教のなかには、幻覚作用のある植物を儀礼に用いるものも数多く存在しています。しっかりとした指導と監視の下に行われるのでないなら、「中毒」に注意しなくてはなりません!
 特に演出にこだわらない場合、トリップした後の恐怖判定に成功すれば覚醒チェックへと進むことができます。
 
・修行・成長によるイベント
 精神的・肉体的な激しい修行によって、覚醒への道を開きます。何らかの宗教集団に加入したり、師匠について学んだりすることも覚醒のきっかけとなります。
 GMはそうした過程をひとつのイベントとして描写すべきです。プレイヤーとの問答なども面白いでしょう。覚醒イベントそのものを、ひとつのシナリオやキャンペーンとして遊ぶことも可能です。
 
現世での修行 □□
 現世での修行が、より高い次元へとキャラクターを導きます。格闘技やカルトマジック(やその他の高度に体系化された技術)を学ぶ者は、まとまった時間が取れさえすれば、好きなときにこのイベントを発生させることができます。
 
異次元での修行 □
 より特殊なシチュエーションで行われる修行です。『真T』の金剛神界のように、ひとつのシナリオそのものが修行として扱われることも多いでしょう。
 
師匠の導き □
 偉大な導き手との出会い、師の下についての修行、奥義の伝授などといったイベントによって発生します。「〜での修行」と同時に発生することも多いでしょう。
 格闘技やカルトマジックを修得しており、ふさわしい指導者についているキャラクターは、好きなときにこのイベントを発生させることができます。
 
秘儀参入 □
 宗教集団への参入時に見られる秘儀参入の儀礼(イニシエーション)を体験することによって発生します。古来からの習俗が残っている社会ならば、成年式に代表される人生儀礼もこれに該当するでしょう。
 カルトマジックを修得しているキャラクターは、ふさわしい機会を捉えてこのイベントを発生させることができます。
 
内面への旅 □(□□)
 自らの内面へと意識を沈潜させ、その奥底に眠る何者かと対面します。『ペルソナ』シリーズのオープニングや『真T』のサイコダイブのシーンを思い出してください。超能力かペルソナを身に付けている者以外は、このイベントを1回しか起こすことができません。
 
・前世に関係するイベント
 キャラクターの前世に直接関係のあるイベントです。
 多くの場合、現在のPCの立場をはるかに超越した何者かによって、覚醒へと導かれることになります。プレイヤーの任意によって覚醒チェックを行なうよりも、GMがそれぞれのキャラクターに向けたイベントを用意する場合が多くなるはずです。
 
先祖霊の導き □
 祖先の霊がさまざまな形をとってキャラクターを覚醒へと導きます。社会によっては、「先祖霊」がほとんど神に近い意味を持つこともあるでしょう(特に文明レベルの低い社会では)。
 
前世の夢の暗示 □□
 無数の過去生のある重要なワンシーンを夢の中で思い出し、それが前世の記憶を呼び覚ますきっかけとなります。主にGMの用意したイベントによって発生します。
 
運命の出逢い □□
 前世において深い関わりがあった人物と現世において再会する、またはすでに出会っていた人物に対し運命的なものを感じることで発生します。
 その人物の重要度に応じて〜+2(前世における配偶者や最大のライバル)程度までのボーナスが得られます。
 
因縁の戦い □□
 前世からのライバルや戦いを運命づけられた者との闘いが、覚醒のきっかけとなります。
 
転生神の導き □□
 キャラクター自身の転生神や、転生神と深い関わりを持つ神によって何らかの示唆を受けることで発生します。
 
宿命の自覚 □
 自らの前世と向き合い、それを肯定的に捉えることで、かつての力と記憶を受け入れる準備が整います。あるいは、不利な精神的特徴や「使命」を積極的に捉えなおした、などといった演出でも構いません。なによりもロールプレイが重要になります!
 
既視感 □□□
 キャラクターの前世と同じシチュエーションを体験することにより、前世の記憶が呼び覚まされます。当然ながら、キャラクターの前世が設定されていなければこのイベントを起こすことはできません。
 
新たにイベントを設定する
 
 上に挙げたイベントの他に、イベント2つぶん、チェックボックス総計3つぶんまで覚醒イベントを設定することができます。これは主に演出のためのルールです。各プレイヤーは自分のキャラクターにふさわしいシチュエーションを設定し、GMに許可を取ってください。
 
 
◇覚醒チェック

 
 覚醒イベントを経たからといって、かならず覚醒できるわけではありません。ふさわしい試練に耐えることで、はじめて人は新たな境地を拓くことができるのです。
 
 
チェックの方法
 
 覚醒イベントに相当する出来事にPCが遭遇した場合、プレイヤーの任意またはGMの指示によって、「覚醒チェック」をおこなうことができます。各覚醒イベントの横にあるチェックボックスを塗りつぶしたうえで、判定を行ってください。
 判定の目標値はそのときの「命運」の値で、これに成功すれば、PCはヒットポイントと疲労点、あらゆる心身の不調がすべて回復した状態で、1レベル高い「霊格」を獲得します。
 失敗した場合、「霊格」は変わりません。代わりに命運が1点上昇します。
 
修正:そのときのCP総計が「基準CP(下記)」を上回る(下回る)10CPごとにプラス(マイナス)1。その状況において同時に満たす覚醒イベントひとつごとに+2。
 またGMは、PCの遭遇した状況やプレイヤーの演技に対し、±4までのボーナスやペナルティを与えるべきです。
 
 覚醒チェックは覚醒イベントを満たすたびに、何度でも行なうことができます。ただし、ひとつのシナリオ内で同種のイベントについて2回以上の覚醒チェックを行うことはできません。同時に複数の覚醒イベントを満たすようなシチュエーションに遭遇した場合、同時に体験する覚醒イベントひとつごとに+2のボーナスを、覚醒チェックの際に得ることができます。
 GMは自由に覚醒イベントを起こしたり、プレイヤーからの申請を却下することができます。また、覚醒チェックを自動的に成功させたり失敗させたりすることができます――特に、それがGMから用意されたイベントによるものである場合は。
 
 
覚醒の基準となるCP
 
 覚醒とは、人がその進化の過程で、あるいは前世の力を取り戻していく過程で立ち会うある通過点のようなものです。当然、ふさわしいポテンシャルを持っていなければその地点まで行き着くことはできません。
 以下に、覚醒段階において基準となるCP総計を示します。これより低くても覚醒チェックを行うことはできますが、チェックにペナルティを受けてしまいます。
 
1レベル:スタート時
2レベル:100CP
3レベル:200
4レベル:350
5レベル:550
6レベル:800
7レベル:1200
 
 
「覚醒」によって得られるもの
 
 覚醒チェックに成功すると、いよいよキャラクターは新たな能力に目覚めることになります。
 新たに得られる能力の総計は「(新たな霊格レベル+1)×10」CPまでに収めなければなりません。未使用CPから補填できない場合(たいていはそうでしょうが)、すみやかに買い戻してください。逆に言えば、毎回の覚醒の際にこれだけのCPを「前借り」することができるということです。また、覚醒時に不利な特徴を取得した場合、それによって得たCPを、新たな能力を得るために充当することができます。
 種族や霊格による制限はありますが、演出上の説明さえできれば、基本的にどのような能力でも身に付けることが可能です。覚醒時のキャラクターデータの変更としては、以下のようなものが考えられるでしょう。
 
・能力値の上昇
 能力値が上昇します。霊格レベルの上昇により、能力値の制限が緩くなっていることを忘れないでください。
 
・特徴の獲得
 新たな特徴を獲得したり、すでに取得している特徴のレベルを伸ばしたりすることができます。カルトマジックの「修得段階」や「達人」系の特徴のレベルはもとより、「才能」などでその他の技術を伸ばすのも面白いでしょう。
 また、覚醒時に不利な特徴をひとつだけ獲得したり、消したりすることもできます。霊格レベルによる制限を超えないように気をつけてください。
 
・技能・テクニック・追加効果の上昇・獲得
 メガテン世界に特有の理由付けとして、「前世の記憶を思い出した」というものがあります。これによって、ほとんどどんな技能も無理なく身に付けることができるでしょう。
 カルトマジックや格闘技などを覚醒によって身に付ける場合、いくつかの特徴と技能をセットで取得するのが普通です。身に付けようとする能力はあらかじめ紙に書き出しておくと、プレイが滞りなくすみます。
 
 
覚醒を演出する
 
 冒頭に、覚醒とは人が「霊的な階梯を登る」ことであると述べました。では、なぜ人は覚醒によって新たな能力を得ることができるのでしょう。
 人や作品によって、その理由付けはさまざまです。各GMやプレイヤーは、自分のイメージに従って、自由に覚醒のシーンを描写してください。ここではその助けとなるよう、覚醒を4タイプに分類し、それぞれについて解説を加えています。もちろん他のタイプの覚醒があってもいいでしょう。
 これはあくまで演出に関わる問題であり、ルール的な束縛は一切ありません。覚醒イメージの作成や取得する能力の選択に役立ててください。
 
・潜在能力
 その力は、もともとあなたの中に眠っていたものです。眠れる才能があるきっかけを経て文字通り「覚醒」したもの、それがあなたの手にした力なのです。
 それは種としての進化の結果なのかもしれませんし、今まで積み重ねてきた鍛錬の結実かもしれません。いずれにせよ、それは神にも悪魔にもよらない、あなた自身に由来する、あなただけの力です。
 このタイプの覚醒はもとから修得している技能や能力値を伸ばす場合や、超能力やペルソナといった(外的な要因によらない)特殊能力を得る場合にふさわしいでしょう。
 
・前世の記憶
 その力は、あなたが過去世において身に付けていたものです。おそらくは無意識にでしょう、あなたが今生での必要に応じて無数の前世から選び取った記憶……それがあなたの手にした力の源です。
 このタイプの覚醒は、まったく未経験の技能やカルトマジックなどを身に付ける場合にふさわしいでしょう。本来なら後天的な訓練を必要とする能力を本人の努力によらず身に付けることができるため、年若いキャラクターがさまざまな技能を有している理由付けにもなります。
 
・神としての能力
 その力は、遠い昔、あなたが神としての姿を持っていたころの名残です。
 上の「前世の記憶」に似ていますが、完全な能力と記憶を取り戻すことはできません。神の力は、人間の身が受け止めるにはあまりに大きすぎるのです……少なくとも、今のところは。
 このタイプの覚醒は、本来であれば人間には身に付けることが不可能な能力(特殊的・超常的特徴など)を得る場合にふさわしいでしょう。「前世の記憶」のように、まったく新しい技能などを身に付けることもできますが、演出上、それらは前世の姿に近づけていくように修得するべきです。
 
・外的要因
 その力は、あなたがその身に宿した「何か」に由来します。悪魔人なら合体した悪魔、人修羅ならマガタマ、獣人ならライカンスローピィ(獣化症)といったところでしょう。
 もちろん、これはあなたの本来的な力が劣るということではありません。ふさわしいポテンシャルがなければ、そうした力を取り込むことすらできなかったでしょうから。悪魔の力にも打ち勝つ強靱な魂、それこそがあなたの力の源と言えるでしょう。
 このタイプの覚醒によって身に付けることのできる能力はさまざまです。詳しくは「特殊なキャラクター」の項を参照してください。
 

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