T.キャラクター作成
キャラクターの持つ各種の能力は、パイロットポイント(PP)という数値を支払うことで取得・成長させることになる。
キャラクター作成時の一般的なPP総計は50となる。これは基礎的な訓練を受けた人間(能力値の平均が3〜4、いくつかの生活に必要な技能を持ち、そのうち特に重要なものが2レベルに達している)の能力を表したもので、より「強い」キャラクターを作りたければ、より多くのPP総計に設定すること。なお、一般的な世界に暮らす人間はおよそ40PPで表現される。
■能力値
キャラクターの持つ(多くは先天的な)ポテンシャル。運動能力や身体の頑健さを示す「肉体」、外界の動きに対し正確な身体的反応を返す能力を示す「反応」、五感の鋭さや認識力を示す「感覚」、知識や思考力を表す「精神」、社会的影響力や協調性を表す「社会」の5つからなる。
作成段階のキャラクターは、すべての能力値が1として扱われる。能力値を1点上昇させるのに必要なPPは、新たな能力値と同じ点数となる(例:2→3なら3点、3→5なら4+5=9点)。
能力値の数字が示す大まかな意味は以下の通り。
0:日常生活に支障
1:落ちこぼれ
2:やや不得意
3:平均
4:やや得意
5:自慢できる
6:学校のトップ
7:街で一番
8:傑出した才能
9:オリンピックレベル
10:世界最高レベル
11:10年に一度の天才
12:100年に一度の天才
■技能
作成段階のキャラクターは、すべての技能のレベルが0として扱われる(つまり技能を持っていない)。技能レベルを1点上昇させるのに必要なPPは、新たな技能レベルの2倍に等しい点数となる(例:1レベルで新たに修得するなら1×2=2点、一気に3レベルにするなら1×2+2×2+3×2=11点)。
技能レベルの数字が示す大体の意味は以下の通り。
1:初心者ではない
2:基礎訓練を修了
3:腕に覚えアリ
4:熟練者
5:その道のベテラン
6:その世界では有名
7:世界最高レベル
8:伝説の達人
*技能の専門化:ある技能について、その技能が含む特定の内容をさらに絞り込んで習得することもできる。たとえば<直接砲撃>には実弾兵器、大口径実弾兵器、ビーム兵器、投射兵器という4つの小分類が含まれるが、このうちいずれかひとつを選んで技能レベルを伸ばすこともできるのである。この場合、専門化した小分類のレベルを伸ばすのに必要なPPは、新たな技能レベルと同じ点数(技能全体を伸ばす場合の半分)となる。
■コンバット・ブースト
コンバット・ブーストとは、戦闘中に振るダイスの数を一時的に増やすことができるダイス・プールである。詳しい使い方は戦闘の項を参照すること。コンバット・ブーストの初期値は一律で3である。これを1点伸ばすには5点のPPが必要となる。
コンバット・ブーストはキャラクターの戦闘に対する勘や経験の蓄積を表す能力値である。いくつかのシナリオを乗り越えることで「キャラクターが成長した」とGMが認めない限り、コンバット・ブーストを伸ばしてはいけないことにしてもよい。
■イニシアティブ値
イニシアティブとは戦闘の際に行動順を決定すること、またはそのための判定を指す。イニシアティブは1D10+イニシアティブ値で決定され、高い者から順に行動することができる。キャラクターのイニシアティブ値は「【肉体】+【反応】+【感覚】+<知識/戦術>レベル」となる。
なお、ユニット戦闘においては「【反応】+【感覚】+機体のスピード+メインシステムによる修正+<知識/戦術>」となる。
■特技(選択ルール)
特技とは、そのキャラクターが得意としている技術や特殊な能力のことで、修得することで戦闘時に取り得る行動の幅を広げたり、特定の状況において有利な修正を受けたりすることができる。特技ひとつにつき5PPで修得することができる。
なお、特技のルールはキャラクターにより豊かなバリエーションを与えるためのものである。GMやプレイヤーがゲームに慣れていない場合、使用しなくてもよい。
U.行為判定
このシステムでは、判定に10面体ダイスを複数個使用する。
判定は以下のような手順で行われる。
@目標値の決定
判定の難易度を考慮して、GMが決定する。目安としては以下の通り。
5:誰でも成功を見込める
7:素人にはやや困難
10:経験者でも五分五分
15:熟練者でも失敗することがある
20:熟練者でもかなりの確率で失敗する
A判定方法
その判定に関する能力値と同じ数だけのダイスを振り、目標値以上の出目がひとつでも出れば、その試みは成功したことになる。
また、目標値以上の出目を出したダイスの数(成功数)が多ければ多いほど、その判定は良い結果に終わったことになる。
B技能の使用
もしその判定に関する技能を持っていれば、それぞれのダイスの出目に技能レベルを足すことができる。たとえばある技能を2レベルで持つキャラクターがダイス3個を振り、出目が5、2、9だった場合、7、4、11として扱われるのである。
C振り足しと自動失敗
判定時、毎回のセッションの開始時に決定した「振り足し値」が出た場合、もう一度ダイスを振り、最初の出目に足し合わせることができる。この振り足しは「振り足し値」が出続ける限り、何度でも行われる。
また、振ったダイスの出目すべてが1だった場合、その判定は自動失敗となる。目標値や技能の有無にかかわらず、その判定は失敗に終わる。GMの判断によって、通常の失敗よりひどい結果になったことにしてもよい。
■対抗判定
複数のキャラクターがある行為の結果を争うような場合、その解決には2つの方法がある。
ひとつはそれぞれの目標値に対する成功数を比べ合うもので、後に解説する戦闘も主にこの方法で解決される。成功数で引き分けた場合、決着が付くまで判定を繰り返すか、それとも単に引き分けに終わるかは、その判定が行われた状況によるだろう。
もうひとつのより迅速な方法として、相手が判定に使用する能力値と技能の合計を、そのまま目標値として判定することもできる。たとえば忍び足で見張りを抜けようとする場合、相手の【感覚】+<知覚>の合計を目標値として、こちらは<隠密>で判定するのである。判定に時間をかけたくない場合や、相手がさほど重要でないNPCの場合、こちらの方法で解決してもよい。
V.戦闘
■戦闘の進行
このシステムでは、戦闘は「ラウンド」と呼ばれる時間単位によって区切られる。1ラウンドとは戦闘に参加しているキャラクター/ユニットすべてが行動を行い、その行動に関する処理が終了するまでを指す。また、各自の行動順のことを特に「ターン」と呼ぶことがある。
各ラウンドは以下のように進行する。
1.イニシアティブフェイズ。各自イニシアティブ値で判定し、より高いものから行動することができる。
2.エンゲージフェイズ。自分がいるエンゲージから離脱(より遠くへ移動)するか、侵入(より他のキャラクターの近くへ移動)するかどうかを宣言し、上記「エンゲージの変更」にしたがって判定する。侵入または離脱に成功したら、このフェイズが終了したときにエンゲージが移動したとみなす。
3.アクションフェイズ。イニシアティブ順に各自が行動を行う。この時に取れる行動は、かかる時間やその複雑さによって、以下のように分類される。
正行動:一般的な行動。いずれかの武器を用いて攻撃を仕掛ける、狙いを付ける(次の命中判定の目標値−1)、弾薬を装填するなど。
準行動:正行動の前後いずれかに行うことができる。ウェポンラックに装備した武器を準備する(持ち替える)、TIPを起動する(切り替える)など。
自由行動:宣言のみでいつでも行え、行動に数えない。武器を捨てる、脱出機構を持つ機体から脱出する、短い指示を発する、など。
全行動:1ラウンドすべて、ないし複数のラウンドにまたがって行動を行う。会話する、複雑な情報を読み取るなど。
4.クリンナップフェイズ。行動を終えていないユニットがいないかどうか確認してから、次のラウンドへと進む。このとき、ラウンド内で消費したコンバット・ブーストが回復する。
■イニシアティブ
「T.キャラクター作成」で解説したように、ユニット戦闘においては「【反応】+【感覚】+機体のスピード+メインシステムによる修正+<知識/戦術>」がイニシアティブ値となり、ここに1Dを振って出た目を合計した値が高い者から順に行動することができる。複数の移動手段を持つ機体などイニシアティブ値が変化する可能性のある機体は、その条件を併記の上それぞれの値をシートに記入すること。
■エンゲージ
このシステムでは、相手との距離を抽象的に表した「エンゲージ」という単位を用いる。2人以上のユニットが存在しなければエンゲージは発生しない。
エンゲージは大きい(遠い)ものから順に「超遠距離」→「遠距離」→「中距離」→「近距離」→「至近距離」となり、あるエンゲージはより小さなエンゲージを複数個内包する可能性がある。それぞれのエンゲージの広さの目安としては以下の通り。
超遠距離:相手が地平線の向こうにいるなどの理由で、肉眼(を含むLOSセンサ)では互いを確認できない距離。他からの支援管制を受けなければこの距離にある対象には攻撃できない。また、攻撃可能な武器もまれである。主に、いかに相手を早く発見できるかが争われる距離。センシングエンゲージ。
遠距離:視界が良ければ大まかに肉眼でも確認できる距離。射線に影響する武器のいくつかが使用できる。有視界エンゲージ。
中距離:ほぼすべての武器が射程に入るものの、機動によって相手を牽制したり、有利な位置取りをしたりといったことはまだ不可能な距離。遠距離および近距離を得意とする機体にとっては、これ以上近づくか離れるかが争われる重要なエンゲージである。射撃戦エンゲージ。
近距離:戦闘機のドッグファイトのように、相手との位置関係が重要となる距離。クロスエンゲージ。
至近距離:距離と相対速度の両方が近い状態。相手に組みついたり、格闘武器による攻撃を仕掛けたりといった行動が可能となる。格闘エンゲージ。
なお、それぞれのエンゲージが実際にどれだけの広さを持っているかは絶対速度や重力、大気の有無などによって大きく変わってくるので、ゲーム中では特に問題にされない。必要なら、上記の説明を参考に各GMが決定すること。エンゲージとは、あくまでも相対的な位置関係を示す指標である。
○初期のエンゲージ配置:戦闘を開始する前に、GMはその直前の状況を考慮して、誰と誰がどのエンゲージで結ばれているかを決定する。戦闘開始までに(ゲーム内での)時間があれば、あらかじめパーティ内で適当なエンゲージを組むこともできる。
○エンゲージの変更:あるユニットがエンゲージを変更しようとし、かつそのエンゲージ内(あるエンゲージを離脱しようとする場合は元いたエンゲージ、侵入しようとする場合はその対象となるエンゲージ)にその行動に反対するものがいた場合、エンゲージの変更を成功させるためには、相手の「スピード」を目標値とした<操縦>による対抗判定に勝たなければならない。判定に引き分けるか負けるかすると、エンゲージは変更されない。この対抗判定の相手は、エンゲージ変更に反対するもののうちから任意に選ぶことができる。
なお、ここで「移動しない」を選択した場合、任意の目標一体に対し「狙い(次に行う命中判定の目標値を−1することができる)」を付けたのと同じ効果を得ることができる。ただしこのラウンドにおける「スピード」は本来の値の半分(端数切り上げ)になったものとして扱われ、(相手の)命中目標値やイニシアティブなどが影響を受けることになる。ある種の航空機など、静止することができない機体はこの行動を取ることができない。
■攻撃と防御、ダメージの処理
あるユニットが別のユニットに攻撃を仕掛け、ダメージを与えるまでの過程は以下の手順に従って処理される。
@命中判定
目標に攻撃を仕掛ける場合、攻撃者はまず目標値を計算しなければならない。この目標値は武器の「命中目標値」の値を基本として、そこにメインシステムによる修正、目標の「サイズ修正」、目標のほうが「スピード」で勝る場合はその差が加えられる。その他の修正(視界の制限や遮蔽、ジャミングなど)がないか注意すること。
目標値を算出したら、攻撃に使用する技能で判定を行う。この時の成功数を覚えておくこと。
A回避判定
攻撃に気付いていた場合、防御側は回避のための判定を行う。判定の基本値は武器ごとに固有の「回避目標値」となる。攻撃者が格闘兵器を使用している場合は「操縦者の<機動格闘>技能」+「機体(+メインシステム)の作業性」+「武器の回避目標値」となる。
目標値を算出したら、そこからメインシステムによって提供される回避判定への修正と機体の「機動性」(このふたつの合計は、機体シートに「回避修正」として記されている)を引いて<機動回避>で判定する。相手の命中判定の成功数を上回れば、攻撃を回避することができる。引き分けなら、攻撃は命中する。自分を狙うすべての攻撃に対して回避判定を行うこと。
なお、ミサイルなどの追尾兵器には「追尾性」の値が設定されており、この数値を成功数で上回ることで振り切ることができる。振り切れなかった場合、次のターンに再追尾されることになる。
A−a 格闘兵器に対する「受け」
格闘兵器による攻撃を受けたとき、通常の回避判定の代わりに素手または手にした武器などで相手の攻撃を受け止めることも可能である。目標値は通常の回避判定と同じだが、判定は「メインシステムの回避修正」+「機体(+メインシステム)の作業性」(このふたつの合計は、機体シートに「回避修正」として記されている2番目の数値である)を加えて<機動格闘>で行う。
なお、シールドを使用している場合、この方法で砲撃兵器を「受け」ることも可能である。詳しくは「シールド」のデータを参照すること。
※ある格闘兵器でどの格闘兵器を「受け」ることができるかについては、世界観にも関わる問題なので、ここでは設定しない。詳細はGMが決定すること。目安としては、貫通力と破壊力の両方でこちらを上回る武器は受けられない(あるいは1度2度と「受け」に使用すると破壊されてしまう)、としておけばいいだろう。格闘兵器以外のもの(盾やライフルなど)で「受け」た場合、使用した物品がダメージを受ける可能性がある。TLと同じ値の装甲値、兵器の「サイズ」の耐久力を持っているものとして軽減判定を行うこと。なお、盾にはそれぞれ装甲値や耐久力が定められている。
A−b カバーリング
回避に失敗した味方が至近距離エンゲージにいる場合、アクションフェイズにおける行動を放棄することで、この時点で対象をかばう(「カバーリングする」)ことができる。この行動は宣言のみで行え、判定は不要である。
対象を狙った攻撃は、自動的にカバーリングを行ったものに命中する。カバーリングを行ったものは「受け」および軽減判定が可能。ただし「受け」を行って失敗した場合、攻撃はそのままカバーリング対象に命中する。
B軽減判定
攻撃が命中したら、防御側は装甲や機体の頑丈さなどによってダメージを減らすための判定を行う。目標値は相手武器の「貫通力」から自機の「装甲値」を引いた値となり、振るダイスの数は機体の「耐久性」と同じである。
この判定に2個成功するごとに、武器の「破壊力」を一段階減らす(D→S→M→L→ダメージなし)ことができる。
Cダメージ決定
Bによってダメージを減らしきれなかった場合、機体はダメージを受ける。相手武器の「破壊力」に相当する数のダメージゲージ(L:1個、M:2個、S:5個、D:10個)を埋めること。
■ダメージによる悪影響
キャラクターや機体にダメージが蓄積すると、ダメージゲージの埋まり具合に応じて、ダメージの軽減判定を除くすべての判定の目標値が上昇する(1個:+1、2個:+2、5個:+3、10個:+4)。キャラクターと機体の双方にダメージを受けている場合、その効果は重複する。
■機体の破壊
「大破(ゲージ10個)」以上のダメージを受けるとその機体は機能を停止する可能性が生じる。毎ラウンドのクリンナップフェイズ(戦闘外なら30分に1回)、および1点でもダメージを受けるごとに、「現在ダメージを受けているゲージ数」を目標値として機体の「頑丈さ」で判定すること。この判定に失敗すると、ただちにその機体は完全にその機能を失う。
このとき、爆装している機体や熱エネルギーを動力として動く機体などは、1D10を振って4以上で爆発する。その機体に搭乗しているすべてのキャラクター、物品は「機体重量(トン数、端数切り上げ)+1D10」を貫通力としたDDダメージを受ける。機体の性質や乗員保護の度合いなどによって修正すること。なお、その機体が脱出機構を持っているなら、このとき搭乗者は1度だけ脱出の機会がある。下記「機体からの脱出」参照。
■機体からの脱出
機体を捨てて脱出する場合、脱出機構を持つ機体(ほとんどのTFや軍用の航空機)に搭乗しているなら、自由行動として<操縦>判定を行う。機体がまだ完全に機能停止していない場合、目標値は8か「現在ダメージを受けているゲージ数」のいずれか高い方となる。失敗しても、次のラウンドの好きなタイミングで再び判定が可能。ダメージなどによって機能を停止した機体から脱出することもできるが、この場合の目標値は+5される。
脱出機構を持たない機体の場合は正行動または全行動として<運動>などで判定する。目標値など、詳細はGMが判断すること。
■コンバット・ブースト
コンバット・ブースト(以下CB)とは、戦闘時にのみ使用できる「ダイスのストック」である。
CBを持つキャラクターは、命中判定・回避判定・軽減判定およびGMの認めた戦闘行動について、ダイスをCBから任意の数だけ追加することができる。ただし、1度の判定に追加できるダイスの数は、最大で本来その判定で振ることのできるダイス数まで。
あるラウンド内で使用されたCBは、そのターンのクリンナップフェイズですべて回復する。
■キャラクター戦闘
生身のキャラクター同士の戦闘も、以上とほぼ同じである。
キャラクター同士の戦闘では、エンゲージ変更の際の対抗判定は互いの【肉体】+<運動>の値を目標値として<運動>で行われる。ユニットとキャラクターが入り交じるような大規模戦闘においては、人間もひとつのユニットとして扱われる。その場合、通常の人間のスピードは1となる。