ウィッカ

 
主技能:宗教儀礼/ウィッカ、神学/ウィッカ、自然知識、歌唱または踊り
副技能:薬学/薬草/TL3、生存/森林、歌唱または踊り(主技能で選択しなかったほう)
背景技能:天気占い/TL3、占い師、野外系技能(特に<造園>)、動物系技能、ナイフ、英語またはアイルランド(ゲール)語
特殊技能:瞑想*、飛行*、草木秘伝*
推奨特徴:精霊共感(対象限定:「ダヌー」神族の悪魔)*、才能/緑の指および動物の友、動物共感、動物会話*、透明が見える(「実体のみ」の限定を持つ「透明」に対してのみ)*、社会的弱者、仲間(妖精や地霊の)*、敵(ウィッカや魔女を敵視する人々)、満月の狂気*
 
呪術
レベルT:マジック・ハーブ、ピクシーへのよびかけ、丘と草と風のチャント、森の案内人、月光の加護、妖精のおせっかい
レベルU:「妖精」へのよびかけ、「地霊」へのよびかけ、月と星と光のチャント、マジック・オイル、変身術
レベルV:沼と茨と暗闇のチャント、「魔獣」へのよびかけ、力の環、飛翔の術、森と木々と緑のチャント、「英雄」へのよびかけ
レベルW:炎と煙と瞬きのチャント、妖精の輪、突風、「王族」へのよびかけ、大地の力の加護
レベルX:歌と踊りと宴のチャント、ワイルド・ハント、「女神」へのよびかけ
レベルY:アラディアの怒り
 
特殊ルール
 
・アセイミィ・ナイフの所持
 カルトマジック「ウィッカ」に属している者は、月の力を付与された銀製のナイフ「アセイミィ・ナイフ(Athame knife)」を与えられます。通常、この武器は霊格1の大型ナイフとして扱われます。銀製の武器については『ベーシック』p.265を参照してください。キャラクターのスタイル上の問題からプレイヤーが強く望むなら、必ずしもナイフでなくとも構いません。DMの許可を得て、杖や錫杖、槍、短剣、鞭などのタイプから選択してください。
 多くの場合、この武器はより上級の者から「ウィッカ」の修得者に与えられ、一人前の証として、また属する教団や師を明らかにするものとして機能することになります。もし壊れたり紛失してしまったりしたなら、できるだけ早く作り直してもらうのが賢明でしょう。その際、10万円ぶんの資金や贈り物と4週間の時間が必要です。
 
・「よびかけ」
 呪術《○○へのよびかけ》は、通常の召喚あるいは喚起によるものとは異なり、友好関係に基づいて悪魔を呼び出し、協力を求める特殊な技術です。
 術者は呼び出した悪魔に助力を願うことができます。悪魔の態度を反応判定で決定し、GMはその結果に従って悪魔の行動を決定してください。悪魔の種族と助力の内容によって、反応が大きく変わってくることも多いでしょう。術者は悪魔を支配するわけではありません。基本的に、悪魔の嫌がることを強要することはできないのです。また、それぞれのデータに示された「持続時間」は、あくまで目安でしかありません。この呪術によって呼び出された悪魔は、ともあれ一時はその場に留まることになりますが、反応が悪ければさっさとその場を立ち去ってしまいます。
 「よびかけ」によって呼び出される悪魔は毎回異なるため、反応判定はこの呪術を使うたびにおこないます。ただし、「友人(下記)」となった悪魔や《英雄へのよびかけ》のクリティカルによるタムリンやクー・フーリン、《王族へのよびかけ》および《女神へのよびかけ》によって助力を願うことのできるすべての悪魔については、毎回同じ個体が呼び出されます。これらの悪魔が以前に疲労点やヒットポイントを消費していた場合、呼び出されていないあいだに人間の10倍の速度で回復していくものと考えます。
 複数の悪魔を呼び出す場合、それぞれに対する反応判定には、1体を超えて同時に呼び出す悪魔の数を2倍しただけのペナルティ(2体目から−2、−4、−6……)があります。もちろん、個体としての悪魔を同時に呼び出すことはできません。
 
・友人への「よびかけ」
 ウィッカを学ぶ者は、呼び出した妖精などとの別れ際にお互いの名前を交換しあうことで、さらに友好を深めることができます。偶然に出会った悪魔などと名前を交換しても構いませんが、それが「ウィッカ」で呼び出せる種の悪魔でないかぎり、あまり意味はないでしょう。
 名前の交換は、反応が「良い」以上か、術者が悪魔にとって特に興味を惹く存在であった場合に行うことができます。こうして名前を交換し合った悪魔を「友人」と呼びます。取得しようとする「友人」1体につき1CPを支払ってください(ウィッカの修得者だけが獲得できる「特典」のようなものです)。
 その友人が属する種族に対する「よびかけ」の際、本来の2倍の時間をかけることで、この「友人」に来てもらうことができます。このとき呼び出す友人の「霊格」レベルは、術者の「霊格」レベルを超えてもかまいません(よりレベルの高い悪魔を「友人」に得られれば、非常に強力な助けとなります!)。
 呼び出された悪魔の反応は、前回別れた時のものと同じです。それぞれの悪魔について、反応判定の出目を記録しておいてください。術者とその悪魔が共に行動し、困難を乗り越える(強大な敵を倒す、シナリオをクリアするなど)ことで、反応に+1ずつボーナスが加えられていきます。逆に、何らかの原因によって反応が「悪い」以下になると、この友好関係は途切れてしまいます。
 1人の術者が持つことのできる友好関係の数には、特に制限を設けません。何よりロールプレイが必要な特典です! 「よびかけ」すべてに言えることですが、この関係は相互的なものであることを忘れないようにしてください。まれに、術者が悪魔から助力を請われることもあるでしょう(そして、新たな冒険が始まるのです)。
 
・「チャント(詠唱)」
 「ウィッカ」には、特定の呪文を繰り返し唱える「チャント(詠唱)」という技法が伝えられています。この呪術を発動させるまでの手順は他のものと同じですが、一度目の成功判定を行った後も、さらに各《○○のチャント》に固有の「単位時間(準備時間のすぐ後ろに記してあります。この呪術を維持することは不可能で、効果を持続させたければ詠唱を続けるしかありません)」だけ繰り返し詠唱を続け、体力を消費することで、ふたたび+1のボーナスを得て成功判定を行うことができます。このボーナスは詠唱を続けるたびに大きくなり、最大で+3までになります。このボーナスは、その後も詠唱を続けることで維持することができます。
 また、「チャント」の効果範囲も他の呪術とは異なります。この呪術の効果範囲は、術者を中心とした半径呪術レベル・メートルの円となり、その内側にいる任意の対象すべてに影響を及ぼすことができます。
 このとき、術者が気づいていない対象も範囲に含めることができます(逆に言えば、気づいていない対象を目標から除外することはできません)。 呪文が相手の耳に届いているかどうかは必ずしも関係ありませんが、まったく音の通らない状況では、この呪術は効果を発揮しません。
 目標が「チャント」へ抵抗する際には呪術判定の成功度ぶんのペナルティがあります。また、術者との距離の半分がボーナスとなります。
 いくら呪術レベルが高くなっても、「チャント」を使うにはかならず言葉を発しなければなりません。「チャント」を相手の耳に届くだけの音量で歌いながら、あるいは相手に見えるように踊りながらおこなうと、呪術レベルに+1のボーナスがあります(両方なら+2)。ただしこの場合、攻撃を受けたり能動防御を行ったりすると、かならず集中が途切れてしまいます。
 
 
 
◇技能

 
草木秘伝(精神/至難):この技能は、神秘的な効果を持つ様々な薬草(ハーブ)とその使用に関する知識をあらわします。
 ルールブックに書かれた効果の他、この技能は<薬学/薬草/TL3>を助けるものとして扱います。この技能を用いた何らかの判定の直前に、<草木秘伝>判定をおこなってください。成功すれば、次におこなわれる<医師/TL3>や患者の生命力判定に+1のボーナスを得ることができます(いわゆる呪術医療全般を表現しているのです)。この技能を用いれば、現代の<医師>では対処することのできない、魔術的な手段によって引き起こされた毒や病気なども治療することができます。
 同じ方法で応急処置を試みることもできます。かかる時間などについてはTL3と同じですが、ダメージの回復量は1Dになります。
 いずれの場合も、ふさわしいハーブ一揃いがなければこの技能を使うことはできません。一回の試みに用いるハーブを探すには、1時間程度を自然林の中での探索に費やし、さらに<自然知識>判定に成功する必要があります。
 「ウィッカ」の修得者は、自分専用のハーブガーデンを自宅などに持っているものとして扱います。ゲーム的には、一ヶ月につき持ち主の<造園>レベルと同じ回数ぶんのハーブを得ることができます。
 
 
  
◇呪術

 
マジック・ハーブ 通常
 まじないの言葉とともにハーブ1回分(上記<草木秘伝>参照)を用いることで、対象のヒットポイントを消費エネルギー+1点だけ回復させることができます。術者は対象に触れられる位置にいなければなりません。
 この呪術は、負傷の原因となった戦闘や事故など一回に対して、それぞれ一回しかおこなうことはできません。
持続:永久 消費:1〜3(消費エネルギー+1点回復) 準備:ハーブを準備した上で2秒
 
「ピクシー」へのよびかけ 特殊
 妖精「ピクシー」を召喚し、日没か日の出までの間、協力を求めることができます。
 この小さな少女の姿をした妖精は他の妖精族よりはるかに人間界に近い位置にいるといわれ、比較的簡単に呼び出すことができます。彼女たちの性質や反応判定への修正については、「悪魔:ピクシー」の項を参照してください。ただし、この呪術で呼び出されたピクシーの反応判定にはつねに+2のボーナスがあります。
 この呪術にクリティカルで成功すれば、1D+1体のピクシーが呼び出されます。
持続:次の日没または日の出まで・維持できない 消費:3 準備:30秒
 
丘と草と風のチャント 詠唱/知力で抵抗
 妖精の歌声をまねた呪文を繰り返すことで、目標を幸福でハイな気分にします。《丘と草と風のチャント》の影響下にあるキャラクターは「多幸症(『ベーシック』p.406「集中を乱される効果」参照)」の状態にあるとみなします。
 攻撃を受けると、この呪術の効果は即座に途切れてしまいます。戦闘中や明確な敵が眼前にいる場合、この呪術への抵抗判定には+3のボーナスがあります。
持続:詠唱が続いている間/毎ターン知力判定で回復 消費:2 準備:4秒・2秒
 
森の案内人 情報
 特定の場所を指定してからこの呪術を使うことで、リスやネズミ、小鳥などの小動物が現れて、その場所まで先導してくれます。これにより、行ったことのない場所への具体的な道筋や方向を知ることができるほか、その場所に関係した<地域知識>判定に+4のボーナスを得ることができます。術者以外の人間を先導させることもできます。
 この呪術は山や森の中など自然が豊富な場所で使うのでなければ、呪術レベルに−2のペナルティを受けてしまいます。街中ならペナルティは最低でも−4になります――動物たちは人間の作った建造物をよく見分けられないのです。
 目的地となる場所は、滝や湖、自然のなかにある建造物や街道、森でもっとも高い樹など、はっきりと他の地形から区別できるものでなくてはなりません。「ここからいちばん近い水場」などという指定も可能です。
 「動物共感」の特徴があれば、この呪術レベルには+1されます。
持続:目的地にたどり着くまで/1日 消費:3 準備:10秒
 
月光の加護 通常
 アセイミィ・ナイフおよびそれに準ずる武器に月の魔力を賦与することで、その威力を強化します。 これらの武器について、ダメージが術者の「霊格」レベルと同じ値だけ増加し、術者に等しいレベルの「霊格」が賦与されます。
 満月とその前後の三夜は、この呪術の効果は2倍になります(「霊格」レベルは変わりません)。逆に新月およびその前後の夜には、この呪術は効果を発揮しません。
持続:1分 消費:3・維持も同じ 準備:3秒
 
妖精のおせっかい 通常または範囲/知力で抵抗
 目標の耳元で小さな妖精たちがささやきかけ、なにか単純なことを入れ知恵します。これによって目標は、ささやかれた内容を、そうであるとは気付かないままに実行することになります。目標にとって疑いようのない事実や差し迫った目的を曲げようとするなら、抵抗には+3の修正があります。それが目標の身の危険に関わってくるようなことなら、修正は+5以上です。
 この呪術は範囲にかけることもでき、その場合は範囲に入ってきたキャラクター全員が影響を受けることになります。これにより、(妖精たちがよくやるように)ある範囲からすべてのキャラクターを追い払ったりすることができるようになるわけです。
持続:10分 消費:基本消費4・維持は半分 準備:消費エネルギーと同じ秒数
 
「妖精」へのよびかけ 特殊
 術者の「霊格」以下の妖精を一体呼び出し、協力を求めることができます。この呪術で呼び出すことができるのは個々に名前を持たない存在(特殊ルール:「よびかけ」を参照してください)のみです。
 この呪術の判定にクリティカルすると、術者より一段階「霊格」の高い妖精が呼び出されます。
持続:次の日没または日の出まで・維持できない 消費:1+呼び出す悪魔のコスト 準備:1分 前提:《「ピクシー」へのよびかけ》
 
「地霊」へのよびかけ 特殊
 術者の「霊格」以下の地霊を一体呼び出し、協力を求めることができます。
 地霊はこの世界と非常に関わりの深い存在で、他の悪魔に比べて容易に呼び出すことができます。彼らは働き者として知られており、戦闘以外にもその多彩な能力を生かすことができるでしょう。しかし一方で彼らは物欲が深く、呼び出された時と何らかの助力を願う一回ごとに、多くは金銭的な謝礼を要求してきます。謝礼の額は「その悪魔のコスト/2」万円ぐらいが適当です。キャンペーンの性格に合わせて、適当に増減してください。宝石や貴金属などは、彼らにとって本来の2倍の価値があります。
 彼らは気前のいい(謝礼を値切ったりしない)人間に対しては+2の反応を示します。要求された金額の2倍以上を支払えば、反応は+4以上になります。
 この呪術の判定にクリティカルすると、一段階「霊格」の高い地霊が呼び出されます。
持続:次の日没または日の出まで・維持できない 消費:1+呼び出す悪魔のコスト/2 準備:1分 前提:《「ピクシー」へのよびかけ》
 
月と星と光のチャント 詠唱/生命力で抵抗
 ささやくようなチャントを繰り返し唱えることで、目標を深い眠りにつかせます。これは(魔法的なものではない)普通の睡眠状態ですが、呪術の効果によって倒れたことで目を覚ますことはありません。外から刺激を与えられれば目を覚ましますが、起きてすぐは精神的な朦朧状態になっています。[メパトラ]や《マジック・オイル》を使えばただちにはっきりと目覚めさせることができます。
 また、対象がこの呪術をかけられることに同意している(抵抗の意志がない)ときに《月と星と光のチャント》を使うと、非常に安らかな眠りをもたらすことができます。この呪術の効果を受けているキャラクターは2倍の速度で体力や生命力が回復し、8時間後にすっきりと目覚めます。また、夢や眠りに悪い効果をもたらす魔法や超能力などに対抗することができます。
 この呪術は「チャント」の中でも例外で、一体の目標に対してしか効果を及ぼすことができません。目標までの距離によるペナルティは他のチャントと同じ(距離/2)です。
持続:説明参照 消費:2 準備:3秒・2秒
 
マジック・オイル 特殊
 特殊な調合による香油とまじないを用い、周囲の目標の精神状態を回復します。香油を作るにはハーブ一回分を用い、1時間かけて調合する必要があります。
 この呪術を使うには、香油を振りまくため、手にビンなどを持っていなければなりません(すぐ準備できる位置にあるなら、取り出すのにかかる時間は1秒です。それ以外なら、「長い行動」を参考にしてGMが決めてください)。その上で、準備時間ぶんの集中が必要です。
 この呪術によって精神的な朦朧状態を一瞬で回復させることができるほか、すでに失敗している精神的な異常を引き起こした判定(恐怖判定、精神的な特徴を抑制するための判定、魔法や超能力への抵抗など)を、《マジック・オイル》の成功度ぶんのボーナスを受けてやり直させることができます。
 同様のボーナスを得て意識のない目標を目覚めさせることもできますが、この呪術で体力や生命力が回復するわけではないことに注意してください。体力が0以下になったキャラクターを目覚めさせることはできませんし、ひどい負傷によって意識を失ったキャラクターを目覚めさせても、遅かれ早かれまた気絶してしまうでしょう。
 この呪術の効果範囲は、術者を中心とした半径「呪術レベル」メートル以内のすべての生き物となります。目標を任意に選択することはできません。
持続:一瞬 消費:2 準備:2秒 前提:《マジック・ハーブ》
 
変身術(至難)
 幽体離脱をおこなったのちに、幽体を鳥や黒猫などの小動物に変化させることができます。幽体の能力値や防護点などは変身した動物の平均的なデータと同じものになりますが、疲労点と知力および精神的な特徴は術者のものを使用します。この霊体はデジタルデビルなどと同じ「半実体」として扱います。この状態にあるとき、魔界魔法や超能力、言葉の必要ない呪術を使うことができます。
 幽体が肉体を離れている1時間ごとに、肉体は1点のダメージを受けていきます。これによって肉体が死亡したら、幽体は帰る身体を失うことになります――遠からず幽体も消滅するでしょう。逆に幽体が死亡したなら、魂の抜けた肉体のみが残されることになります。無事に身体に帰ることができれば、このダメージは10分に1点ずつ回復していきます。幽体が消費した疲労点およびHPは、身体に戻った時に術者の疲労点から消費されます。
持続:1時間 消費:5・1 準備:10秒
 
沼と茨と暗闇のチャント 詠唱/意思力で抵抗
 単調で呻くような調子のチャントを詠唱することで、目標を無気力な、鬱の状態に陥らせます。抵抗に失敗したキャラクターは、失敗度と同じだけのペナルティーをすべての能動的な判定に受けてしまいます(最大で−5まで)。防御判定など、受動的な判定についてはペナルティーはありません。
 この呪術への抵抗に6以上の差で失敗したキャラクターは、そのターン、能動的な行動が取れなくなってしまいます――あらゆることが(目の前の敵ですら)どうでもよくなってしまうのです。
 これは精神的な不利な特徴をはじめ、キャラクターの持つ様々な暗い部分が表出しやすい状態でもあります。《沼と茨と暗闇のチャント》の影響下にあるキャラクターが、不利な精神的特徴や「暴走」の限定をかけた能力を持っていた場合、それぞれについてふさわしい判定を(ペナルティを受けて)おこなわなわなければなりません。
 戦闘状態にあったり、何らかの原因で精神が高揚している状態では、この呪術への抵抗には+3のボーナスが与えられます。ただし《丘と草と風のチャント》のように、攻撃を受けたからといって効果が途切れることはありません。
持続:詠唱が続いている間/毎ターン意思力判定で回復 消費:3 準備:4秒・3秒 前提:《丘と草と風のチャント》
 
「魔獣」へのよびかけ 特殊
 術者の「霊格」以下の魔獣を一体呼び出し、協力を求めることができます。
 魔獣は獰猛で本能的な行動を好む傾向があり、自分より弱い相手に命令されることを嫌います(このあたりは、もちろん個々の悪魔によっても異なります。それぞれの悪魔についての説明を参照してください)。反応が「良い」以上であれば魔獣は術者の言うことを聞いてくれますが、それ以下だと通常の悪魔のように勝手な行動を始めます。「悪い」以下だと、魔獣は術者やその仲間に攻撃をしかけてきます!
 自然界の獣たちが生存のために狩りをするように、彼らが戦闘をおこなうのは何よりマグネタイトを得るためです。魔獣は戦闘後、悪魔を倒したことによって得られるマグネタイトの半分を要求し、これが満たされないとただちに反応が−4されます。
 術者の力が何らかの形で魔獣のそれを上回ることを示すことができれば、後の反応には+2のボーナスがあります。実際にその魔獣を打ち倒したことがあるなら、反応は+4です。また、実力の多少に関する「名声」を持っているなら、そのぶんの反応も加えられます。
 この呪術の判定にクリティカルすると、一段階「霊格」の高い魔獣が呼び出されます。
持続:次の日没または日の出まで・維持できない 消費:2+呼び出す悪魔のコスト 準備:3分
 
力の環 特殊/知力で抵抗
 簡単な歌と草を編んだ結び目で、魔法の罠を作ります。市街地や屋内でも、拾ってきた小枝やツタで編んだ籠などを用いて罠を作ることが可能ですが、呪術レベルには−2のペナルティを受けてしまいます。
 この呪術の効果範囲は半径「呪術レベル」メートルです。この範囲内を通過した悪魔や生物は知力で抵抗判定をおこない、失敗すると罠のある場所まで引き寄せられ、捕らえられてしまいます。このとき、術者はどんなに遠くにいようと罠にかかった者がいることを知ることができます。
 捕らえられた者は、そこから抜け出そうと試みることができます。知力−2で抵抗判定をおこなってください。この試みは1時間に一度のみ可能で、しかも失敗するたびに目標値は−2されていきます。捕われた者の体力が呪術レベルより高ければ、この判定には+1されます(呪術レベルの2倍を超えているなら+2、3倍なら+3……)。
 <神秘学>や「ウィッカ」そのものを学んだ者なら、この罠の魔力の元である「結び目」を見つけることができるかもしれません。<神秘学>−4か<宗教儀礼/ウィッカ>で判定したうえで、必要ならば、隠そうとする側の<偽装>と見つけ出そうとする側の<探索>とで即決勝負をおこなってください。成功すれば「結び目」を見つけ出し、簡単に呪術の効果を断ち切ることができます。
 この呪術で捕らえることができるのは、術者の「霊格」以下の存在のみです。また、「霊格」を持たないもの、実体のないものを捕らえることはできません。
 罠に捕まっている間は命中判定に−2の修正を受け、「よけ」が半減します。また、カルトマジック・魔界魔法のうち動作を伴うものを使うことはできません(超能力は可能)。
持続:次の朝日が昇りきるまで 消費:5 準備:30秒
 
飛翔の術 通常
 風の精霊たちの助けを借り、空中を自由に飛び回ることができます。
 飛行時の移動力は10で、荷重の効果は地上と同じように適用します。月光の力を付与された魔法のホウキを用いれば、移動力および運べる荷重は2倍になります(注:「魔女」のイメージに合わせて適宜修正してください)。
 ホウキを使うのでない限り、精霊が運んでくれるのは術者のみです……つまり、他人にこの呪術をかけることはできません。月光の下(すなわち新月の日以外の晴れた夜のみ)でなら、この呪術の消費エネルギーは半分になります。
持続:1分 消費:3・2 準備:2秒
 
森と木々と緑のチャント 詠唱/生命力で抵抗
 対象を眠らせます。個々の目標への効果は《星と月と光のチャント》と同じですが、安眠をもたらすことはできません。
 この呪術を周囲にほとんど木々のない場所で使うと、レベルに−1のペナルティを受けてしまいます。まったく木がなければペナルティは−2です。逆に詠唱の声がこだまするような深い森の中では、+1のボーナスがあります。
持続:説明参照 消費:6 準備:5秒・3秒 前提:《星と月と光のチャント》
 
「英雄」へのよびかけ 特殊
 妖精界(ケルト系なら女神スカアハが治める「影の国」、北欧系ならヴァルキリーたちに導かれた戦士の集う「ヴァルハラの野」など)より戦士を呼び出し、助力を願います。
 呼び出された「英雄」の「霊格」レベルは3で、能力値は体力15、敏捷力14、知力12、生命力14、ヒットポイント15/45、意志力14、知覚力12です。また、「痛みに強い」「戦闘即応」の特徴と任意の武器技能(もしくは<格闘>)3種を14レベルを持っています。武器や盾は術者の任意によるものを3種までと、文明レベル2以下の防具をはじめから装備しています。彼らが力を貸してくれるのは基本的に戦闘に関することのみで、普通は戦場を脱すると姿を消してしまいます。
  《「英雄」へのよびかけ》にクリティカルで成功すると、術者の霊格にかかわらず「タム・リン」または「ヴァルキリー」が呼び出されます。18の目でクリティカルすると、「クー・フーリン」が呼び出されます。
持続:次の日没または日の出まで・維持できない 消費:8 準備:1分
 
炎と煙と瞬きのチャント 詠唱/知力で抵抗
 対象を混乱した状態に陥れます。「幻覚(『ベーシック』p.406「無力化される効果」参照)」の状態にあるものとして扱ってください。
持続:詠唱が続いている間/毎ターン知力判定で回復 消費:5 準備:3秒・2秒 前提:《丘と草と風のチャント》
 
妖精の輪 範囲/知力で抵抗
 妖精界を通り抜け、あらかじめ指定しておいた場所へと移動します。移動距離によって、長距離の修正を受けます。
 新たに移動場所を指定する場合は必ずその場所へ赴き、一時間程度の儀式を行わなければなりません。この移動場所はひとりのキャラクターにつき、最大で知力と同じ個数だけ設定しておくことができます。それを超えた場合、指定していた場所が任意にひとつずつ消えていってしまいます。どうしてもより多くの移動場所を指定したいなら、一箇所につき1CPを支払ってください。
 また、上記の手段によって指定した場所でなくとも、妖精がこの呪術の行使を助けてくれるなら、その妖精にとって(そしておそらく、種族/神族全体にとって)馴染みの深い場所へと一緒に移動することもできます。これは抽象的な表現ですが、そう難しく考える必要はありません。妖精たちがよく現れるとされる場所……旧い城跡やケアン、朽ちた大木の陰、苔生した泉のほとりなどでよいのです。
 このような導きがあれば妖精界や魔界に移動することも可能ですが、それには妖精にかなり気に入られていなければならないでしょう。ただし、妖精の誘いにはじゅうぶん注意してかからなければなりません……たいていの場合、彼らに気に入られすぎた人間の運命は、それほど幸せなものではないのです!
 術者のみが移動するなら、この呪術の消費エネルギーおよび準備時間は半分ですみます。
持続:一瞬 消費:基本消費7 準備:10秒
 
突風 範囲/生命力で抵抗
 精霊達の舞い踊る、瞬間的な突風を呼び出します。
 範囲内のキャラクターは消費エネルギーの半分と同じ個数のサイコロを振っただけの「跳ね飛ばし」ダメージと、さらにその半分の実ダメージを受けます。
 「跳ね飛ば」される方向はだいたい術者の任意です(上方に「跳ね飛ば」した場合、そのターンの最後には最高地点に到達しています……ゲーム的には、キャラクターを含めたあらゆる物体は1ターンに5メートルの速度で落下してくるものとします)。場合によっては、高所から転落しようとするキャラクターを助けるなどの際にも使えるでしょう。
 この呪術への抵抗は生命力でおこない、成功すればまったく影響を受けません。以降のターンも《突風》の範囲内にとどまるなら、ふたたび抵抗判定をおこなってください。なんらかの飛行能力を有しているなら、敏捷力や<飛行>技能で抵抗判定をおこなうことも可能です。
 この呪術が持続している間、効果範囲を移動させることはできません。また、この呪術を屋内で使用することはできません。
持続:10秒 消費:基本消費2(最低6)・維持は半分 準備:3秒
 
「王族」へのよびかけ 特殊
 妖精の王「オベロン」かその后である「ティターニア」、あるいは妖精女王「マブ」に呼びかけ、援助を求めます。
 この三者のうち誰が現れるかは、ランダムに決定します。術者の「霊格」が足りていなくてもかまいません。
 「王族」と同行している間は、遭遇する妖精すべてが無条件に術者の指示に従うようになります。もともと敵対的であったり敵に召喚されている妖精は、もとの世界に逃げ帰ります。
 当然のことながら、彼らは人から命令されることを嫌い、自分の意志に従って行動することを好みます。へりくだった態度や贈り物は彼らを喜ばせるでしょう。反応が「普通」以下であれば、一回頼みを聞くとすぐに妖精界へと帰って行ってしまいます。「良くない」以下になると、何か困った事態を引き起こすような魔法をかけてから、やはり帰ってしまいます。
 《「王族」へのよびかけ》にクリティカルで成功すると、「オベロン」と「ティターニア」がペアで呼び出されます。それがトラブルの種になることも多いでしょう!
持続:次の日没または日の出まで・維持できない 消費:5+呼び出す悪魔のコスト 準備:10分
 
大地の力の加護 範囲
 大地に流れるレイ・ラインの力を武器に集め、ある一地点に打ち込みます。効果範囲からは光が噴水のように噴き上がり、巻き込んだ者すべてを消し去ってしまいます。
 この呪術を使うには、アセイミィ・ナイフおよびそれに類する道具が必要です。光の高さはこの呪術の効果範囲(直径)の2倍になります。それ以上の高度にいる目標には、この呪術は影響を与えません。 この呪術のダメージは、消費エネルギー1点につき2Dとなります。通常の範囲魔法と異なり、この呪術は任意に対象を選択することはできませんが、術者だけはけしてダメージを受けません。
消費:基本消費2(最低6) 準備:3秒 
 
歌と踊りと宴のチャント(至難) 詠唱/意思力で抵抗
 対象を魅了します。精神操作系呪文、《魅了》と同じ効果を持つものとして扱ってください。
 この呪術を使うには必ず踊り、かつ歌わなければなりません。呪術の影響下にあるキャラクターへの命令は、歌に織り込んで下すことができます(なので、複数のキャラクターに対して個別に命令を下すことはできません。指示は常に一律です)。「ウィッカ」を学んだ者以外は、その意味を理解できません。
持続:詠唱が続いている間/毎ターン意思力判定で回復 消費:6 準備:5秒・3秒 前提:《丘と草と風のチャント》
 
ワイルド・ハント(至難) 範囲/意思力で抵抗
 自らの血を捧げ、嵐の神ヴォーダンに率いられた死霊の大群「ワイルド・ハント」を呼び出します。
 この呪術を使用するとたちまち空は黒雲で覆い尽くされ(暗いことによる視界の修正−6)、大粒の雨が降り出します。やがてはげしい風とともに雷鳴が鳴り響き、3D秒後、雷があちこちに落ち始めます。
 範囲内にいる術者以外のキャラクターは、毎ターン3Dを振ってください。14以上の目を出した者は雷に打たれることになります。標的になった者は普通に能動防御が可能です。雷のダメージは2D(+サージ効果)で、これに消費エネルギーと同じだけのダメージボーナスがあります。
 さらに3D秒後、雷がおさまった後に死者たちの霊が群れをなして襲いかかってきます。範囲内にいる術者以外のキャラクターは、毎ターン意思力で抵抗判定をおこなってください。失敗したキャラクターは、失敗度と同じ点数の「切り」ダメージを受けます。このダメージに対し、防護点は一切通用しません。これによって1点でもダメージを与えられたキャラクターは、受けたダメージをペナルティにして恐怖判定をおこなわなければなりません。
 この呪術の持続時間が終わると、何事もなかったかのように青空が戻ってきます。効果範囲となった地形は落雷や暴風雨によって大きく変わっているでしょう。
 《ワイルド・ハント》の消費エネルギーは、術者の疲労点とヒットポイントの両方から同時に消費されます。
持続:(死者たちの霊が現れてから)10秒 消費:基本消費2分の1(最低8)・維持も同じ 準備:準備は一瞬だが、雷が落ち始めるまでに3D秒、死霊が現れるまでにさらに3D秒かかる 前提:《突風》
 
「女神」へのよびかけ(至難)
 術者自身の転生神や、その神と神話上の関わりの深い「女神」を呼び出します。
 呼び出そうとする「女神」の「霊格」レベルは、術者のレベル+1以下でなくてはなりません。その範囲内で適当な神格がいないなら、この呪術を使うことはできません(あるいは、適当にデータを自作してください)。
 「女神」は基本的に術者に対して好意的です。反応には+4のボーナスがあり、その能力の限りあらゆる援助をしてくれます。
持続:10分 消費:8+呼び出す悪魔のコスト 準備:1時間
 
アラディアの怒り(至難) 特殊
 すべての魔女の祖にして虐げられてきた者たちの救世主、女神アラディアの加護を願います。魔女の祈りに応えて雲間より放たれた光は、術者の味方、およびウィッカやダヌー神族に関わりの深い者を除いたすべての敵を撃ち、術者の「ウィッカ」の修得段階×6Dのダメージを与えます。
 この呪術の効果範囲は特に定まっていません。通常は、術者が認識できる周囲の敵すべて、としておけばいいでしょう。
消費:14 準備:5秒
 
 
 
ウィッカについて

 
 この「ウィッカ」という言葉にまつわるイメージには、ケルト・ゲルマンをはじめとする汎ヨーロッパな民間伝承から、そうしたものを悪と見なしたキリスト教的な視点、昨今のケルトブームに乗ったニューエイジ・ムーブメントまで、じつに様々なものが錯綜しています。
 プレイの際には、イギリスやアイルランド、およびその文化的な周辺地域における「現在の」民俗宗教的現象をデータ化したもの、と捉えてもらえれば間違いはないでしょう。すなわち、あまり神話や伝承にその祖を求めるのでなく、現在の「魔女」たちが行使する(と考えられている)ものをデフォルメしたデータになっているわけです。
 ともあれプレイヤーの皆さんには、特に難しく考えることなく、それぞれのイメージでもって楽しく遊んでもらえればと思います。上記のような理由から、全体のイメージとしては現代人の持つ「魔女」のイメージに近いあたりで仕上がっているはずです。各GMもプレイヤーのイメージを聞いた上で、できるだけ認めてあげるようにしてください。
 『ガープス・マジック』に載っている呪文は、ヨーロッパ的な宗教観・呪術観によくマッチします(汎用システムであるとはいえ、「魔法」という概念そのものがあるひとつの文化を背景にしなければ成り立たないものであることは言うまでもありません)。もしプレイヤーから要望があれば、いくつかの呪文を「ウィッカ」に取り入れても、それほど大きな問題はないでしょう。そしておそらく、生きた信仰としての「ウィッカ」の、雑多で呪術的なイメージを表現するにはそうするべきかもしれません。
 他にも、プレイヤーが日本人に馴染みの深い『魔女の宅急便』の魔女をイメージしているなら「使い魔」のルールを導入するのもいいですし、D&Dでおなじみの「森の賢人」たるドルイドを演じたいなら動物系・植物系呪文を身に付けさせるのもいいでしょう。 『GURPS CompendiumU』などをはじめとする未訳のサプリメントが手に入るならば、霊薬の代わりにHerbのデータを使用することで、より「らしい」演出が可能となります。
 

 
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